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[パネルディスカッション 21世紀型学習と私立中高一貫校の魅力について考える]
パネリスト
・ 共立女子中学高等学校 広報部主任 渡辺眞人氏
・ 白梅学園清修中学校(認可申請中) 学校長付室長 柴田哲彦氏
・ 東京女子学院中学高等学校 教頭 吉田稔氏
・ 司会 NTS教育研究所 国際教育情報室 室長 岡部憲治氏


■ 授業

岡部:今日のテーマ『21世紀型学習と私立中高一貫校の魅力について考える』について、いくつかのテーマに絞ってキーワードで考えてみたいと思います。まずは『授業』というキーワードからはじめたいのですが、パネリストの先生方、まずはそれぞれの学校の授業についてお話しいただけますか。




渡辺:基調講演の川合先生のお話にもあったCALという会で出している書籍『私学の挑戦 -The授業― Volume3』のあとがきでも述べましたが、これからの学習は新しい知識をどうやって創っていくか、知識創造理論というのがテーマにあります。私は
『暗黙知』
という経験の共有によって得られる主観的な知識を言語化し、
『形式知』
という理解可能な言語や概念に変換していくというふうに捉えています。この変換のために、私はコミュニケーションを重視した授業展開をしています。やり方は問答方式ですけども、そこで教師が投げる質問がオープンクエスチョン、答えが簡単に出ない、かつ良い質問でなければ意味がありません。この問いと答えの往復という問答法が教育の原点だと私は考えております。「21世紀型学習」というキーワードがタイトルについていますが、問答法というコミュニケーションが普及するかどうかが、これからの教育に大きく影響するのではないでしょうか。

柴田:私どもはゼロから新しい学校を創るということで、原点にかえろうと考えながら準備を進めております。「教える」という概念を考える時に、まず伝える側には

「teach」

ということに対して、支援するという意味で

「coach」

という言葉があり、

「teach」の下には勉強するという「study」
「coach」の下には学習するという「learn」

という言葉が来ます。今まで行われていた

「teach」→「study」→反復トレーニング

というスタイルでは、子どものモチベーションは上がりません。子どもが「study」あるいは「learn」のどちらの状態なのかを把握し、指導者側は「teach」と「coach」を切り替える、そのタイミングを子どもたちの中に入り、あるいは外から見て判断できるコミュニケーション力が教師に求められていると思います。そういう授業の組み立てを、準備室のメンバーには依頼をしています。

吉田:東京女子学院の吉田でございます。私が昨年度の4月に前任校から移りまして、学校の改革を進めているところです。私の着任前から、ネイティブ教師が英語を英語で教えるという先進的な実践をしていましたが、今年からはそういった改革を、英語だけでなく国語・数学・理科・社会等にも広げて教育を創りだしていこうと考えています。改革の大きなテーマに
「論理的思考力と表現力」
の2本柱を掲げ、どの教科でも授業改革を進めてきております。本校では、感性教育で実践している礼法、華道、中学生では弦楽器の授業が必修になっております。こういう日本文化、あるいは異文化の理解を深めると同時に、そういう学びをとおしてコミュニケーション能力を高めていく、感性を豊かにすることをねらいとして実施しています。一例として、この3月に全校あげて実施したミュージカル公演があります。英語シナリオ作成、舞台装置、照明、音響、すべて子どもたち中心で行い観客の受けている感動や自分たちの力でやりとげたことの大きさを感じ、非常に大きな自信を持つことができたと言えます。
このように総合的な結果に結実していくようなものを目指しながら日々の教育を進めていこう、授業もそういう形でやっていこうと考えています。

岡部:今お話をお聞きしていると、渡辺先生の『暗黙知』、『形式知』。柴田先生の仰った「teach」と「coach」、「study」と「learn」、それから吉田先生の仰った「英語教育から他教科への自発性」とそして実際に生徒さんが体感することを覚えた」とのことですが、どの先生の発言からもコミュニケーションという言葉が私の頭には浮かんできます。

 

