Workshop Report
教師のための自己表現セミナー&ワークショップ


10:30 レクチャー「セミナーの目的について」

まず、はじめに集合したのは、ホテルツインリンクの会議室。今回は、この会議室を主として使用していきます。実習を中心としたワークショップを行うため、自由に席を動かせるようにと、固定された机は無く椅子だけが並べられています。まず、Honda「発見・体験学習」を行っている本田技研工業の小林氏から挨拶があり、講師の佐々木先生が登場してワークショップがスタートします。

佐々木:みなさん今回のセミナーの名前覚えていますか?私が言えないと問題なのですが、たしか「自己表現セミナー&ワークショップ」でした。どうでしょうこの『自己表現』というもの、得意な方、不得意な方というのをいきなりですが聞かせていただいてよろしいでしょうか。得意な方から54321で手を挙げてみてください。

「5の方?」「4の方?」と順々に佐々木講師が聞いていきます。まず『5』と自信を持って自己表現が得意という方は、1人もいませんでした。その後にも次々と聞いていきますが、『3』や『2』になってやっと手があがります。

佐々木:今はあまり『自己表現』が得意ではないとご自分で思っていらっしゃるようですが、この2日間でどれだけ変われるのか楽しみですね。今『3』や『2』の方が多いですが、最初に言っておきます、最後には全員に『自己表現』を全員の前で行っていただきます。

まさか全員の前で発表をすることは無いと思っていたのでしょうか、苦笑いをしたり顔を見合わせたりと皆さんが驚いている様子が伺えます。

佐々木:この話を聞いて逃げださないで下さいよ。私は、先ほどご紹介いただきましたように栃木県、茨城県の方でかなり教師の研修をやらせていただいていますが、最後に必ず30秒プレゼンテーションというものをやっています。その時は120人の前で120人が30秒づつプレゼンテーションするんです。みなさんこれ位の人数なら大丈夫でしょう。30秒間はどう使っても、何をしても良いです。これがこのセミナーの最後の目標になります。皆さん、がんばってください。


この後、1枚目のレジュメが配られ、まず初めのお話しは自己表現の本質である「伝える」ことと「伝わる」ことの違いについて。500人くらいの生徒を相手にする大学の授業でもこのレポートを出しているそうです。一字違いのこの言葉ですが、「自己表現の本質が隠されている。このセミナーの最後にはこの言葉の違いが少しでも生まれれば成功」と佐々木講師は語ります。
その後、Presentation の基本的な考え方についてお話しは続きます

P r e s e n t a t i o n  (1) Self-expression
(2) Communication
(3) Intaractive Art
プレゼンテーションには、このSelf-expression「自己表現」、Communication「コミュニケーション」、Intaractive Art「双方向的な芸術作品」3つの要素が必要であるとのこと。

佐々木:最後の「Intaractive Art」これが私の特徴なんですが、私は、授業は「芸術作品」だと思っています。どういうことかというと、授業は教師だけでなく教師と生徒が一緒に作り上げる双方向的な芸術作品だという意味なのです。

さて皆さん、カラオケには行かれますか。カラオケが好きな人苦手な人いらっしゃると思いますが、この中でカラオケで人が聞いてなくても歌える方いらっしゃいますか?誰もいませんねぇ、なかなか歌えませんよね。では、聞いていないとやめる方は?

お1人手があがります。

佐々木:みなさんに「表出」と「表現」という言葉についてお話しをします。相手が聞いてようが聞いてまいが歌えるというのは「表出」、聞いているか聞いてないか確認するのは「表現」。私は、聞いてないと嫌になってしまいますから「表現」なのです。さっきの話と似ている事わかりますか?「伝える」ことと「伝わる」こと。このことが最初から最後までこのセミナーに流れていると言うこと、意識しておいてください。

実際の大学の授業では、この「表出」と「表現」、「伝える」ことと「伝わる」ことについて15回立てで講義を行うそうです。今回のセミナーは、2日間のプログラム。ハードになりそうではありますが、中心となる「伝える」ことと「伝わる」ことは、2日後皆さんの中でどのように概念化されていくのでしょうか。
レクチャーの後は、今回のセミナーで最初に取り組んでいただく『出会い実習』に進みます。

