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大学を考える



大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 26 − [FMICS BIG EGG 1998年2月号より]
by  鈴木健夫
第五章 今、なぜ大学コンソーシアムか (三)

 これら非営利組織集団は新しい「リストラ社会」の新たな雇用の受け皿として認知されねばならない。つまり、多様なニーズを持った市民が、ある目的意識のもとに仲間的集団をつくり、同士型生活者としてボランティアなり社会サービスなりに係わっていく。社会サービスはすべてお役所仕事などと言っている時代ではない。より高質でタイムリーな社会サービスをユーザーに与え自らも仲間と共にその社会生活を楽しむ。民の公共への接近が始まった。そのような新たな社会が芽生え始めている。これを成長させていくことが新しい日本にとって必要不可欠と言いたいのである。まさにこのためにも大学コンソーシアムの存在は大きい波となってくる。先にも言った学生の中にあるそれらの芽生えの種子に対し、目的意識を助成し組織化をサポートし自治体や企業からの補助や基金を引き出し、最終的にはそれが大きな雇用の創出につながるものと確信するからである。
 これまでの日本での非営利組織は、財団法人にしろ学校法人にしろ、また宗教法人にしろ、その認可は大変な準備と手続きと手間を必要とした。ここで言う非営利組織は同士型コミュニティが必要なアソシエーション(会)をつくると言うこの自然な行動に対し、それを認知し自由な活動が行える基盤を簡単につくっていくシステムを言っている。前にも述べたACA(アメリカン・キャンピング・アソシエーション)は2000以上のキャプを全米の各州に展開しており、子供たちが学校教育では味わえない社会教育を実践している団体である。今後日本でも大変必要な分野であるが、YMCAキャンプを除いては日本には現在殆ど実存していない。
 「大学コンソーシアム」についてはもう一つの側面からの検討すべきテーマが残っている。大学には教員と職員という人材資源がある。教員についてはこれまでも企業や社会との接点を持ち、多角的な活動・調査・研究を行ってきた方々も少なくないのであるが、職員は自らの世界以外とは全く没交渉だったのではなかろうか。それでは世間のニーズ・方向性・世の中の潮流が全然見えてこない。企業や団体や自治体とのコミュニケーション−対話の中から「実は・・・うちの学生たちの様子を見てますと・・・」といった具合に若者のトレンド・主張・意見を代弁し説明することにより社会の側は喜んでそれらの情報を受け入れ、新しい反応・創造に向けての共同作業なり意見具申なりサゼスションなりを求めてくるものである。そのためには職員の側にしっかりした物事の見方・考え方・意見・その根幹となる哲学が備わっていなければ相手にされない。・・・いや情報だけ求められて共同作業つまり仕事の発注はこないことになる。
 一方、1995年は行動する市民、能動型・同士型生活者の年・元年とも呼べる戦後50年締めくくりの年であった。阪神大震災へのボランティア参加130万人と募金2000億円、フランス・中国への核実験反対デモ、オウム教団施設への周辺住民の抗議や撤退デモ、あてにならない政治不信への対抗としての無党派知事選出及び選挙不参加行動など・・・。同士型市民のネットワーク的行動現象とでも言うべき新たな社会へ一歩踏み込んだという兆しであったと言われている。(電通総研96年の兆候を参考)
 これまで多くの日本人は知識は高くても行動的ではなかった。朱子学で言うところの「先知後行」が行動を押さえていたのだろうか。それが陽明学の「知行合一」へと変化し始めてきたのだと見るのか。PLAN−DO−SEEのサイクルを回す社会的行動パターンは戦後50年我が国企業の常識的行動規範とみる向きもある。
 増え続ける学生に対しいかに対応するかが大学の全てであった時代から、生涯教育・企業人教育・社会システムの研究など幅広い教育を提供せねばならなくなる時代を迎える時期となった。つまり社会や企業のニーズに的確に対応できるプログラムを大学自身が持ち社会に貢献していかなくてはならない時代になるのである。
 そのプログラムを作り出していくには、今まで主に内部だけを見つめてきた大学が、その他の大学・企業・行政・地域住民などの組織と共同で新しいコンソーシアムを作り、社会のニーズである、豊かな社会の実現のための指針やルール・調整・コーディネイトを積極的に行うことが必要となる。
 これらのコンソーシアム設立により、大学や企業、行政等は共同の試みということで資金面を始めとしたリスク回避ができ、更に大学においてはコンソーシアムで成功した事柄を各自の大学に還元できるメリットもある。
 西出氏も言う通りアメリカでは、大学は地域社会とのコミュニテイ造り活動のために、アウトリイチプログラムとかエクステンションプログラム等を数多く対象者も広範囲に展開している。最近は日本でも生涯学習等少しは地域社会に開かれてきたが、アメリカのように地域全体の知的インフラを全面的に支えているとは言いがたい。将来は日本の大学もこのようになって欲しいものである。その為にも大学コンソーシアムが必要となる。これらの地域への知的サービスプログラムを大学コンソーシアムによって実現してもらいたいのである。


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