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目黒学院中学校 授業レポート 「情報の授業」

 

■ 目黒学院では、今年度から情報の授業を始めた。そのために、コンピュータ室を新しく設置し、授業中に一人一台ずつコンピュータが使えるよう設備を整えた。また、様々な機種に対応できるよう、デスクトップ型・ノートブック型を混在させ、OSも2種類使っているという。生徒からは「隣のパソコンの方が早いし、使いやすいから席替えしてください」という声も初めは出ていたというが、今では自分のパソコンに愛着が湧いたのだろうか、みんな大切に使っていた。

■ 授業は、最初の2ヶ月間を使って、コンピュータの使い方といった基礎的な部分や情報倫理などについて指導したそうだ。最初の授業でアンケートを取り「パソコン使用歴」「パソコン所持の有無」「どういう用途にパソコンを使ったことがあるか」「この授業に期待すること」などを生徒全員に聞き、回答を分析した上で、生徒に合ったコンピュータを割り当て、どのくらいのレベルで指導していくか決めたという。

■ そしていよいよ、目黒学院独自の授業プログラムがスタートする。3年生は、9月に「USセミナー」という学校行事が控えており、それの準備も兼ねた授業構成になっているそうだ。テーマは「名刺を作ろう」。4回の授業時間を使って、生徒オリジナルの名刺をパワーポイントで製作し、最終回では一人ずつプレゼンテーションを行う。このプロセスが、「自分」という情報をどうやって他人に伝えていくかを学習する機会となる。


1回目の授業
■ 「みんな、9月に行くUSセミナーではアメリカの家庭にホームステイするよね。その時、家族として一緒に過ごす人やその他に出会う人たちに、自分のことを伝えなくてはいけない。そのためのツールとして、名刺を作ってもらいます。」先生から今日の授業でやることが説明された。生徒からは「えー、名刺なんて使わないよー」「作っても無駄じゃない?」など、ちょっと戸惑ったような反応も挙がる。
■ まずはパワーポイントの簡単な使い方の説明をする。生徒のほぼ全員がパワーポイントに触るのは初めて。文字入力、フォント変更、色変えなど基礎的なところだけ先生が指導する。説明を聞きながら作り出す生徒もおり、早く製作に入りたいようだった。

■ ほとんどの生徒が、まず自分の名前を入力しレイアウトを決めていた。漢字で入力する生徒がほとんどだが、中にはUSセミナーで使うことを理解して、アルファベットで名前を書く生徒もいる。「漢字で書くのも、アルファベットで書くのも、生徒の個性」ということで、特に先生からのアドバイスはしないという。

■ 今日の授業では、「名刺とはこうである」という概念を与えずに、生徒の考える名刺を作らせる。そのため、住所や電話番号など一般的な形式の名刺を作る生徒もいれば、自分の好きなアニメのキャラクター、スポーツ選手などの情報を織り込む生徒もいるなど、非常に個性豊かな名刺が出来つつある。パワーポイントの使い方に慣れた頃、授業が終わってしまい、完成した生徒はいないようだ。


2回目の授業

■ 前回に作った名刺は、生徒各自FDに保存させ授業終了後、先生に提出をさせていた。その中身を先生が確認し、今回の授業は「自己アピールシート」を一人一人書かせることにした。

■「自己アピールシート」の項目としては、

 名前
 名前の由来
 自分の歴史
 趣味
 長所
 USセミナーに期待すること

などがあげられており、生徒はワードを使って入力していく。自己アピールシートを埋めさせることで、「自分」について違う角度から見つめなおさせるようだ。

■ 生徒が一番苦戦していたのは、自分の歴史の項目のようだった。「先生、15年しか生きてないので、歴史って言われても・・・」困っている生徒に対し「例えば、小学校の思い出とか、中学校の思い出とか書いてみたらどう?」と先生からアドバイス。全ての項目に「特になし」「知らない」と入力している生徒にも先生から「本当にない?」と質問。「別に話すようなことはないし・・・」と渋る生徒に、「自分のことを相手に理解してもらうためには、きちんと情報を出して話をすることも必要だよ。自分の中で一番印象に残っていること、熱中していることが自分の個性を表すんだから、自信を持って」とアドバイスがあった。

