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生徒獲得戦略セミナー

鴎友学園 吉野明先生
「情報戦略と生徒獲得戦略」

■ 「このプレゼンテーションの題名は『情報戦略と生徒獲得戦略』ですが、端的に言ってしまうと時代に対応した授業をしていれば生徒が集まるということです。」

■ 吉野先生は生徒を獲得するためには、時代が必要とする方向をしっかりと見極めることが必要だと分析。そのためにはスクールアイデンティティとスチューデントアイデンティティの双方を考え合わせていくことが必要だとしました。ご自身が教鞭をとる鴎友学園をモデルケースとしてパワーポイントのドキュメントを使って解説していきました。以下はプレゼンテーションの要約です。


■ 大正リベラリズムを源として掲げた校訓「慈愛と誠実と創造と」や、女性教育についての指針は、女子教育の先覚者と仰がれた市川源三が初代校長として基礎を築き上げ、その後の石川志づ、内村鑑三、津田梅子らによって受け継がれて、時代の移り変わりとともに発展してきました。授業には現在の社会化に近い試みがなされ、理科と家庭科の融合、国語に書道を加えるなどの合科を設置するなど、科目の枠にとらわれない教育のあり方を模索し幅広く総合教育を実践しています。

■ 日本の教育が全体主義的な様相を呈し、軍事優先、後には経済優先の風潮が濃くなってた中で、女子教育といえば良妻賢母の育成のことでしたが、鴎友学園では「良妻賢母である前に一人前の人間 であれ。」と教え、市川源三に代わって石川志づが校長に立つと、第二次大戦中にも関わらず津田梅子らによる徹底的な英語教育がなされるなど、将来を見据えた教育を施しました。

■ 戦時から続く「系統学習」を詰め込み教育の流れとし、人間を育てる「総合学習」と対比させてしまうことは極端かもしれませんが、鴎友学園は総合学習的な流れから始まって現在もその流れを続けているのです。また、鴎友学園はミッションスクールではありませんが、創立以来「慈愛と誠実と創造と」を校訓とし、「慈愛(あい)」を神の愛、「誠実(まこと)」を真理と解釈して心の教育に取り組んできました。

■ E.H.エリクソンによりアイデンティティ概念が提唱されると、自己同一性の観点から「勉強して将来何になるか」「何のために勉強するのか」ということが見直され出し、人との関わりの中で勉強したことを生かせなければ宝の持ち腐れと同じで、勉強ばかりができても仕方がないのだということが明らかになってきました。

■ 鴎友学園では創設以来このようなことを、神という超越者の存在を意識しながら生きることで独自に理解してきました。校長がクリスチャンであるうちは日常的に神のことばを聞いていましたが、近年、キリスト教の流れを汲む校長ではなくなったことがあって、私自身が始めてそのことを弱点として感じることとなりました。

■ 現在どの学校でも、国際化やIT・PC関連教育などが叫ばれていますが、実際に必要とされているのは知識を持っている人ではなく、知識を道具として多様に扱うことのできる人、どんな状況に置かれてもアイデンティティの確立を目指そうとする人だと思います。

■ 西欧ではアイデンティティを確立するために「神と人間」や「絶対と個別」に関する教育もなされますが、日本では科学を学んでも宗教的な要素については語られず、歴史の問題の中でも日本の神についての記述などを最低限に抑えてしまい、教育としては施していません。

■ 実際に「神」と聞いてうさん臭い顔をする生徒も多いため、鴎友学園では宗教を押し付けるのではなく理性によって理解しようとする姿勢を作るために「タマゴ・ニワトリ論争」をテーマに上げて生徒と討論をします。

■ 「タマゴが先か?ニワトリが先か?」と質問され、それぞれの観点から「タマゴ」「ニワトリ」と答える生徒に「では100年前は?100万年前は?」とたずねると、科学の力では説明のしようがない領域に到達し、そこで初めて「超越」というものを受け入れることになります。現在は科学の進歩により、技術的にはクローンを作ることまでが可能となりましたが、「それではオリジナルが作れるか?」となると未だ不可能です。

■ こうやって超越という存在を意識しながら「神」を信じている人を理解する作業が始まり、他者理解や自由や主体というものの見方や考え方にまで発展させることが、鴎友学園の教育の中で重要な柱となっています。

■ 自由についていえば「自由」という言葉を使った学校は傾くという言い方をされた時期がありましたが、鴎友の描く「自由」とは勝手気ままに行動することではありません。しかし規則を取るか自由を取るかと考えたときに鴎友学園は「自由であること」を選びます。規律によって縛ることはできてもその意味を理解させることは難しいのです。逆に「自由な発想」で理解しようとすることを教える必要性を感じます。

■ 鴎友学園の教育が文部科学省の掲げる総合学習と違うのは、最後にひとつの目標があって、そこにたどり着くために段階別のテーマを作って授業を行っているところだと思います。

■ 中世の大学ではリベラルアーツによってバランスの取れた人間を育て、その後は神学、法学、医学という専門の道に進みました。「私、将来何をやるのかな?」という具体的な問いが生徒から出るときには、生徒の社会性の発達を実感するときでもあるのです。しかしすべては素直に伸びません。親から与えられた殻を脱ぐ作業は困難なのです。

■ 時間が残り少ないので駆け足の説明になりますが、中だるみ対策については勉強でなく精神面に集中して行うため総合学習に力を入れます。大学のテキストを使った社会学習を行い、クラスの輪を共有しながら調べて表現するところまでを現代社会の授業として行っています。

■ 生命操作など命の問題をテーマにあげてアイデンティティについて考え、それを他者理解につなげて自分自身の世界観をどうやって広げていくかを最後にはPCを使って調べ、発表させるという手法を取っていますが、必要なのはコミュニケーションです。各学校で様々な形で社会化の研究がなされていますが、どの先生も切り口や材料は違っていても向かっている方向は同じだと思います。

■ 様々な仕掛けによりコミュニケーションが過多となるために、同じ先生で複数のクラスを受け持つことは困難です。6クラスを6人の先生で担当し、週ごとに擦り合わせるなど、みんながひとつの方向に向かっていく態勢をとっています。


■ 充実した内容に会場から盛大な拍手が寄せられました。


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