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大学を考える



大学再生の可能性をさぐる  
  大学コンソーシアム − 1 − [FMICS BIG EGG 1996年1月号より]
by  鈴木健夫
第一章 はじめに及び目次

 − はじめに −

 日本が戦後50年間、経済大国へと成長してきた原動力としての教育システムは「物づくり社会」を世界一にするには最適であった。けれどもこれ からの「知恵づくり社会」を実現させるためには大いに反省し、改革してもらわねばならないのではなかろうか。何も100%全ての教育システムを変換せねばならない、というのではない。学生たちの選択肢の中に新しい知恵づくり社会を目指した教育システムをもった大学が最終的に20%ぐらいは必要なのではないだろうか。
 国際化、個性化、創造力育成、多様化等々と各々に取り組みは始まっているけれども、その中味はほど遠いと言わざるを得ない。これからの社会をどのような視点で描くのかによって異なってこようが、これまでの「物づくり社会」に加えて「知恵づくり社会」が20%程度おおいかぶさるような社会を仮に想定してみると社会システムはどの様に変化していくべきなのかを、仮設としてまとめてみたくなった。
 今後、何回かFMICSに掲載し御意見をいただき、内容的なブラッシュアップを行って社会に提言したい。レポートのフレームは教育改革に必要と思われるテーマを選定し、なぜそのテーマが必要なのかをプレゼする形で進めようと思っている。

 − 目  次 −

第1章 はじめに及び目次
第2章 大学(教育)をとりまく諸問題
第3章 これからの社会や企業が求める大学の姿
第4章 これからの大学や学生が求める企業の姿
第5章 多摩地域 大学コンソーシアムの提案
第6章 多摩地域 大学コンソーシアムの実現化に向けて

 平成4年をピークに、我国の大学受験者は減少方向に転じ始めた。戦後の我国は順調な経済発展を続けてきた結果、世界一の高等教育を誇るようになり、それに伴い、大学就学率も延び、大学の新設も増加して内部に多くの問題を抱えながらも大学ブームをもたらした。しかし今後は、受験者の減少に伴い大学間のサバイバルは相当な激戦になるものと想定されている。
 そういった状況の中、大学自身は大学の役割として「学生の能力の向上」「研究・学問の探究を通しての社会貢献」、「地域コミュニティーの拠点としての社会貢献」等を掲げているが、社会・企業から見ると特に地域・社会への貢献についてはわかりにくく、まだまだ学生にのみ評価対象を求めているように思われる(参考1)。
 一方、順調だった我国の経済も、円高や構造的要因によりその力は急速に鈍化し、新たなリストラ、新分野の雇用促進など、官民あげて対処せねばならなくなっている。
 また、地方の時代と言われる中で、地方自治体は豊かな成熟社会に向けて新社会資本、福祉、ゴミ問題対策等、多種多様なテーマを抱え、しかも法人税収の落ち込みの中で苦しい対応を余儀なくされている。更に住民との合意形成については、なす術がないと思える節もある。

 この様な背景の中でこれからの大学はこれら社会、企業が抱える諸問題を解決する手助けとして、
 (1) 地域経営の核としての存在
 (2) 社会、企業に対しての門戸開放
 (3) 実社会に適応した研究・学問の充実
 (4) 社会や企業、自治体のコンサルティング
 (5) 21世紀に求められる人材育成
 (6) 新たな知恵づくり社会の構築
 の役割が考えられる。
 しかし、その役割を果たすためには、大学は今以上に成長していかなくてはならない。
 この様な方向で大学が進んでいく時、大学個別では難しいテーマや方策があろうし、インセンティブ供与の意味からも、大学コンソーシアムや、企業、自治体との提携、ネットワークを作っていくほうが望ましい方法を見い出せるのではないだろうか。
 見方を変えれば、日本の教育に対するこのような危機感を私的に抱く中でこれからの大学の改革メニュー試案として「大学コンソーシアム」の可能性を問うことを結論づけたい。日本人には不得手な共同化の構想がいかに非現実的な案であるかを承知のうえで、あえて問いたいのである。

 平成7年11月下旬の朝日新聞に多摩地区の4つの国立大学が互いに単位の互換を行うことになった旨の報道がなされている。京都では相当大規模に国立、公立、私立大のコンソーシアムによる活動が始まっているという。徐々にコンソーシアムの動きが始まっていると見てよいのか。これから4〜5年の動きが注目される。

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参考1: 「これからの非営利組織経営とマーケティング」(社)社会経済国民会議 大学・短大の事務局長1,208名を対象に1992.10〜11学校に施したアンケート調査による(回収率23.3%)

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