NTS教育研究所NTS教育研究所
ホーム教育を考えよう:大学を考える大学の可能性を探る


大学を考える



大学の可能性を探る
環境マネジメントシステムの視点から  − 8 −
[FMICS BIG EGG 2005年1月号より]
by  米田敬子

大学調査レポート:2−1京都精華大学
平成16年度「特色ある大学教育支援プログラム」自立した学習者による社会貢献の実践教育
〜環境マネジメントシステムの構築を通じて〜

 京都精華短期大学のはじめての学生募集要項に「大学は学問と教育と深い友情とを発見する場所である。・・・教職員と学生がともに人間として尊重され、その人間的自由と自治の拡大が図られる大学を、われわれは目指している。」と初代学長・岡本清一は載せている。開学の年に集まった受験生は200人を少し超えていた。1968年、京都精華大学は洛北木野の山あいに、英語英文科と美術科の短期大学として誕生、1979年に大学となり、2004年度は 学生総数 3,801 、 新入生総数 909 、教授69・助教授28・講師401、職員99(専任41・嘱託58)の構成員である。
 人文学部再編にあたり、地球環境を大学という教育機関の立場から考え、教育していくことへの取り組みから始まり、教職員・学生が「環境」という共通のテーマで相互にコミュニケートし、芸術学部の環境側面のマネジメントを目的とする、全キャンパス、全教職員・学生全員を対象にしたEMSを構築した。2000年3月にISO14001の認証を取得した。2001年秋より、環境社会学科の2年生へ学内を「内部環境監査」という体験学習の場として提供開始。 2002年夏より、3年生による外部機関でのEMS構築支援を開始。2002年度は学生13名(1期生)による約6ヶ月間の城陽市役所への認証取得への支援活動。 2003年度:学生10名(2期生)が、京都府立高校4校のEMS構築を支援。本プロジェクトに参加した1期生の就職希望者全員が就職先を決定した。
 学生も構成員に含まれていることが特色であり、京都精華大学環境方針カードを携帯し、学園祭で排出されるゴミを管理するなど、「実体験」で環境マネジメントを学んでいる。また、芸術学部の授業においては、洋画の筆洗湯の適正処理、日本画の使用済み木材パネルの再利用率の向上。立体造形では自然物デッサン、環境にやさしい制作、ごみ置き場に捨てられた物からのごみアート制作、版画では不要な紙の再生、油性インクから水性絵の具の使用の転換、陶芸では粘土リサイクルを100%にするなどの運用管理の対象、監視測定対象、該当手順書が全部門においても環境目的目標プログラムに詳細に明記されている。
 学生を自立した学習者として育成するためにISO14001の認証を受けているキャンパスを活用した教育方法の工夫と、その成果としての学生主体の社会貢献、学生の成長が評価され、「自立した学習者による社会貢献の実践教育〜環境マネジメントシステムの構築を通じて〜」は今年度の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択された。理論学習と体験学習を交互にカリキュラム上へ配置することにより、段階的な学習過程や学習手法を構築し、自主的な学習者の育成支援を目指す。 体験学習の課題を実社会の現実的課題(環境への配慮など)を設定し、解決支援を学生が自主的・主体的に行うことにより、社会貢献的志向を持つ市民の育成を実践する。地域社会問題の解決への協力を、全学的な教育活動の一環に取込みながら対応・支援し、体験学習フィ−ルド(学外組織・機関)へ具体的かつ高水準の支援実績として結実させる等が採択された教育方法の特徴である。
 環境マネジメントシステムには岡本清一初代学長の建学の理念が反映されている。開学二年目の学生募集要項に載せられている「自由は規律とともにあるものであり、自治には責任がともなうことを、生活を通して知った。」は環境マネジメントシステムの基礎になろう。「学生もまた大学全体の運営から遮断されることなく、自治能力の開発をはかりつつ、その分限に応じて、これに関与することが望ましい」は学生を構成員とすることでかたちとなっている。凝集教育において学生に求めた「鍛錬に耐える忍耐力と、誠実にして謙虚な精神」に加え、現学長である中尾ハジメの「素人が専門家のふりをしたりまねをしたりせずに、素人のままで専門家とわたりあえるような社会の模索」の追究は、学生の学内外での活動に活かされている。
 大学の理念を、学生、教員、職員が自ら考えること、活動すること、かたちとすることは大学を支え継続させる最も大切な要素である。大学の存在意義を社会的に意義あるものとするために、大学職員が環境を創り、継続性を持ち、要となり、支えることの役割分担は重要な責務である。

■参考文献
中尾ハジメ、「大学という夢──初期大学案内巻頭言を再読する──」、『京都精華大学紀要』22号
別冊 岡本清一先生追悼特集,2002年4月
京都精華大学ホームページ2004年12月25日


皆さまからの読後の感想をお待ちします。
Email:
gracekay@world.odn.ne.jp

このページのトップへ▲
ホーム教育を考えよう:大学を考える大学再生の可能性をさぐる