■ 自己アピールシートを入力し終わった生徒から、前回の続きをする。一人の生徒が、パワーポイントの機能「デザインテンプレート」を使って、名刺の背景に富士山を使っていた。それを見た生徒は、「どうやってやるの?」とやり方を教わり、あっという間に教室中にそのアイディアは広まっていった。


■ 自己アピールシートを書いたことで、前回作った名刺に物足りなさを感じて新しい情報を付け加える生徒の姿が目立つ。限られたスペースで文章を書くことはできないので、絵や図形や色使いなどの工夫でカバー。ストーリーをシンボルで表現するというチャレンジだ。

3回目の授業

■ 今日も名刺作り。前回終了時までに、半数の生徒がある程度の形にしているので、先生から「アニメーション」の機能を付けたらどうか、提案があった。「効果的にアニメーションを使うこと」「アニメーションがなくても減点ではない」という前提で、生徒たちは思い思いに効果を付けていった。

■ 機種やOSによって、アニメーション機能は制限されてしまうが、生徒たちは情報交換をしながら楽しそうに作業をしている。時々、楽しすぎるのか、あちこちで数人が集まって笑いが起きて先生に注意されるが、それも仲の良さゆえ。友達の名刺を覗き込んでいるうちに、自然とアドバイスし合ってより工夫された名刺に仕上がっていく。

■ 名刺を2種類作る生徒も出てきた。話を聞くと、「日本用」と「アメリカ用」だという。確かにアメリカ用の名刺は、名前から住所まで全て英語で書いてあった。電話番号もすぐ国際電話がかけられるよう、日本の国番号81から始まっている。アメリカ用の背景デザインに五重塔を用いるなど、趣向を凝らして「日本」を表現する生徒もいた。


4回目の授業

■ 最終回、今日は発表である。一人一人前に出て、持ち時間1分間で自己アピールをするという。「まだ出来上がってないんですけど」という生徒もいるが、「出来上がっていない人は、スピーチでカバーして下さい」という先生からの言葉で発表が始まった。作品は事前に先生がパソコンに保存してくれている。プロジェクターで大写しになる、自分の名刺。恥ずかしさと緊張で、生徒たちはドキドキである。


■ 一番多かった発表の仕方は、「アニメーション全てを動かして全部を表示させ、名刺に記載されていることを読み上げる」方式。アニメーションの奇抜さ、面白さで笑いを取っていた。また、せっかく英語で作っても恥ずかしいからか日本語でやってしまう生徒も多かった。常にいっしょにいる友達に対して英語で発表をするのは恥ずかしいのだろう。

■ 中にはキラリと光る発表もあった。例えば、アニメーションに合わせて紹介していく生徒。すらすらと説明するところをみると、何回も画面と合わせながら練習をしたのだろう。また、「趣味は映画です。今一番みたい映画はターミネーター3です」というように、表示されている情報以外にも、言葉で補足をする生徒も出てきた。

■ また、発表し終わった生徒が飽きないように、次の発表した生徒の作品にコメントを言う役目を与えていた。最初の生徒は「色使いが良いと思います」という作品に対するコメントだったが、慣れてくると「大きな声で発表していて聞きやすかった」「その色使いには何か意味があるんですか?」と、プレゼンの仕方や質疑応答まで広がっていた。


■ 目黒学院では、このように一人ずつ発表を行うのは、ほとんど初めてだという。今回の「名刺を作ろう」で目黒学院の考える情報の授業〜情報を集めて、整理し、編集し、発表できる力を身につける〜というコンセプトに触れた生徒たち。「コンピュータを使いこなせるようになるための授業」だけではなく、「情報というモノを使いこなせるようになるための授業」に気づいただろうか。後期もこのようなプロセスを踏んだ授業を行うという。とても楽しみである。
NTS 教育研究所 野田 亜矢子
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