■ 評価

岡部:今の先生方のお話から、コミュニケーションという言葉が頭に浮かんだのですが、授業とコミュニケーションを絡めると、次は『評価』の問題が出てきます。評価にも成績評価、自己評価など色々あると思いますが、評価の仕方自体が変わっていく必要があると思うのですが、実際にどうでしょう。

渡辺:評価は非常に難しいですね。テスティングポイントが明確になるテストをしないと、きちんとした評価は出てきません。また、先ほどから色々出ているコミュニケーション特性がどのくらい活きているかを客観的に近い形で判断をする材料にはならないと思います。例えば国語で詩を題材に学習したとします。通常は倒置法だとか、色々な内容をテストして終わりになるのでしょうが、本校の場合、まずグルーピングしてなぜ自分達がその詩を選んだのか話し、詩をグループで解釈して最終的には朗読してプレゼンをする。つまり、その詩をどこまで理解できているかということが朗読することによって明確になるだろうという方法です。その詩が解釈できるだろうかということと、子ども同士の双方向のコミュニケーションを築き維持することにより、語学の知ということに近づいて解釈することが出来たかどうかが分かると思います。あとは、古文を現代語訳にせず原文のまま英語に翻訳させるというものもあります。そのプロセスの中での創造性も評価に入ります。

柴田:評価とは、学習者にとっては今自分がどの位置に立ち、どの方向を向いているかを把握するためのもの、指導者にとっては狙っている到達点のどのレベルに、どういう状態で子どもたちが来ているかを確認し、その次の手立てを講じるためのものです。ですから、ペーパーテストという形態もあるでしょうし、子ども達と交わす生活記録などの中で、今この子はここまで理解しているという判断をしたり、子どもが今いるポイントを本人に指し示すのが評価じゃないかなと思います。

吉田:今まで評価では、教員が生徒を評価するためのテストが多かったと思うのですが、本校の場合、今年から自己評価ということを各科目で実施しています。テストが終わった後に、その期間の自分の学習がこのテストにどのような成果として表れているかを考えるというものがひとつあります。各科でそれぞれ必要な項目を含めた自己評価表というのをつくらせているわけです。まだ検討中の状況ですので完成品ではないのですが、各教科で4段階で自己評価させ、教科担当がコメントして返します。返す前にクラス担任にも読んでもらい、その子の学校生活全体の姿を学習面だけでもある程度見えるようにしていこうという意図があります。中学1年から高校3年までの教員とのコメントのやりとりで、少しずつ自分の学習の仕方をチェックしながら意識を成長させ、将来的には生涯教育にもつながる自立した学習者に育て上げるという事が本校の目標です。

岡部:授業、家庭学習、テストまでのプロセスを全部見るという感じですね。授業と評価が当然繋がっているわけですが、生徒さんがイメージする授業と先生方がイメージする評価では違う事が行われているのだなということを実感いたしました。

 

■不易流行

岡部:『授業』、『評価』を含めて、『不易流行』ということをもうちょっとお答えいただければと思います。要はこれから変わっていく部分、建学の精神に基づいて変わっていかない部分、両方が私学にはあると思いますが、それに対してどのようにお考えかをお聞かせ願えればと思います。

渡辺:本校の母体は明治19年に創立された学校です。「女性の自立」という言葉をつくったりもして、社会の第一線で活躍できる女性づくりというのが本校の大きな目的であり今も受け継がれる建学の精神です。この「人間をつくる」という目的に関連し、中学の段階から6年間かけて自分の進路を決め将来を見つめる機会を多くとります。キャリアガイダンスです。その結果のひとつが進学実績ですね。いわゆる早慶などの上位校合格者も多数出ますが、これは決して我々が無理やり出させたわけではなく、自分達がきちんとキャリアガイダンスを中学から積み重ねて自分の進路を考えていく中で、選んだ結果として出てきたものです。また、『暗黙知』を『形式知』に変換、つまり目に見えないものを見える形にというやり方の例としては中学1年〜3年のコンピュータの授業があります。まず基本的な使い方を学び、ここからが本校の特長だと思いますが、どの学年も十分時間をかけてコンピュータグラフィックをやります。コンピュータを使うということは、頭の中の脳内空間をモニタしながら自分の意識を1つの作品に仕上げていくということなのです。そういうことをやりながら人材育成をしているということで、不易流行のものであっても、結局は時代に即しているということです。