 
会議室には椅子だけ並べられています。
本田技研工業 小林氏。
佐々木講師が登場し、レクチャーがはじまります。 マイクを持つとスイッチが入るという、佐々木講師。
あっと言う間にお話しに引き込まれ、真剣な皆さん。 身振り手振りも交え、みなさんに語りかけます。


10:45 出会い実習

佐々木講師の合図で一枚の白いカードが、1人1枚配られます。

佐々木:このカードに本名以外の「名前」を書いてください。
この部屋の中で今回はじめて会った方ばかりだと思いますが、別人格になれるチャンスです。何でも良いです、自分に名前を付けてみてください。
書き終えたら、とにかくここにいる方と出会ってください。そのカードをもってカードに書いた名前を紹介しながら出会ってください。1分間時間をおきますからなるべく多くの人と出会ってください。

書かれている名前をのぞいてみると多種多様。「ペン」「ペットボトル」「ホワイトボード」など目についたものをとりあえず書いたと思うものから、「ポールマッカートニー」「中田英寿」さんもいらっしゃいます。

書き終えるとカードを持って立ち上がり、周りの方に声をかけカードを見せて次々と出会っていきます。おじぎをしあい笑い合う姿で会場は一気に賑やかに。やがて1分が経過すると、次になるべく出会っていない人と出会い、ペアを組みます。

佐々木:自己表現、プレゼンテーションはコミュニケーションです。皆さん向かい合ってすわって下さい。次にAさんとBさんをどちらにするか決めてください。Aさんが話すときはBさんは聞く、Bさんが話すときはAさんは聞く、ということを徹底してください。これから一人づつ30秒間、自己紹介していただきます。

手順が説明されたあと、「それでは、Aさんスタート!」と声をかけると各ペアは一斉に自己紹介を始めます。30秒が経過し、「はいAさん終了。Bさんスタート!」と声が再びかかり交代して自己紹介をします。Bさんも終了すると名前を書いていた紙を交換してくださいと指示がでます。

佐々木:さて、これであなたの人格は変わりました!これから今手にしているカードの人になりきって下さい。そして、また違うペアを見つけて先程と同じように自己紹介をして下さい。

この後、再度カードを交換し別のペアを組んで自己紹介をし合いました。今度は時間は15秒に短縮されます。AさんBさんの自己紹介が終わると佐々木講師からこの実習の目的が説明されます。

佐々木:終わってみていかがですか。さてこの30秒間、結構長く感じませんか?話すことが無くなってしまったりしませんでしたか?聞く側にとっても結構苦痛でしたよね。では、今度15秒にしてみました。たった15秒に減らしただけですが、極端に短くなったように感じませんでしたか?この実習では、最後に行う30秒プレゼンテーションのために「時間」というものを意識してもらいたかったのです。体に「時間」が染み込んだでしょうか?


 
自分に好きな名前を付けカードに記入します。 一斉にカード持って席から立ち相手を探します。
面白い名前に笑顔や笑い声で一瞬にして賑やかに。 ペアになって自己紹介をします。
拍手をはじめるのが佐々木講師流の儀式。 カードを交換し、別人格になって自己紹介を。


11:00 レクチャー「高度情報化時代の自己表現」

「時間」の体感とともに、参加者の皆さんの自己紹介やアイスブレーキングを兼ねた出会い実習の後は、再びレクチャーに移ります。

佐々木:「伝えること」「伝わること」のお話しなんですが、コミュニケーションって難しいんだなと思っている程、実は、うまくコミュニケーションができるんです。難しいって事を前提にしてないときちんと聞けないんですね。「高度情報化時代の自己表現」というお話しに移りたいと思います。

少し前でも学校では大人しいが、家に帰るとうるさいというような環境による人格の変化はありました。最近では、それに加え、普段話さない子がパソコンの中ではとてもおしゃべりになるというように、新しいメディアによって人格が変わるという現象がおきていると佐々木講師のお話しは続きます。
新しいメディアが続々と登場し、コミュニケーションが多様化しているのだと、コミュニケーションの形と特徴が挙げられました。

話を聞くこと
本を読むこと
耳を使う
相手のペースに合わせる
1回限り
目を使う
自分のペースで
反復可能
話をする
文章を書く
口を使う
1回限り
手を使う
反復可能
コンサート
レコード
体を使う
1回限り
集中
耳を使う
反復可能
ながら
舞台
映画
1回限り
反復可能

最近の学生は、話すことや聞くことよりも、文章を書く事の方が得意になってきているのだそうです。
こうしたメディアを、佐々木講師は、大きく会話型メディアと手紙型メディアに分けて考えています。ここで佐々木講師から質問が飛びます。

佐々木:みなさんは大切な事を相手に伝えなくてはいけないとき、何で伝えますか?

