| 第五章 今、なぜ大学コンソーシアムか
(一)
これまで記述してきたことは、日本の大学や企業・社会が大きく変革していかかねばならないと言う事であった。変革の兆しは緩やかに進行しはじめている。しかし、ここで大きな変革のパワーを与えるためには、いかなる方策があるのだろうか。自然にまかせていくのも選択肢ではあるが、急速な方策も必要であろう。
ここで再確認したいのは、物づくり社会から知恵づくり社会に向けての変革案を提案することである。大学独自の改革が急を要するのは今更言うまでもない。これを補完し支援するプログラムとして、わたしは大学コンソーシアムを提案したい。
通産省の西出徹雄著「アメリカにみる産学コミュテイ」には、大学は社会に開かれており、社会のニーズを可能なかぎり受け入れ、助け合って地域社会に共生している様子が克明に記述されている。特にベンチャー企業創造に対しては絶大なる貢献をしている。米国社会に与える影響の大きさは計り知れない。また、企業との接点や扱い方にいたっては絶妙である。なるほど米国社会の繁栄は大学がしっかりと支えている事が良く理解できる。西出氏が言うように、日本の大学も社会との関わりを深めてもらいたい。
大学という社会インフラを今後どのようにするのか、はっきりと示さねばならない。特に研究インフラの充実を国を挙げて早急に実現させる必要がある。米国の大学では60人以上のノーベル賞受賞者が若い研究者を次々と育成している。このような姿こそ21世紀の日本が目指すべき重要な目標の一つであることは明白である。
これまでの日本の大学にだけ全てを期待するのは無理があろう。企業と社会と大学が渾然一体となって目標達成に向かって邁進する事ができれば明るい未来が見えてくる。その手法として、大学コンソーシアムが最適であると私は思う。これまでの日本社会は世界一優秀な官僚によって支えられてきた。しかし、このままでは日本はたちゆかなくなってしまった。これからはこれまでとは違った、自立した責任ある自由なそして賢明な民間と強力なチェック機構を備えた小さな政府によって支えられる社会が望ましい。そのためには特に企業は正しい情報公開をすべきである。だからこれからの日本の企業経営は株主に対してはより大きな利益を提供し、従業員に対してはこれまでのような甘ったるい家族的関係でなく自立した個人による新しい労使関係を結び、消費者には安全と環境の最終責任者であらねばならない。さらに企業は社会サービスとしての優れた貢献を求められる。それはたとえば非営利組織に対する援助や寄付である。勿論これは税制改革を前提とした話であることは言うまでもない。
このような社会をはっきりと意識し目指していくためには、大学が知的インフラを担い、民間企業が社会を動かす行動の源にならねばらない。そこで大学と企業の協力関係が是非とも必要になってくる。このためには大学が社会の知的サービスの根源であり、企業は社会を動かす原動力と言う役割分担の意識の確立が必要なのである。これまでの大学や企業のままでは目的達成は不可能であり、社会全体から認知された大学と企業でなければ話にならない。この二者が主体となってさらに必要に応じて公共団体や地域住民をも巻き込んで大学コンソーシアムを作り上げていくことが、日本の構造改革の出発点になるのではなかろうか。
大学コンソーシアムの社会的意義を別の視点から見つめてみよう。西出氏が言っているように、これからの日本の社会は人材の流動化が最も求められる。大学や企業や公共団体の優秀な人材が有機的に流動化することがこの閉息した日本の社会を構造的に改革していく近道ではないだろうか。同室の職場で一生を過ごすのではクリエイテイブな社会の発展は望めない。まずはじめに大学コンソーシアムが人材の流動化を先行させる事が新しい創造の時代を構築するための正しい選択となるであろう。世界中の研究者や開発者が大学や企業を移動しながら立派な成果を上げていることは明らかである。異なった環境が新しい創造を生み出す事も明白な事実である。
これまでの日本の組織は終身雇用が一般的であり、人的資源の流動化は行われなかった。そのためそれぞれの組織社会は極端に閉鎖的、利己的、非創造的になってしまった。現在保有する人的資源を活用して創造的な組織を構築するために、大学コンソーシアムは最も有効な手段となるだろう。
さらに重大な点は新しい産業の創生がこの大学コンソーシアムには秘められている。これまでの日本の社会では生み出せなかったソフトウエア産業の創出である。例えば研究補完サービス、職業上の資格維持サービス、多くの非営利組織など、これからの新しい時代に必要なサービスを提供する新産業が数多く誕生することだろう。こうして一連の新産業創出の連関運動は大学コンソーシアムによって大きな社会変革をもたらし、明るい未来が開けることだろう。
この新しい組織の資金調達は国際的なベンチャー株式調達方式で行う。
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