柴田:やはりゼロから始める学校で、先生方が何年も積み上げてきた既成概念といいますか、そういうものがないところからスタートできるということが一つの大きな益であると思っています。不易のものを考える時に、あの当時の学校はなんだったんだろうとか、あの時代の学校は何を教えてどういうことを目指してやっていたんだろうとか、数千年の歴史を乗り越えてきている大問みたいのがイメージとしてあります。そういうものを見ながら、どうやって子ども達を教える学校を作ってきたんだろうということで、変わらないものは何なのかということを一生懸命、今準備室の方で勉強している状態です。

吉田:本校は昭和11年、女子教育を目指して創った学校です。当時から言われていた女子教育の根本として、社会の一番小さい単位である家庭、そのリーダーシップを取るのはやはり母親である。その母親がやはりきちんとした人生観を持ち、生活のできる女性でなければならないという考えがあります。そういう中で、礼法とか華道とか、いわゆるコミュニケーション能力をつくる、あるいは自然とか何かということを取り入れて生活することを身をもって経験できる授業展開をしてきたのですが、最近の脳の研究で、そういう活動が実は右脳の部分を非常によく開発するということが分かってきています。知的な部分というのは左脳で反応するわけですけども、右脳左脳のバランスを良く保ちながらやっていく。たまたま創立者がやってきた不易な部分ということが、実は今の科学で解明されているバランスのいい脳を養成できる内容であるということが意味付けられてきています。そういう意味では、不易な部分というのは、人間にとって本当に必要な部分、これを大事にしていく知恵だと思っております。そう言う意味で、不易な部分というのは、学校として非常に大事なものだという実感を持っております。人は人生でたった一度の教育経験しか持つことができません。その唯一の経験を、豊かな、そして実際の生活の中で本当に役に立っていく、そういう教育活動にしていきたいと考えて日々取り組んでいます。

 

■未来を創る学校

岡部:『授業』『評価』『不易流行』と見てきたのですが、最後に今日のテーマにもなっています『未来を創る学校』、このキーワードから先生方が何をお考えになるかをお聞きしたいのですが。

渡辺:不易流行の中でもお話しましたが、未来の学校の本校の哲学というのは、やはり時代の要請に応えた人材育成だと思います。変化し多様化する社会の中にあって、新しい知識を創造する時に、その社会の中で役に立つものかどうかを見越していくことも必要です。これまでの知識が社会で通用しないこともあります。知識も文化も、多様なものを多様な角度から捉え取り入れていく学校になっていくべきではないでしょうか。

柴田:子どもたちが未来や未知に挑戦するときには非常に不安で、この先どうなるんだと迷いを抱えながらの挑戦の連続だと思うんですね。ですから、子どもたちにとって、学校が登山の最終ベースキャンプのような場であればと考えています。いつでも帰ってこれる、あるいは挑戦していくためのいろんな要素を学校自体が常に研究して、それを子どもたちに伝えてあげる。そこからさらにそして価値観を大きくして羽ばたいてくれたら。そういうベースキャンプのような学校をイメージしています。

吉田:今の学校はまだ1年しか経験がありませんので、ちょっと生徒との関わりと言った時に将来どのように育っていくのか見えてない部分もあるんですけども、前任校の場合数十年努めていまして、それぞれ担任していた子たちがどう育っていくかを毎年顔を合わせる機会があって35年間毎年報告を聞いております。その報告を聞いていると、やはり学校にいてよかったという事がいつも語られるんですね。そのことはとても大事なことだと思うんです。今柴田先生の言われた、ベースキャンプになっている。前任校は男子校だったので、女子校になったときに、卒業生とそういう話ができる、何かあった時には話したくてしょうがない、伝えたいという学校になっていくことがまず大事なのかなと思います。生徒にとって、学校が家庭のような感覚であればいいかなと思います。


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