直接会う方、電話をする方、手紙を書く方、携帯で電話をする方、メールを書く方、携帯でメールを書く方、と順々に聞いていきますが、ほとんどの方は「直接会う」に手があがります。しかし、学生に同じ質問をすると「携帯電話のメール」が圧倒的に多く、近年大きな変化が見られる点だそうです。

佐々木:携帯電話は人間の人格を根本的に変えてきています。携帯電話とは、いつでもどこでもだれとでも繋がると言う事。いつでもどこでもだれとでも交換できちゃうということなのです。容易に交換できてしまうということは、自分がいつ交換されるかもしれないという恐れや警戒心があります。コミュニケーションの主体が携帯電話になってきて「つながり依存症候群」という状態の今の子ども達は、自分がかけがえの無い存在だということを実感しにくい状態だということを意識して欲しいんです。

この後、つながりを実感したがる子ども達の「つながり依存症候群」の具体的なエピソードを交えた、佐々木講師流の言葉が数多く登場します。

佐々木:最近の学生をみていると恋愛現象が二極化していることに気付きます。まず1つ目は、「タコ足恋愛」。ひとりになるのが怖いので、保険を置いておき、いつでもどこでもだれとでも繋がってなきゃいけないと思っているんです。恋人と友達の区別がつかなくなったなんて相談を受けたりもします。これは、1割位なのですが、では残りの9割はというと、「他の男としゃべったら浮気でしょ?」などと言うくらい、独占的な関係の「タコ壷恋愛」。とても女性は器用だと思うのは、この「タコ足恋愛」と「タコ壷恋愛」を同時に進行しちゃう人もいますね。

さて、話しは変わって、電車に乗りますよね。そうすると私の前にうら若き乙女が座っている訳です。すると鏡を出しました。皆さんも良く見た事があると思いますが、何をするかと思えばお化粧をはじめちゃったんですね。僕なんかの考えではお化粧って人前でやるものじゃないですよね。しかし、彼女にとっては、周りの私たちは、風景に過ぎないのです。その彼女も途中で知り合いが乗ってきたらパッと隠すようにお化粧をやめました。これはどういう訳かというと人間とモノの区別がつかない。自分の知らない周りの人は、彼女にとってモノなんですね。「モノ感覚」なんです。この感覚というもの色々考えなくてはいけないのです。この基本は5感です。ここで少し、5感を感じてみましょう。

この後、聴覚を使うため目をつぶり耳をすませて部屋にある音がいくつあるか指折り数えたり、視覚を使って部屋にいくつの色があるのか数えたり、臭覚で臭いを感じる等、体感ワークを全員で行いました。

体感ワークを行った後、ペアになりここまでの感想を30秒ずつ話し合います。「伝え方の方法がたくさんある事に気付いた」、「色々な話しを聞くうちに自分がとても偏っているうちに気付いた」等の感想が出ています。

1度感想を言い合った後、再度感想を言い合うのですが、今度は電気を消し真っ暗闇の中で話しをします。

佐々木:さて皆さん、どちらの方がやりやすかったですか?暗闇ではやりにくかったですよね。気付きましたか、コミュニケーションというものは自動的に全身で5感でアピールしてるものなのです。今、やりにくさを感じたその5感をすべて奪われた状態でやるのが、今の情報化時代のコミュニケーションなのです。どんな状態で今の子ども達がコミュニケーションしているか分かりましたよね。だから、体感することは重要なのです。

体感ワークで情報化時代のコミュニケーションを実感し、レクチャーは終了しました。この後、昼食をとりツインリンクもてぎ内のハローウッズで野外フィールドワークを行います。
 
出会い実習で肩の力が抜けたらレクチャーです。 学校でも重要なコミュニケーションについてのお話し。
ホワイトボードに次々とキーワードが並んでいきます。 部屋の中にある色を指折り数える体感ワーク。
ペアになりここまでの感想を言い合います。 暗闇でも同じように会話し、5感を失う状況を体感しました。
     
   


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取材:NTS教育研究所




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