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大学を考える



大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 32 − [FMICS BIG EGG 1998年8月号より]
by  鈴木健夫
第六章 多摩地域での大学コンソーシアムの提案 (六)

 将来のベンチャー社長育成センターの訓練職員たちにとって、役所からの出向、リタイア組の力量発揮が期待できそうだと思えることは、縦割り社会から離れて、このセンターで思いきり仕事がしてもらえそうだからである。役所ばかりでなく、日本人の組織上の最大の問題点は縦割りの弊害だ。大学も企業もこれを持ち合わせている。コンソーシアムは不要になったら取りつぶすのが当たり前。だから全員が一丸となって秀吉の一夜城的成功が期待できるのである。 この縦割りの弊害はうまく競争の糧となっている間は長所だが、組織温存的思考や我田引水的行動が出始めると無用の長物となる。一方、職場環境が変わることにより新しい活力と想像力が期待されることも重要なファクターになる。

 更にもう一つの大切なことは「リーダーの見極め」だ。日本の教育では小、中、高とエリートまたはリーダーシップの育成は殆ど行われていない。しかし子供の時からじっくり観察していると、この子はリーダーに適しているなと思う気質に出くわす。先のアイデア創出の可能性を秘めた素質とリーダーとしての資質を持った優秀な少数の学生を(勿論本人の希望を確かめた上で)ベンチャー社長候補として、4年間徹底的に特訓し、このコンソーシアムで実技、実務を身につけさせ、30歳を目標にベンチャー企業社長として独立させる。このような一貫教育は「やればできる」。多摩から未来の松下、本田、ソニーが誕生していくことも夢ではない。まさに先知後行でなく、知行合一の精神である。この気合いが入れば日本人は強い。世界一強烈なパワーを発揮する。投下資金の回収は成功したベンチャー企業がやがて株公開になった時、保有株の売却により回収する。もちろんそれまででも一般的借入金の返済は長期ローンで行わせる。支援センターが自ら投資、回収機能を持ち、ノウハウを駆使してベンチャー育成を果たすという画期的プログラムである。当然、ベンチャーキャピタルやエンジェル達を育成するために「ベンチャー企業への投資説明会」を繰り返し開催し投資家が納得するまで議論する。支援センターはこの説明会を全面的にサポートする。

 「アイデア創出法」としては様々な実験(体験)を試みることになろう。例えば目的と疑問と興味とやる気をもって数年間の外部留学をさせるのも有効な方策の一つになるだろう。

2:コミュニティ土地トラスト開発事業
 日本は未だ真の民主主義が定着しているとは言えない。民主化の途上にあるという状況である。その一つの現象として、新しいコミュニティの発生や成長を期待する声が大きくなりつつある。環境、ごみ、教育、福祉など、これまで行政と市民の間で対立状態にあった状況をコミュニティを通して新たな社会システムとして取り組みたい等の声である。一方欧米が長い時間をかけて取り組んできたこれらの問題にも種々の亀裂が見え始めてきた。特に経済的負担において著しい。元来、これらの問題は隣近所すなわち、ある規模のコミュニティ自身で解決してきた問題である。そこで意を同じくする仲間が集まり、居住を近づけて、これら種々の問題を解決し、生活を楽しみたいと願う同一価値観を共有する人々の集合体(コミュニティ)を作っていこうとする開発事業を大学コンソーシアムで展開していこうとするものである。

 コミュニティの中味づくりとそのフォローは主として大学側が主体となり、コンサルタントし、計画事務所がサポートする。土地に係わる入手や保全は不動産系の企業所が分担する。権利調整にも有効に機能するものと期待される。現実的な理想を最初からコンセプトとして取り込んで、それに同調する人々を対象に事業を行っていく。都市内再開発事業としても取り込めるし、郊外型団地開発も可能である。高齢者や障害者を抱える人々の新たなコミュニティ等も有望な対象となろう。またケンブリッジやオックスフォード等のような学園街づくりにも期待がもてる。更に森林都市や田園都市づくりにも夢が抱けるのではなかろうか。

 土地の入手方法は借地(長期)でも買取でもどちらでもよい。地主が長期借地を希望するケースも有り得るだろう。要は開発主旨に地主が賛同して提供してくれることが大切である。一般的な不動産開発と異なる点は、同じ目的意志を持った人々のニーズを実現することなのである。だからニーズの把握が最も大切な仕事となる。開発規模もこのニーズの大きさによって大小まちまちになろう。コミュニティのつながりの強さによって、成功か否かが決まってくるのだ。だからこの同志を集め、意向調査をして一つのコミュニティにまとめあげる仕事が事業の大半となる。福祉を主なテーマとする場合は、各人がどこまで協力しあえるか、何を共有したいか、行政とのサービス区分をどうするのか等が調整のポイントになる。また障害者とのノーモライゼーション・バリアフリーの構築を進めていくためにもこのシステムは有効となろう。きめ細かなプラン上の配慮とか優しさと暖かさに満ちたサービスなどが盛り込めるから目的達成は容易となろう。

 21世紀の日本は、例えば福祉の問題では全て行政依存では負担できなくなるのは明白である。同じ価値観を持つ者同志のコミュニティ社会を作り互いに助け合う社会にして行かねばならない。 「公」の優しさと「民」の暖かさの「知行合一」が真に求められる時代として21世紀を迎えたいものである。


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