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第2回 生徒獲得戦略セミナー

NPO法人 生涯学習=大学人会議 一級建築士 田口俊夫氏
株式会社エヌ・ティ・エス 企画開発事業部 田尻雄一
「保護者にウケる学校空間」

いろいろな学校や建物の写真を用いながら、特に創造的な思考力を養う空間とはどのようなものなのかを説明して頂きました。はじめに弊社の企画開発事業部の田尻より、志望校調査データから見た「保護者にウケる学校空間」について、プレゼンテーションが行われました。



<データ編集における2つの評価基準>

保護者の方たちが「あそこの学校はかっこいい、素敵だ」という抽象的な言葉で表わしているのをよく耳にします。"かっこいい""素敵だ"という表現はなにを示しているのでしょうか?春先に実施した志望校調査データ編集に基づき、建築空間について2方向の評価基準から考えてみました。

1.外面的評価基準
(1) 生理的・物質的欲求に対応できている(空間のクオリティー・優越感・高級感・清潔感)
(2) 安全管理が行き届いている(動線計画・防犯・セキュリティーシステム)
(3) 自分の存在をアピールできる空間がある(学習・鑑賞・娯楽・憩い・衣食住)
(4) 上記のような欲求を満たしてくれる可能性を校舎から強烈に感じられる
 
<キーワード>
カッコいい・キレイ・美しい ・新しい・凄い・〜みたい・〜と似てる・〜のようだ

2.内面的評価基準
(1) 自己実現欲求を満たす教育空間がある(庭園・茶室・コミュニケーションスペース・講堂・チャペル)
→自分を見つめる・発想を生み出す・感覚を研ぎ澄ませる
(2) 自学(私学)の理念が空間に溶け込んでいる
(3) 伝統(理念・校風)と自分を一致させる仕掛け
(4) 自己実現のきっかけになる教育空間を有している
 
<キーワード>
品がいい・質がいい・懐かしい・〜くさい・ 〜(ここの学校)らしい・〜が素敵


各地の学校空間の写真を見ながら、男子校・女子校・共学校別に検証していきました。質実剛健な男子校や、内面的な美しさが随所に点在する女子校、テーマパークのような共学校などが紹介されました。


<外面的評価が及ぼす影響〜第一印象を大きく決定づけるもの〜>
地方には、奇抜で目をひくものが多くあります。蟹の形をした校舎や、過去でも未来でもない不思議な空間を持つ学校があります。コミュニケーションスペースを大事にしている学校では、内部と外部の連続性を表現しています。そのため部屋の出入口を広く取り、中の様子が分かるようにしてあります。窓を使ってフラスコと注射器を描いた校舎や、後付け増築によって印象的な外見を得た校舎もあります。

内面と外面の評価基準の大きな違いは、視覚的に入ってくるものと、感覚的に入ってくるものだと思います。今回このプレゼンテーションを行った理由は、生徒さんや保護者の方を迎える学校空間が、どの程度評価基準のものさしに触れているのか検証することにより、演出の方法や視覚に入る校舎建築をコーディネイトできると思ったからです。学校の教育理念やイメージを視覚的に捉えることによって、取り組むことができればと思います。


続いて、田口俊夫氏に講演して頂きました。田口氏は、私立大学短大の学長先生や理事長先生が集まるNPO法人である生涯学習=大学人会議で研究員をしている方です。具体的には、これからの少子化の中で大学がどう生き抜いていくかをテーマにしており、その中で生涯学習がキーワードになっています。一級建築士として活躍し、さらに「都市作りとケーブルテレビジョン」で工学博士号を取得されました。イギリスの大学院では、アーバンデザイン(都市デザイン)を学び、イギリスの教育の在り方について感激したそうです。現在は、海外大学進学支援研究所で、海外で学びたいと思っている中学生や高校生へ、ボランティアで情報提供しています。


