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大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 55 − [FMICS BIG EGG 2000年7月号より]
by  鈴木健夫

 第8章ロジャーズ博士の教育論(8)

(ロジャーズ全集全18巻、岩崎学術出版社、この全集の各巻の冒頭に記されている、ロージャズの「日本の読者へーーロージャズ全集刊行に際して」に書かれている言葉には、大きな感銘を受ける。ここに縮約して主要な部分を引用する)
 個人を現に在るがままで、また将来なるであろうそのままで、尊敬し、尊重すること。人間の成長可能性を信頼すること。人が、自分自身の経験に対してもっと心を開き、自分自身の感情や知覚に対してもっと敏感であるように激励すること。
 人間相互の関係や、グループで生きている状況において、もっと深く、しかももっと直接的に気持ちを通じ合うように激励し、そして、もっと有意義かつ、相互的な理解を打ち立てること。
 カウンセリングやサイコセラピーを通してであろうと、臨床的なソシアルワークを通してであろうと、師弟の接触を通してであろうと、あるいは家族や友人の絆においてであろうと、何らかの援助的な関係を用意する能力を、もっと大きく発展させること。
 この急速に変化している今日の世界で行為するための、有意義な道案内の綱を用意するような、個人を尊重する何らかの過程を発展すること。
 上述したような尊敬、寛大さ、及び理解のある伝達交流に基礎づけられた、もっと安定した満足のいく文化を、国家的に、また国家間的に発展させること。

 私は今日の先進国の人々が悩み、求めている気持ちを次のようにまとめることが出来ます。  個人は尋ねております。「私は誰なのか」と。  個人が属する社会は個人と一緒になって尋ねております。「我々の目標は一体何なのか。我々の価値は一体何なのか。我々は一体人生へどうアプローチしたらよいのか」と。


 サイコセラピーに存在する、密接な、しかもあらわにしていく関係における個人個人の行動を検討することにより、何らかの光が、これらの疑問に投じられるであろう事を、私は確信しております。
 深い関係を理解すること、また人々がそのような関係に関心をよせる寄せ方は、万人を援助して、もっと適切に人間の本性やなんらかの関係において、自分を解放し、もっと自分自身になろうとする人間の奮闘努力の特質を、理解することができるようにするでしょう。
 私はほとんど40年間にわたって、不完全ではありましたが、ある一つの援助的な関係において、一体何が展開されていくかを観察し、理解しようと努力してまいりました。そして私が観察した色々な事を論文に書き表しました。
 それらは、サイコセラピーに関する、人間関係の研究に関する、これらの諸現象を説明する理論的な諸公式についての構想に関する、教育に関する、ある哲学的な価値付けの問題に関する、といったいろいろの論文によって、私は、アメリカの文化や日本の文化に真っ向から立ち向かう、この基本的な諸問題を、多少なりとも明らかにすることが出来るならばと思っております。
 また、これらの諸論文は、質的には不揃いですから、読者は必要に応じて、それらの論文についての読者自身の判断を形作らなければならないでしょう。しかし読者は正確にしかも適切に、読者自身の経験へと語りかける何かを、また読者の個人的な生活や専門的な仕事にとって重要な意味を持つ何かを、発見するかも知れません。読者はまた、自分の経験と矛盾対立するもの、すなわち自分を発展させるのになんらの適切な基盤とはなりえないものを、発見するかも知れません。このようにして読者は、自分自身の経験を検討しうるような部分を選択したり、自分にとっては妥当性を持たないような部分を拒否したりしなければならないでしょう。
 このことは私にとっては喜ばしいことなのであります。何故ならば、もしもこの全集によって、読者が、セラピーや教育についての私のスタイルに、あるいは私のいろいろの考えや理論に、奴隷のように献身的になれば、それは最も不幸な成果であるからであります。
 私は一人の主人公である、と考えられたくありません。私は信心深い追随者たちをありがたい、とは思いません。私は何らかの礼賛もしくは狭隘な思考学派をうちたてたくありません。私が最も望むこと、それは私の諸論文が、読者をして自由に読者自身の思考を志向し、何らかの援助的な関係についての読者自身のスタイルを発展させ、読者自身の価値や判断を、公式化するのに役立つことなのであります。
 もしもこの全集の各巻が、新鮮な思考を刺激するのに役立ち、洋の東西を問わず、人間や文化に現存する多くの基本的な諸問題への、創造的なアプローチを励ますならば、私は心から喜ばずにはおられないのであります。
   1965年     カール・R・ロージャズ



(私はロージャズ全集の各巻を読む度にこの冒頭の言葉を噛みしめながら味わった。なんの飾り気もない、淡々とした言葉である。しかし、なんと幅広い、奥深い言葉であろうか。複雑な社会になればなる程、人間相互の関係をより深く、より正確に理解し合わなければ、これからの世界は正しく発展できないであろうと痛感した。以下次号)


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