■ 情報教育やIT化といったことが叫ばれていますが、ITを使って授業をどういう風に組み立てていくのかをはっきりさせないと実践的な情報教育とは言えずリテラシーとして成り立ちませんね。ひとくちに情報教育と言ってもアナログとデジタルの両立というか、物と物を結ぶ、関係付けていく、トレースする作業は外せないので、そのためにはパラダイム転換が必要になってきます。これは以前に「私学の先生方の教育コラム7」に掲載した内容にも関連して、二元論では割り切れないものだと私自身思っています。実際に「見えない部分を見せる」という作業は非常に難しいのです。
■ 生徒募集の際には保護者や進学希望者に向けての説明会を開くわけですが、この「見えない部分を見せる」という点で、本来は「思考過程」を表現したいのに、実際に説明会で保護者や生徒の興味が集中するのは「授業の方法」ではなく「覚える物事」のようです。ITを使って見えないものを見せる工夫をしていますが、まだ保護者へは届いていないというのが現状ではないでしょうか?
■ 「物の見方」ということで言うと、共立で使用している国語科文集「ともだち」の名前は「共立」という文字を訓読みしたもので、生徒が付けた名前なのですが、このようにディノテーションではなくコノテーション的な物の見方、考え方をできるようになったというのが情報教育の成果とも言えるかもしれません。
■ この「ともだち」には完成度もそうですが独創性を基準に選ばれた読書感想文などの文章が掲載されており、1ピース足りないジグソーパズルを題材として「完璧でない完成の居心地の良さ」を綴るなど、アナログとデジタルと行き来する発想の転換とも言えるものが個々の作品中に現れているようです。
■ 共立では図書館をマルチメディアルームと一体化するなどの試みも行っており、実際は設置場所に困っただけなのですが、PCで検索する方が早いものもありますが書籍を手に取る方が効率の良いものもあり、文章に見られるようにアナログとデジタルを行ったりきたりする環境として成功しているようです。
■ 国語だけでなく美術においては3年生で受ける美術史の講義の中で発想の転換を意識的に行っているようです。1年の1学期には人間の頭蓋骨を静物画として描かせ、2学期には情報リテラシーとして抽象画にITを利用します。CGを使ったコラージュ作品を制作することが抽象的知的体験となり、2年生では想定自画像を描かせるのですが、言葉で教えるのではなく実体験として描かせた後に美術史をやって理論を学んでいるようです。
■ 他にも空想上の動物を創って紹介文付きの動物図鑑を制作、自分の内面という目に見えないものを絵に描いていく作業、スプーンに映った自分の顔をデッサンするというのもあって、最後に教える美術史では単に知識を教えるのではなく、今までの制作物を通して自分の内面を振り返り成長を促すものとなっています。
■ 美術の時間に、「ピカソの絵が分からないということは、君がピカソ以前の考え方、昔の物の見方をしているということだ。」といった講義も行われたそうですが、世界史でいえば新指導要領によってギリシャ・ローマが大幅にカットされていて、それは現在我々が文学や思想を読み解く際に必要な源の部分なのです。美術史を取り入れるための準備として想定自画像を描かせたように、私は人間性を理解するために必要な普遍的なものとしてこれらのカットされた部分を教えています。
■ こうして知識としてコンテンツのみを教えるのではなく考え方を教えているつもりですが、その部分が保護者や生徒に見えているかどうかは実際には分かりません。ただ、ITと結びついて目に見える興味深いプレゼンテーションとして、ここでは英語の教師が作ったドキュメントを紹介します。
■ 「S男くんとV子さんが出会ったら」ということで第一文型S+Vを教え、2人は結婚して子どもができてという過程で文型を発展させる。愛のある紙芝居的解説とも言えますね。
■ アナログ的な授業であると予想される「礼法」の授業においても、拝み方を教える際に仏拝や神拝の拝み手や拍とコンサート会場での拍手を実際に身体を使って表現するという授業が行われており、真意は聞いていないので分かりませんが、今まで生徒が気付かなかった事柄を気付かせるような内容になっているのだと思います。
■ リアルとバーチャル、ディノテーションとコノテーション、アナログとデジタルというような二元を行き来する両義性のある授業を展開してパラダイム転換を図ることによってITを使った表現にも多様性が出てきますから、吉野先生の超越存在を知ることとも関連して脳内プロセスは確認できなくても制作物には何らかの結果が出ているのではないでしょうか。
■ 対話によるプレゼンテーションという試みの中で、情報教育のあり方や「見えないものを見せる」ための工夫について多くの考え方や実践例が語られました。講演を終えた渡辺先生には盛大な拍手が贈られました。
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