| 第四章 これからの大学や学生が求める企業の姿 IV
日本の企業や公共団体などでの仕事の取り組み方は組織ぐるみ一体となって、しかもそこにはどこに責任が有るのか、仕事の分岐点はどうなっているのか、各組織間の分業や分担が明確でない事が多い。組織全体が責任をたらい回ししたり隠したり表面に出さない様にする。没個性が前提なので組織が責任の受け手になる。そのため個の成長は極端に抑制され仲間意識が助長されていく。集団主義社会の最も頭著な姿形がこのような状態を生み出して来た。何か大きな事件が起きると、このシステムは対応が遅く、結論が出せず結果的に対処療法的なその場凌ぎの結論を生み出し同じ様な間違いを繰り返す。現在の日本の組織の欠点は社会のあちこちで噴出しており、根本的基本的に解決するのは非常に困難であると言わざるをえない。つまり個人のレベルが非常に弱いのである。幼少期からの教育で強い個性を育む独立した個人、自立した個性の教育が全くなされていないのが最大の問題点なのである。優しさや仲間との協調性などを求めすぎ、「対立」を前提にしない対人間係などこれまでのぬるま湯社会、皆で仲良くパイを分かち合うシステムにおいてはこの没個性こそが最も優れていた。そして大量生産体制をスムーズに行っていくためにも大いに寄与してきたと言える。しかし新しい物やサービスをつくり出す知恵の創出とか現状を打破する新しい社会システム作りなどを行っていくためには自立した強い個性作りが必要となる。独立した自己の形成を早い年代から行える様な個性の確立へと教育の軸をシフトせねば日本丸を旋回させることは難しい。
企業や団体が個の仕事をはっきり分業化し評価するような、これまでとは異なった仕事の仕方に切り換えなければ真のリストラにはならない。その為には個人が自立して行かねばならない。個人が互いに責任を持った必要なレベルの仕事を行える様になれば、分社化が進み環境の良い地方都市や地域への移転が現実の物となる。つまり大都市に立地することが必要な部分以外は環境の良い地方、地域又は海外に自由にシフト出来ることになる。高度情報化時代とはこのように住みたい所に住み、やりたい仕事を自由に選択して行える時代なのだ。日本中いや世界中の何処にいても一つの仕事を何人かが分業しあってまとめあげることが出来る。東京の都心部も首都移転やこの企業の分社化、分業化により一時的には衰退するだろう。かつてのニューヨークのように−−−。しかし東京都心部でなければ成り立たない連中が世界中から集まって新しい新東京都心部を形成していくことになるだろう。最近のニューヨークのように。勿論その為の呼び水的仕掛けが一時期のニューヨークのように必要なのは言うまでもない。
この2〜3年間に我々はインターネットの威力を見せつけられ、高度情報の真の姿を確認させられた。ネットワーク化が社会を変えていく事に漸く気付き始めた。コンピュータの個々の機能のみを対照に利用してきた時代は去り、いかにネットワークの中に企業や個人が入り込み利用できるかが今後の社会を勝ち抜いていけるか否かの問題に係わってくるのだろう。このコンピューター・ネットワーク化に追従していく為にも個々の仕事の仕方、つまり分業化がはっきり出来ていないと管理システムが空転してしまうだろう。末端の組織が責任を持って情報を入力しそれが集約されてネットワーク化が行える。つまり先に述べた個人や末端の組織が責任ある部品−一部分、部門として機能出来るようになっていないとネットワーク化が行えないのである。
そこでこれからの教育が個性の育成を重視せねばならない意味が明らかになってくる。このように個人への教育の改革と企業や団体における組織改革はどちらが先かではなく一体の物と考えねばならない。企業や団体がネットワーク型管理システムの構築を完成出来れば、日本は国際的に遅れることはない。これまで日本では大学を一企業としてではなく非営利的団体として特別視してきた。なるほど税法上は非営利団体であり株式会社とは異なる。しかし独立した企業と言う面では株式会社と同等である筈である。即ちその存立の為にははっきりした社会に対する意志目的をもち、社会に対する役割も明白でなければならず、その継続のためには経済的裏付けも必要である。そして社会の変化と共に、特にそのニーズの変化に伴って内容も変わっていくべきである。一般企業は社会変化に伴いその業務領域や業務内容を更に資本や人材を市場調査や技術導入、分離合併等を行って常に社会の変化に対応している。それに対して、日本の大学は昔ながらの学問的専門教育にのみ傾きすぎ、職業的専門教育が欠落している。その為社会や企業が求める能力を持った人材が供給されていない。特に経済学部や商学部において甚だしいように思われる。事実ビッグバンを迎える日本の金融界では欧米に比べ実力ある人材が非常に不足しているのではないだろうか。
|