| 第8章ロジャーズ博士の教育論(7)
感受性訓練
経験的で、意味ある学習の雰囲気を作りだすための、新しい発展の例として、「感受性訓練」がある。(臨床心理学ではこれをグループセラピー、グループカウンセリングといい、大いに発展しつつあるようだ。それまでの一対一のセラピーやカウンセリングとは異なった訓練効果が期待されている)
これは教育の新しい目標を達成していくために、教育行政者や教師を援助していく研究である。しかしまた、教室の中でも大いに利用できると思う。
教育機関では、まだ広く用いられている段階ではないが、会社経営者や政府行政者の強化訓練のグループには、既に用いられている。それは簡単に説明するのは困難である。何故ならグループによっても異なるし、リーダーによっても異なってくるからである。本質的にはそれらグループは、最初はほとんど制限のない自由な形態でその性質も目的もあいまいなまま出発し、それらをグループのメンバーの決定にまかす。リーダーの仕事は、意志の表明が自由に為されるよう心掛けることと、意味ある経験を求めて動いていくグループの葛藤をダイナミックな形で明確にしたり、強調したりすることである。この様なグループでは、最初暫くの騒々しさに続いて、個人個人の意志が表明されることが増えていく傾向がある。これはそのグループ内でみんなが自由を感じ始め、グループのメンバー間に直接的で自発的な意志の交流が起こっていくことを意味している。自分を見せかける必要がなくなり、防衛が弱まって、これまで隠していた感情をみんなが表明していくにつれて、深いレベルでの一致が起こる。否定的な意味でも肯定的な意味でも、自発的な反省がグループの間に起こってくる。この様にして多くの人が他の人たちとより密接に結びつくことが容易になり、自分の意志を表明する自由がますます強く感じられていく。
一般的にいって、これらの経験が実を結ぶときは、人間対人間の直接的な意志の交流が急激に盛んになり、それによって自己理解も深まったり、自分の中の現実の姿や独立性、更に他の人たちに対する理解や受容が深まるような、深い人間的経験をするときである。
この様な発展は、今後益々、教育界に拡がっていくことは、大いに予想できる。
[結び]
私はこの論文の中で、もしも我々が新しい教育目標に従って進む場合、変化に対する適応力を身につけていったり、全人格を通して為されるような学習に焦点を合わす場合、知的学習は勿論、情緒的学習の意味深い経験について、関係あることをなんとかまとめようと思った。
もしも、この様な目標の達成を求めるなら、教師は基本的に、学生たちは自ら目標を達成し、実現していこうとするものだと、信頼していることになる。教師は、現実生活の問題に実際に触れあっている学生が学習することを欲っし、成長を望み、何かを見出そうと努力し、自分のものにしようとしている、という仮説の上に自己の仕事の基礎をおくことになる。生徒たちがこれらを成就していく自然の傾向を、教師はなんとか押し進めようと、学級の雰囲気の質や、学生との人間関係の質を高めようとする。
この様な自己実現を図る学習を進めようとする教師や指導者は、うまく利用できる新しい研究や方法が既に手近にあることに気付くに違いない。科学の分野における探究法の研究は、この分野での自発的学習者を生み出すことに貢献している。模擬演出法の利用は、責任感を伴った学習や決断力養成に役立つ学習を可能にしている。ティーチングマシン(特に簡潔な特殊化されたプログラムの形で)は、学生たちが必要とするときに、必要なことを学ぶことができる便利さを提供している。
感受性訓練の利用は指導者と学生の両方に、コミュニケーションの自由さとその深まりを増すばかりでなく、学習の場でも生活の場でも、より独立した人格として行動できる人を造るのに役立っている。
これらの特殊な方法は、新しい目標を達成するための更に多くの方法が考えられることを示唆している。学習者にとっても、このような自発的な学習、新しい問題との対決や、自分の中に統合していく過程を発展させていく結果、外的刺激や自己の内的な反応のあらゆる経験に、素直に心を開くことができるようになる。彼は、新しい問題に直面するとき、より充実した適応性を身につけるようになる。マルチン・ルーバーはこの事を非常に旨く述べている。
「いろいろな類似点はあるが、あらゆる生活場面は、生まれたての赤ん坊のように、いままでに見られない、そしてまた二度と現れないような新しい顔を持っている。それは君たちに、前もって準備しておくことが出来ない、即時の反応を要求する。それは過去のものの繰り返しを要求しない。そこには対決と責任ある行動が必要であり、あなたの全人格が必要になる」
我々学習者が永遠に変化を続ける世界に、うまく処していける創造性を求めるのは、まさにこの考え方である。
(参考文献は省略し、「意味ある学習の促進」の全論文を縮約した。以下次号)
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