| 第二章 大学(教育)をとりまく諸問題
大学の入口論から出口論へ
日本では大学の大衆化が進んだ一方で、その質は著しく低下したと言われている。理工系は別として、日本の人文系や社会科学系は大学院を出たら就職できないとまで言われるように社会や企業は大学の教育を当てにしていない社会になってしまった。
偏差値により、その入口部分でしっかり分別してくれる機能としか評価しない企業や社会の存在。大学がそれなりの教育をしてくれないから初めから当てにしていないのか。企業教育を素直に受け入れられる純真無垢の若者が欲しいとのことだから、個性的、独創的教育は必要ないのだと言う大学側との泥試合。
しっかり社会に役立つ教養と知識と柔軟な知恵の出せる頭脳を身につけた大学院卒業者が企業や社会でのエリート層として迎えられ、一方、自ら問題意識をもち、その解決のための努力をし、そのやり方を体験して強い意志と自立した精神を身につけた学部生が企業や社会から選抜される世の中にならねばならない。日本式経営の中に個性や創造性をしっかり評価し、活用する仕組みとシステムをつくれない企業や団体は若者からも見放され、ユーザーからも忘れ去られるにちがいない。多くの人々が大学のもつ多様性や様々な価値観に目覚め、新たなる成熟社会への実現に向けて大学改革の航海が始まるよう願うのである。
大学の入口論についてはFMICSにおいても過去に多くが語られている。私は将来の日本の担い手としての若者たちが、大学で学びたいものをはっきりもち、他方、多くの選択可能なカリキュラムが用意されている魅力ある大学が存在することを前提に入口論について次の如く期待したい。
| 1. |
真に学びたい者が学べる機会を平等(*)に与えること。 |
| 2. |
大学での講義やレポート作成についてゆける基礎的学力の判定を多軸評価(**)で行う。 |
| 3. |
学生の本当に学びたいことを在学中に充分大学がサポートできて、レベルアップ出来るシステムを学生募集の要(***)とする。 |
つまり大切なことは、入学するまでの学生がゆとりある生活を楽しみながら、希望の大学に入学出来るようにすることだと思うのである。
大学とは入学してきた新入生に大きなカルチャーショックを与え、学生生活への期待と勇気、不安と厳粛を感知し、自覚させる場でありたいのだ。
そして出口はその大学のレベルなりに厳しいものであるべきである。各々の大学が標準、基準を設け留年や退学を積極的に行使することによりその「レベル」が世の中に受け入れられるようになるはずである。学生を鍛える(トレーニング)ことができない大学は没するしかない。与えられたテーマや自ら選択したテーマを自らの力で考え、解決のための調査や検討が出来、結論を見出し、適切な表現方法でまとめていく実力をつけさせることが大学教育の本質であろう。当たり前の話だが、これが行われていないのである。海外からの留学生が日本の大学のレベルの低さをあきれながら日本の学生に話しているのを聞いたことがあるが、彼らからは反発的意見などでていなかった。だから、実力をつけるなら欧米の大学へ、遊んでいて証書だけもらいたいなら日本の大学に行くというもっぱらのうわさ話・・・否、本当の話がまかり通っているという。
大学は自ら出口管理をしっかり行うことによってのみ、その存在価値を社会に知らせることができる。そこにこそ、大学の在るべき姿が見えてくるのではなかろうか。
非合理な受験勉強に疲れはて「延びきったゴム」の状態で社会におずおずと出てくるあわれな若者を日本の大学は大量に製造しているのである。大学全体が目覚め、改革せねば、本当に日本は駄目になる、と、ますます危機感が募る。
本来、大学問題で入口論や出口論が存在することが不自然である。世界に開かれ、学びたい時に入学でき、数年間を共に語り学ぶための場である筈の大学。未来を謳歌し、現在を論じ、過去を学ぶところであるべきなのだ。
| * |
ここで言う平等とは、国籍、男女、年齢、転歴等に差別されないことを言う。 |
| ** |
多軸評価とはこれまでの学力テストだけでなく、高校生活の全容や社会生活の評価、ボランティア実績など評価軸を多くして、多彩な、可能性にあふれた学生を選抜する方策をいう。 |
| *** |
学生が入学した後看板にだまされたと言われないことが大切。大学の魅力に満ちた教育内容の情報を解り易く公開する。 |
大学生活を海外旅行にたとえてみよう。入口と出口は往復の航路である。手続きを行い、ルールを守っていれば難しいことではない。肝心なのは旅行の中身である。決められた通りの、ただ時計とにらめっこのパック旅行は結果的につまらない。自らが目的意識をもち、街角・駅・小さな宿・土地のものをおいしく食べさせるレストラン等で新しい発見をし、地元の人々と触れ合う主体的な旅行のなんと、実りの大きいことか!
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