| 第七章 エピローグ(九)
イギリスの視覚障害者に対する福祉の姿を大学コンソーシアムという形で見てきた。更にこのシステムは次のようなケースによって私を感嘆させる。
このケースは現代の社会が共通に抱えている問題、つまり学習障害を持ち、更に身体にも障害のある若者を主体として特別な教育を与えていこうとするプロジェクトである。前項で述べたRNIBは2つのカレッジを持っている。その一つがレッドヒルカレッジ。そしてもう一つ、アンバートラストという組織がある。これは盲人の為の音楽へのアクセス、そして教育と居住のケアを行なうための組織である。これは音楽を通していろいろな事を実現していく。視覚障害者や他に障害のある人々と音楽を通して教育をすることで、いろいろと協力をしながら活動している。
つまりアンバートラストとは音楽と障害を持つ人とを関連づけながら事業を行なう新しい慈善団体なのである。とりわけこのトラストは次のような人々をサポートしている。視覚に障害を持つ人々、学習に遅れがちだったり、学習する事が困難な人、あるいは特別に音楽の才能がある人またはその必要性を持っている人々をサポートしている。
アンバーとは目の見えない人々の音楽へのアクセス、そして教育と居住のケアということである。
RNIBレッドヒルカレッジは、専門的な寄宿施設のあるカレッジで、そこでは様々な経験や能力を持つ全ての年齢の視覚障害者に、教育と職業訓練、リハビリのの機会を提供している。教育心理学者を中心に専門家のスタッフチームが、学生の評価を行なっている。そしてその評価が学生にとって本当に望んでいる方向に進んでいるのか、プログラムが真に学習効果があるのか、という事を確認しながら色々と評価を行なっている。
プログラムは各学生と交渉しながら作られるし、その期間は1週間から3年間続く。全ての学生は小さなグループで学び、もし必要ならば専門分野に関して、1対1の教育も為される場合もある。更に自立即ち自分を支えていくということは、このカレッジを通して教えることと学ぶことの両方の点から、その基盤が作られていく。学生は専門家のサービス例えばカウンセリング、物理療法やマッサージ、そして弱視の評価などを受けることが出来る。毎年、学習することになんらかの障害のある若い学生に多くの場所や機会が提供されている。その様な学習に障害を持つものがいろいろな科目の選択をするときに、特別に企画されたプログラムに従って色々学ぶことが出来るようになっている。そしてこのプログラムはその学生たちが自立するための日常生活のスキルに自信を持たせるようにいろいろと企画されている。これらは音楽、園芸、美術、工芸、物を製造する練習をしたり、あるいはスポーツも含んでいる。学生はコミュニケーションや数学的教養、コンピュータの知識を持てるように色々と学んで技術を高め、自信を付けていく。
アンバートラストとレッドヒルカレッジとの協力関係とは、共に視覚障害や学習の取得に障害のある人、または優れた音楽能力を持つ人や音楽をどうしても必要とする人、それらの人々の要求を満たすために特別に企画された、教育とケアの独特のプログラムを持っている。プログラムは総合的に組織化されたやり方で、学生との音楽的な結びつきを強め、それにより彼等の向上しようとする心と力を引き揚げようと試みられている。例えば、音楽を学ぶことにより、それだけの進歩を期待するだけでなく、色々な分野の進歩も促進するように両者で組織化し、プログラム化され、行なわれている。プログラムはレッドヒルカレッジの専門家スタッフのチームにより運営されている。その分野のより高度な設備で学んだり、地元の音楽家が参加したりしている。個人的な楽器の取り扱い方や発声の授業は、その学生の必要に応じて為されている。卒業生は音楽により生計をたてているばかりでなく、社会生活のスキルも持ち、自分の才能を広く認められ、彼自身の楽しみ、個人的な満足感を持つことが出来るのである。学習障害を持つ人々は、特に音楽を必要としている人が多い。その様な人々がコミュニケーションを図ったり、社交的になることを、音楽は手助けすることが出来るし、まるで原因と結果のような関係を強めたり、または彼等が自由に動き廻ることに、音楽は自信を持たせてくれる。とりわけ自己表現の楽しみとか色々な人々との意志疎通の重要な機会を与えるということにおいては、音楽は非常に大きな役割を果たしている。
以上は英国の友人から送って貰ったバンフレットを(財)日本点字図書館で英文朗読し、口述訳して貰ったテープを私が文書にしたものである。正しく翻訳されている自信はないが、大方の内容は感じて貰えるのではなかろうか。
私が視覚障害となって18年が過ぎようとしている。幸いなことに私は定年を迎えるまで会社において貰えたが、多くの中途失明者は退社を余儀なくされ、殆どの人は仕方なく針・灸・あんまの勉強をし、国家試験を受け、マッサージ師として生計を立てている。これは日本の悲しき伝統により、現在も職業訓練の90%以上もの高率でなされている。私は欧米先進国の視覚障害者の職業訓練事情を知りたくてこの様な事を始めたのである。ここに紹介したのは大学コンソーシアムとしての事例が目に付いたので、引用させて貰った。
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