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大学の可能性を探る
環境マネジメントシステムの視点から  − 10 −
[FMICS BIG EGG 2005年3月号より]
by  米田敬子

プラスの環境側面より大学経営の質の向上のポイントを探る

 環境マネジメントにおいても量的な管理とともに、マネジメントの質の向上に寄与するシステム構築が求められる。環境側面より大学環境の具体的実像を探り、質の向上のポイントを探る。
 ISOは組織を構成するマネジメントのツールの一つである。基本的な仕組みは計画→実施・運用→点検・是正→見直しのPDCAサイクルである。環境マネジメントシステムの定義は「環境方針を作成し、実施し、達成し、見直し維持するためのもの」とされている。

 まず組織の進めべき方向性を定めた環境方針を作成する。次に、計画段階のはじめに環境側面を特定する。環境側面とは「環境と相互に影響しうる、組織の活動、製品またはサービスの要素」と定義され、組織が環境に影響を与える要因あるいは原因となる要素である。環境に良い影響を与えるプラスの環境側面と、悪い影響を与えるマイナスの環境側面に分類し、改善または維持を要求される著しい環境側面を決定する。この要求は組織のなすべき最重要課題を決めることである。

 環境側面からは、組織の環境についてのメッセージが読みとれる。ISO認証取得大学においての、著しい環境側面の特定より、日本の大学組織の環境側面の傾向を知ることができる。
 プラスの面は、教職員・学生の環境意識の向上、環境へ配慮した教育・研究活動、エコキャンパスでの学生生活と環境意識の高い学生の輩出、環境に関する研究成果や情報の発信、他組織へのEMS活動にともなう業務量および施設整備費の普及、公開セミナー・国際セミナーシンポジウム、環境に特化した地域社会貢献活動、分別回収、リサイクル活動の実施、ビオトープ、デポジットシステム、グリーン購入の実施、太陽光発電装置、太陽熱によるエネルギー、貯蔵雨水の利用、図書館の環境図書整備、危機管理に対する配慮意識の向上、学内美化、職場の活性化、業務改善活動の活発化、目標管理手法の定着、コストの削減、法体制の認識を深め遵法精神高揚などである。ほとんどの大学が構成員への環境教育の効果を掲げており、講義や講座開設を実施している。また、施設については環境配慮の整備をおこなうことが主である。PDCAサイクルを危機管理や職場の活性化などのマネジメントにつなげている大学。環境を地域、企業、行政とのつながりを構築する一つのツールとしている大学もある。

 マイナス面は、電力、ガス、水、紙・コピーの使用、エネルギー消費(空調等)、廃棄物の発生、実験薬品等の廃液処理、消却によるダイオキシンの発生、食堂排水による水質汚染、騒音の発生、汚泥、火災・EMS活動にともなう業務量および施設整備費の増大、糞尿(牛・馬・豚・羊・鳥)、ラジオアイソトープの使用、放射性同位体などである。「紙・電気・水・ごみ」は組織の共通の課題である。

 プラスの環境側面の思考をマネジメントに重ね合わせた視点で見ることにより、最優先される対象がみえてくる。その組織の経営判断(意思決定)の優先度が見えてくる。
 組織の存在価値は社会的責任の面からも評価がなされる時代であり、環境との共存も重要な生き残り策となる。質を変える際のキーポイントが「プラスの側面」である。「プラスの環境側面」から、よりプラスの実績を上げることにより、「持続性の経営」への質的転換もなされる。組織がプラスの側面を認識し、経営に活かすことは重要な生き残り策となる。
 PDCAサイクルを管理のためだけではなく、新しいものを産むためのサイクルとするならば、学生を想う大学環境のあったかさ度が増す質の継続的改善がなされることを希求する。

■引用文献
『大学のISO14000−大学版・環境マネジメントシステム』、私立大学環境保全協議会、研成社、2004年
『ISO14000 経営に役立つプラスの環境側面のとらえ方』、西嶋洋一他、日科技連出版社、2004年


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