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大学を考える



大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 5 − [FMICS BIG EGG 1996年5月号より]
by  鈴木健夫
第二章 大学(教育)をとりまく諸問題

アメリカの大学教授は社長業か
− なぜ大学コンソーシアムか −

 以前、私が紹介されたO教授は、世界中を廻ってある小規模の国際会議を成功させるため、スポンサー探しやカンファレンスでのスピーカー探し及び依頼のため来日した由で非常に熱心に意欲的に話をして当方に理解を求めた。彼は教授のほかに国際会議のプロデューサーをも兼ねているかのように私には思えた。私は「先生の専門は何か」と問うてみた。彼は「社会のニーズを見いだすこと」だと答えた。私はその意味が即座には理解できなかった。彼にいわせると、社会的ニーズのある研究テーマであれば、企業や政府が資金をだす。その資金で専門家を集めて研究を進めるという。
 それを聞いて大きなカルチャーショックをうけた。日本の大学教授でこのように計画をつくり、自ら世界中を走りまわり、相手を見出し、説得し、金と人を引き出そうとする意欲と熱意をもった人はいるだろうか。さらに、それを行わせる社会システムの存在に大きな衝撃を感じた。こうやって企業を廻って意見交換すれば、その社会的ニーズの検証にもなっているのである。日本のベンチャー企業の社長でも舌を巻く行動力である。アメリカの創業力、実践力が大学人からもしっかり萠芽している様を知らされた。

 一方、日本では文部省の過保護のもとで手も足も出ないあり様だ。社会に開かれた大学とは本当はこの様な厳しい現実を伴うものではないのか。教育的にもO教授の学生、院生などは、師の日頃の言動、会話の中からいかに多くのことを学びとることが出来ることか。その中には当然、リスクマネジメントも含まれている筈である。成功することもあるだろうし、失敗することもあるだろう。どちらの側にしてもその後の対処の仕方は教授の立場でどのようにコントロールしていくのか。当然、学生、院生も社会との接点でのやりとりを体験させられることだろうし、また、そのさばき方は(日本からの留学生の最も不得手な問題もここにあるときく)評価として大きなウエイトを占めているのだろう。この社会との刺激の中から学ぶことの必要性はアメリカの大学教育システムの柱の一つらしい。
 また、アメリカの大学では行政官や民間企業との人事交流がひんぱんに行われているようだ。というより必要な人材を必要に応じて調達するという自由な市場原理によって動いているのだろう。
 次に、社会経済的には、プロジェクトのスタート段階が、単に民間企業のみから発するだけでなく、大学からもスタート出来る社会システムになっている。そしてこの大学教授のベンチャー的行為はプロジェクトの成立に大いに貢献しているし、彼のリーダーシップは立派である。子供の時からスポンサーを見つけるために、発想力、表現力、行動力などを徹底的に教育しているアメリカでは物づくり社会から知恵づくり社会への移行をほぼ終わったといわれているが、その背景にはこの様な社会システムがしっかり根づいていることが起因していると思われる。アメリカの子供達が長い夏休みを過ごすキャンプ生活の中には、経済的、ベンチャー的な「力」を身につけさせるものまであるという。学校教育でなく、民間の社会教育にあっても、しっかりと国民の教育理念が深く息づいている証拠であろう。

 ところで、日本の大学は、もっと実社会との接触を密にせねば、社会から忘れ去られて、単なる偏差値振分機関でしかなくなってしまうだろう。前出のO教授並みのリーダーシップを期待したいがおいそれとはいかないだろう。象牙の塔とかに鎮座まします教授たちにいきなりベンチャー企業の社長は勤まらない。大学が社会に近づく現時点での最良の方策は、民間企業との「知行合一」であると私は考える。大学の知識と企業の行動力が一体化する・・・これが大学コンソーシアムの原点である。社会が求める知識や情報を的確に集約 して「行動への原理」としておきかえなければ、コンソーシアムの意味がない。これまでに蓄積してきた大学の潜在力がコンソーシアムによって社会に還元され、正当に評価され易くなるだろう。
 また、大学にとっては、社会が求める新たなる知識の方向を・・・つまり社会のニーズを適切につかめる多くの機会をコンソーシアムは提供してくれることだろう。大学再生の可能性はこの大学コンソーシアムによって明確に実効性を伴って、その成果が期待出来るものと信ずる。更にプロジェクトによっては、自治体や地域住民とも提携すべきである。ゴミや廃棄物のリサイクル事業などはその典型であろう。


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