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共立女子中学校の授業 〜アイデア授業コンクール

2003年12月25日
by 片岡 亮一

■ 今年9月、コンクール当選校による「アイデア授業」の実施が全国各地で始まった。コンクールは日本教育新聞社の主催により全国から募集されたもので、「子供たちの学習意欲が向上する、自由で新しい発想の指導」という趣旨で、私立公立を問わない80を超える小中、特殊教育諸学校から「こんな授業をやってみたい!」という授業計画が集められた。このうち書類選考で選ばれた10校が、それぞれの学校で授業を実現させた。

■ 今回訪れた、共立女子中学校の松ヶ枝孝之先生(英語科)、岸田彩先生(国語科)の授業もそのひとつだ。英語と古文のコラボレートで、「枕草子を読み、現代語を介さずに英訳する」という挑戦を行った。鑑賞する際に、機械的に現代語に当てはめてしまう事を避けることで、言葉の広がり、そして古文の世界や文化に触れる。さらに英語で表現することでまた違う言語文化に触れる。岸田先生が題材に選んだのは枕草子「ありがたきもの」の章段だった。

■ 取材したのは3限にわたる授業のうちの3限目、翻訳の鑑賞と掘り下げの時間だった。8つのグループに机を並べ替え、その間を松ヶ枝先生が歩きまわるスタイルで授業は進む。まず1限目に集めた「みんなの考える『ありがたきもの』」のプリントが配られた。エイリアンやカッパなどから、両思いになること、勉強しないでいい点数を取ること、巡ってくるチャンスをつかめる人、など様々な回答が並ぶ。「人間関係におけるものや願望‥‥潜在的には‥‥も多いですね。」と松ヶ枝先生。途中、「チュパカブラ」という生徒の回答に「メジャーな生き物?」、生徒:「歯がぎゃーっとなっててインドかその辺の‥‥笑」といった和やかな会話もあった。

■ 次に各グループで2限目に英訳した訳文が全員に配られ、ポイントになる部分を取り上げながら鑑賞していく。「『‥a tweezer made of silver which can pull out hair,‥』‥‥これだとtweezerに意思があるみたいですね」と言って英文法の説明が始まる。続いてみんなに「『〜毛のよくぬくる銀の毛抜き‥‥』の『毛』は『hair』なのかな?」と問いかけた後、岸田先生に振ると、岸田先生が自分の眉を指差す。「eyebrow」ですねと松ヶ枝先生。授業の最後にはイワン・モリスによる英訳が配られ、「hair」で訳されてしまっている点にも触れた。

■ 3限に渡った授業には様々な工夫がちりばめられていた。

■ 1限目、読み解くのに必要な知識の準備と再確認が行われたが、例えば「は」を用いた構文の復習では、「スポーツは?」「果物は?」など、文の構造を分かりやすい例題にして言わせたり、語彙説明の際には、訳語を固定させない為に板書を行わないなどの工夫があった。授業の最後にでた課題では、現代の人間の思い浮かべる「ありがたきもの」とは何か、枕草子でえがかれたものの特長、現代との共通性という問いが投げかけられ、周囲の席の人と話し合う時間を通して、人間関係や人間性への興味を引き出す配慮がされた。

■ 2限の英訳は、まず個人個人で考えた訳を持ち寄ってグループでディスカッションしながら組み立てるというスタイル。辞書を利用してよいグループと、自力で翻訳するグループ、英訳に翻訳ソフトを用いるグループと、3種類のグループに分け、多様な状況から多様な訳が生まれる点に目が向けられた。

■ 授業後に少しインタビューの時間をいただけた。自分を知り、その根っこを知ることが国際理解、異文化異言語の理解とコミュニケーションにつながると岸田先生は語る。「春はあけぼの」の「は」のつくる独特の文構造を英語にしようとすることで起こる葛藤にも注目していた。日本語の難しさを知り、日本語そのものを知ることにつながる。

■ 松ヶ枝先生のお話をうかがう中、「いじめ」という言葉もでてきた。小さなところから見ればいじめは、言葉の問題、家庭環境という文化の違いがそこにはある。人間と人間のぶつかり合い、理解、それぞれの文化を読む、紹介する、差別をなくす、耳を傾けようと思う‥‥と続く松ヶ枝先生の話は世界へとつながる。

■ 「枕草子を英訳する」という、身近に行われる授業の一端から異文化の理解へと広げていくこの一連のアイデア授業の中には、グループディスカッション、訳し方の様々なアプローチ、現代と枕草子の世界の比較、という小さな「異文化コミュニケーション」がちりばめられていた。生徒の英訳の作品はHPで紹介する予定だという。HPで世界に発信することでこの授業は一旦完結するが、両先生にとって今後の授業の方向性がまた膨らんできたようだ。発信されたHPを見て、海外の人から反応があれば生徒も喜ぶと思う、と松ヶ枝先生は語る。このアイデア授業にはまだまだ先の展開があるのかもしれない。

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