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大学を考える



大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 11 − [FMICS BIG EGG 1996年11月号より]
by  鈴木健夫
第二章 大学(教育)をとりまく諸問題

日本の大学における研究と教育の行方(下)

 「教育」の問題がこれまで述べたように改正出来たとすれば、当然の結果として「今のような入試に係わる諸問題」は無くなってしまうだろう。何故なら教育は個々人の潜在的能力を見出しそれが成長していくのを助けていくために多様な個性の目的やニ−ズに対しそれぞれ異なった解答を用意し与える。教育の理念も小学校から大学に至るまで一貫しており親や社会から見ても安心して社会に送り出すことが出来る。価値観がはっきりしており、人生の選択時に迷うことが少ない。しっかりした目的意識を持って大学に入学してくる。教育法も一貫した理念に貫かれているので各課程で極端な挫折がない。職業適性指導も中学時代から十分に行われる。教科の勉強だけでなく広い教養を個人が興味を抱く方向で身につけている。いうなれば、世界中の普通の子供たちの姿である訳だが−−−。この様な子供たちを選抜するには中学や高校での生活内容を重視し受け入れる学部学科での彼らの興味、やりたいことのチェック、適合度、指導可能性等々、とうてい今行っている様な入試システムでは評価しきれない。いや無意味であるからにほかならない。

 一方、大学における「研究」については割合熱心に行ってきたし、「教育」に比べ問題は少ないし民間からの資金もうまく入っている。これからは大学院の充足と比例してその成長が期待されるだろう。そして社会に受け入れられるような研究成果が評価軸になり一定の進歩が望まれるだろう。しかし、ノ−ベル賞やこれからの地球を牽引していくような偉大な研究が期待できるかというと一寸心配だ。つまり、既成の学問真理を越えられるかと言う点で不安がある。ここにも欧米の「哲学」に結ばれ連結された学問はそれを深めていく事によりその壁を意識しそれを乗り越える良心と誘惑と希望を常に有しているのに対し、日本はその哲学が極めて弱い。日本からは偉大な研究が期待出来ない、しにくい体制であり、体質であると言うことだ。だから応用研究や開発研究は強いが基礎的研究が弱い。予算が少ないだけの理由でないと思う。大学院が独立した大学院大学となりうれば世界から優秀な人材も集められ偉大な研究も成しうるかもしれない。国際的な研究者、学者の流動期を日本が向かえることにもなるだろう。世界一の安全とそこそこの経済力が続くことが前提ではあるが。しかし大学院だけでその様なところまで行けるかと言うと少し心もとない。ここにも大学コンソ−シアムの有意性が存在する。大学院大学の独立は経済面で困難だろうが、大学コンソ−シアムによる総合研究機構などは世界の金と人と目的やテ−マを集めることにより立派な研究体制の実現の可能性は高いと思う。大学コンソ−シアムはこれら研究と教育の両面において日本の真なる哲学が西洋哲学と立場を交替するまでは日本の現在の壁を乗り越えるための救世主になるのではなかろうか。世界の研究の成果は軍事に関するものが多いが日本はこれがほとんど期待できない。だから、いかに開発テ−マや研究の理念をアピ−ルし人、物、金を集め易くするか。研究マネ−ジメントが真剣に問われる時代を向かえた。この点でも大学コンソ−シアムは有利となる。研究開発の戦略−枠組みを打ち立て、戦術をきめ細かく作り上げていくノウハウを大学コンソ−シアムでは割合早期に打ち出せるだろう。民間が係わるということはその可能性を高める為である。

 これまでの日本は研究と教育は一元的にとらえられてきた。けれども基本的には研究と教育は異なった側面を有している。研究成果を単に教壇で話していればそれが教育だと思っている教師たちがいかに多かったことか−−。研究の評価と教育の評価をはっきり異なった形で作り上げること。特に教育は効果を重視したシステムでなければならない。この二つの関係が互いに独立し自立した関係として成熟することは日本の教育全体を立ち直らせる大きな柱の一つでもある。このことは日本の大学が大衆化してしまった現在では避けて通れない必須の改革要素である。システムとしてプログラム化してしまえば運営面ではそれほど煩わしい物ではない筈だ。アメリカが第2次大戦後の帰還兵に職がなく、大学に送り込んだ大学大衆化の時代をうまく乗り切ったのもこの教授法のかげなる支えによる所が大きいと言うことだそうだ。研究費の調達方法において、国なり企業なりにプロポ−ザル→審査→研究→成果→評価というシステムが競争社会として機能するようになれば、能力次第で立派な研究を行うための資金調達にそれほどの苦労は無いのではなかろうか。  要するに国や企業がどのようなテ−マに興味を持っているかを十分に調査、予想し企画書として提示できるような能力を身に着けねばならないことになる。特にこれからの日本が世界に通用する偉大な研究を目指すとするなら、研究マネ−ジメントとも言えるこれまでのあまり経験したことのない「プロジェクトマネ−ジメント」を学ばねばならない。そのためにも企業との大学コンソ−シアムの必要性、妥当性、確実性が私には見えてくるのである。


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