<マンチェスター大学で学んだもの>
大学方面の専門家という立場から話をしたいと思います。現在、我々大学協会にとって大きな問題・課題となっているものがあります。それはWTO(世界貿易機構)です。2005年1月を目指して、世界の高等教育を共通の存在基盤にしようという動きです。つまり日本の高等教育や建築士制度などの特質性が取り除かれてしまうのです。世界中の大学が共通の資格制度になる予定です。海外の大学が日本に入ってくる、日本の大学が海外へ進出する、これはとても良いことに思います。しかし、世界的に力の持つものは生き残り、力のないものは生き残ることができない時代になってしまうのです。

グローバルな教育の世界では、個の確立が重要になります。個がグループになり、集団となるのです。日本は生徒の個性を大事にした教育・学習ができているのか疑問に思います。海外大学進学支援研究所の活動も、ここからきているのです。日本にはカラフルで綺麗な学校はたくさんありますが、子供たちが孤独に勉強する空間が存在するのでしょうか?明るくみんなで勉強する空間は多々あります。しかし自分なりの勉強をするためには、個の確立が可能になるような空間が必要なのです。

中学高校と大学は、全く違う教育内容のように思われますが、教養教育という点で共通しています。自分を語れなかったり表現できない大学生が多くいます。受験勉強などで忙しいのかもしれませんが、中等教育の段階で教養教育をしっかり身に付けて欲しいと思います。教養教育の中で、教育の中身と共に学ぶ姿勢の問題があります。生涯学習大学人会議という名前は、将来学び続けることに原点があります。社会に出た後も学び直す必要性が出てくるのです。その時個人という原点に戻り、孤独に耐えながら学び続けていかなければなりません。

海外の大学においては、ひとりの学ぶ人間を原点としています。その人たちがどのように学習するのか、学習する場を提供することができるのかが重要になります。海外の大学の学生は、図書館で勉強をします。講義室で学び、きっかけを掴み、さらに自分なりに突き進めて勉強するため図書館を利用します。日本の図書館は付け足し的存在でしかありません。日本の学生たちは、自分なりに勉強を突き詰めて学ぶ習慣がないからでしょう。

先ほどの洗足学園中学高等学校の図書館は、非常に明るくて良いと思います。パソコンもあり、楽しく活動しているでしょう。ただすべてが明るく、日本の空間は全体的に明るい傾向にあると思います。日本のホテルのロビーは非常に明るいですが、ヨーロッパのホテルのロビーはうす暗く、厚みのある空間になっています。照明ひとつで、全然ちがう印象を与えることができるのです。もちろん、いろいろな空間があっても良いでしょう。日本の子供たちは、群れることで心のやすらぎを得ると思いがちです。孤独に勉強できるしかけも欲しいと思います。

例えばイギリスのケンブリッジ大学の図書館では、個々の机に本を積み重ね、研究論文を書いたり、勉強に没頭する学生の姿が目立ちます。論理的な構成と、相手に自分の意見を伝えるコミュニケーション能力が必要になるからです。日本の教育空間には孤独に勉強して、自分の考えを突き詰めて考える勉強法がありません。一方的な授業ではなく、生徒たちも自分のモチベーションが高まる授業をしたいと思っています。

建築家は自分の作品を作りたいと考え、建築=芸術家の一員だと思いがちです。作品ではなく、学校としての役目を果たせる建築が重要になるでしょう。子供たちが毎日ワクワクできると同時に、自分の考えを突き詰めて勉強できる教育空間を作ってほしいと思います。その為には設計する人間だけに任せるのではなく、学校の先生・生徒・保護者・OB・OGなど、みんなで共に考えるプロセスが必要になるでしょう。空間を利用する人たちが意見を出し合い、ものを作ることが大切です。

都市計画など建築の世界では、デザインサーベイという言葉があります。これは、いろいろな建物や街などを利用する人が細かく観察し、その建物や街の良いところ悪いところを探し出すというものです。このような方法で、学校の教育空間に必要なものを考えて欲しいと思います。どのような教育をするのか、どのような子供を育てていきたいのか、学校としてのミッションをもう一度話し合い、実践して欲しいと思います。



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