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聖徳学園中学校・高等学校 学力向上フロンティアスクール 公開授業
「CitizenShip Educationの展開」―能の世界から学ぶこと― 総合(CE) 中2BFクラス

2005年3月1日
by 今村 衣里加

■ 見学させていただいた中学2年生の総合(CE)は、『能』という1つの日本固有の伝統芸能を学び、体験することを通して日本の伝統芸能を理解するとともに、『能』から効果的なコミュニケーションやプレゼンテーションのヒントを考えることを目的とした授業だという。

■ 教室に入ると、先生が「レベル2」とだけ言葉を発した。何のことかと思っていたら、生徒たちはその言葉を合図に黒板を半円型に取り囲むように座り、姿勢を正して授業を始める態勢を整えていた。黒板の前に設置されたスクリーンでは『Q1.なぜ「レベル2」と言われて姿勢を正すのか』と書かれたアンケートの結果が円グラフで映されている。アンケートの結果には『場の空気を変えるため』といった回答が載っており、「静かにして」「姿勢を正して」といった直接指示ではなく、『レベル2』という合言葉によって、姿勢を正し『場の空気を変えること』がこの授業での共通ルールになっているようであった。こういった言葉のルールは、能をはじめ古い芸能の中でも使われているということで、この授業でもルールを作って「聞き手として積極的な態度とは何か」を考えさせていたようだ。

■ 授業は主に、先生がパワーポイントをスクリーンに映し、それに説明を加えながら展開していく。しかし、ただ講義を生徒に聞かせるだけというのではなく、随所で生徒に質問を投げかけながら授業が進んでいく。普段からこのような授業形態を取り入れているのだろう、生徒達の反応もとても早く、積極的な発言が見られた。

■ 「これまで能の勉強をしてきて、まだ『能は暗いな』と思う人」先生からの問いかけに3分の2ほどの生徒が手を挙げた。そこから、第1回、2回の授業で能の歴史を勉強したことを振り返る。能楽師を招いての『能の体験教室』では、歩き方の体験や本物の能面をつけるといったことを、生徒達が実際に体験したという。「能の面(おもて)を見てどう思った?」「実際に能面をつけてみて何を感じた?」と、その時を思い出させるような質問が先生から投げかけられる。生徒からは「重い」「能面を内側から見て、職人さんの気持ちを感じた」と、いくつかの感想が出てきた。それを受けた先生からの「そうだね、表現するものによって面の掘り方も変えているというお話だったね」との言葉に、生徒達も体験したことを思い出したようであった。

■ 能を学んでわかったことのポイントがスクリーンに映し出される。『動かないという動き』『簡素化・合理化』『心・気』。3つのポイントを踏まえた上で、実際に能を体験したことで「心理・生理的」に、何がどう変化したのかを、生徒の1人がPPTを用いてレポート発表を行った。タイトルは『能はどんな影響を与えるか』。実験方法(A群、B群に分け、実験前に血圧と脈拍を測る。A群にはすり足、B群にはラジオ体操を5分間してもらう)からはじまり、実験後の報告、考察、結論(能の技法で体を動かすと、疲れはするが精神的に落ち着く)まで、しっかりとした実験レポートであった。ここでは能という日本の伝統芸能を、生理学的な側面にも結び付けており、正に総合学習といった感じを受けた。この実験の結果をもとに先生から「能の技法を何に応用しますか?」との問い掛けがあると、「健康診断の前にすり足をして血圧を下げます」といったユニークなものや、「発表会の前にすり足をして落ち着こうと思います」など、生徒の身近な生活に沿った活用方法が挙がった。

■ 続いて、先生が『音を出して静けさを演出する』と黒板に板書をした。「能のビデオを見た時、シテが出る前に大鼓を鳴らすことで静けさを強調していたよね。音を出して静けさを演出することには、他にはどんなものがある?」との問いかけに対し、生徒から「日本庭園によくある、ししおどし」といった意見がすぐに出てきた事からも、生徒が日本の文化や伝統に興味を持っていることが伝わってくる。ここで先生から「音だけでなく、反対・逆のモノをうまくプレゼンにいかせると、発表に色が出るね」とアドバイスがあった。

■ 能の世界で一番大切にされている要素として、最後に『気』について取り上げられた。先生が「『気』を使った熟語を2つ挙げてみて」と1人の生徒を指すと、少し考えながら「気迫、気配」と応えがあり、それを先生が黒板に書いていく。それに刺激されたかのように、指名をされなくても生徒から「病気」「殺気」「気体」と、次々と『気』を使った熟語が出てきた。「色々出ましたね。この中で、気配と言うのは『気を配る』ということ。能では見ている人が気を感じますね。しかし演者が気を感じていないかと言うとそうではなく、演者は気を出している。体験の時に先生が歩いて入ってきた瞬間、気を感じたよね。能では歩きながら見ている人に気を伝えている、気を配っている。日常生活で、私達もそれに近いことをやっています。さっきプレゼンテーションをしてくれた○○君、プレゼンをやってみて感じたことはありますか?」先程実験レポートを発表した生徒が「もっとスムーズにやればよかった」と応えると、先生からこの授業最後の課題が出された。「他にも、見ている人からも色々と感じたことがあると思います。最後にチームにわかれて、発表について話し合ってみよう」

■ 教室全体を各15人ほどの2チームに分け、『発表という場はどう作ればいいのか』を3分間話し合った。片方のチームでは『授業の時、先生はどんな準備をすればいいのか?』を具体的な例として、1人1人が順に意見を出していく形で話し合っていた。「下調べをちゃんとして相手に聞いてもらうように準備する」「相手の気が自分の方に向くようにしないと」「そのためには簡潔にまとめるべきだ」と、意見が交わされる。もう一方のチームでは、発表では何が大切になるか、といったことを話し合っていた。「わかりやすい言葉で言えばいいんだよ」「気合があれば何でもできる!」「わかりやすくまとめて話す」「発表する側と聞く側が一緒になれるような発表がいいと思う」など、こちらは気づいたことのある人からどんどんと発言をしているようだった。

■ 3分後、各チームがまとめを発表した。授業の時の話を例に挙げていたチームは「プレゼンターは話をわかりやすくまとめて、聞く方の姿勢も大切」とまとめ、もう一方のチームは「プレゼンターは事前に準備をするなど相手に聞いてもらう努力をしなくてはいけないし、聞く方も相手が言う事を積極的に理解しようとする姿勢が大切になると思う」とまとめられていた。両チームとも、「簡素化・合理化」「心・気」といった能の要素をしっかりと理解し、プレゼンテーションにおいて大切なことは「プレゼンター」だけではなく、「聞き手」の態度も同時に大切であることに気づいていたようであった。

■ 本日の授業では、最後の発表はもちろん、先生からの問いかけに応える生徒の発言から、生徒が能の要素をしっかりと理解し、さらにそれをプレゼンテーションやコミュニケーションといった日常生活に応用できていると感じる部分がところどころで見ることができた。次回の授業では、この能を通じて学んだ事を盛り込んだプレゼンテーションが行われると言う。この授業を通して学んだことが実際にいかされた、プレゼンターだけではなく、聞き手としてもふさわしい態度で臨む、優れたプレゼンテーションの場ができることだろう。

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