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洗足学園中学校 授業レポート

 

■ 校門を入り校長室の真下を通る大きく広い階段を上ると、メインエントランスがある。そこでは数名の生徒が募金活動を行っていた。校舎に入るとまず、その自然な明るさに気がつく。雨なのにこんなにも校舎内が明るいのは、吹き抜けのガラスの天井から差し込む自然光のおかげだろう。


英語
■ 英語の授業は一般生と外国からの帰国生とでクラスを分けており、一クラス20人前後になるように、その中でまたクラスを2つに分けるという、少人数制の授業だ。
〈中2帰国生〉
■ 今回は、帰国生の授業を中心に見学することができた。帰国生の授業はライティングとリーディングに分かれており、それぞれ違う先生が担当している。週に5コマ(1コマ70分)ある授業時間を全てネイティブスピーカーの先生が担当している。教室内で交わされる会話も全て英語で、日本語は全く入らない。まさに「英語の授業」なのだ。外国で学んだことのある生徒がこの授業を見学すると、「向こうの授業と似ている」と言うこともあるそうだ。生徒の持ち物も、例えば筆箱ではなく、ペン立てに筆記用具を挿しているなど、日本の生徒達とは少し異なるようである。
■ はじめに見学したクラスはリーディングの授業。『Chinatown in America』と題された項目のテキストを使用するほか、事前に生徒がインターネットを使い、チャイナタウンのバックグラウンドや歴史をノートにリサーチしてきたものを元に授業が進められる。

■ 生徒達がディスカッションを行っている合間に、この授業を担当していたRipley先生が、この授業のあり方を話してくれた。「全ての授業は関係しています。英語は英語だけ、というものではないし、覚えるだけでは駄目なのです」この日の授業もチャイナタウンを題材に、英語を通してアメリカのチャイニーズヒストリーやその当時の政治情勢などを学ぶと言う目的で授業が行われていた。最後は授業を通して学んだものを、エッセイとしてまとめるという。

■ 先生がテキストを読み進め、それを生徒が聞いているといった、一方向的な授業形式ではない。生徒にもよく発言を求めていた。生徒は17名で、教室の前方に生徒を集めて座らせており、なるべく皆が発言するように、先生が1人ひとりに声を掛けていく。生徒も非常に積極的である。自ら手を挙げる生徒が次々に出てきていた。


■ もう一方の中学2年帰国生の授業も見学。こちらも生徒は13人と少人数で授業が行われている。先程のクラスとはまた異なり、先生を中心にコの字型に机を動かし授業が行われていた。1つめに見た授業にしろこの授業にしろ、どちらも先生が生徒の顔をよく見渡せるような座席配置になっている。また、先生から生徒が見渡せるだけでなく、生徒達も視線が自然と先生に集まり、授業に集中しやすくなっているようであった。

■ この教室では、先程の授業とは違うテキストを使い、インドのガンジーについての授業が行われていた。黒板をノートに写すだけの授業とは違い、先生と生徒の会話が多い。誰かを指して答えさせると言うよりは、教室内全体で授業をしているという感じであった。こちらの教室もやはり、英語を政治や歴史と絡めた授業が行われていた。

■ この時間の最後、課題のエッセイが出されると、生徒から「エー!」という声があがる。その声すらも英語(という言い方もおかしな表現だが)なのだから、驚いた。


■ 単に課題を出題しただけではなく、書き方の指導も行われていた。例えば、「3つの観点からエッセイをまとめて、そのときには5つのW(Who?, What?, Where?, When?, Why?)を忘れないように」「提出するレポートは全部で5〜6枚におさめること。参考資料については、最後のページに記載すること」など。最後はそのエッセイを元に全員の前で5分から10分程度のプレゼンテーションが行われるようだ。

■ ただテキストを読んで解釈というの授業なのではなく、そこから考えたり、意見を出したりということを重要視したもので、中学2年生の後期あたりから、このようなプレゼンやディベートも積極的に取り入れられているという。


〈中3帰国生〉

■ 2時間目は中学3年生の英語を見学した。まず向かった教室は、帰国生のリーディングの授業。教室に入ると、『King Arthur(アーサー王)』のプリントを元に、単語の確認をしていた。単語の書き取りテストかと思えば、先生が言ったひとつの単語からそれに関連する単語を連想したものを生徒達が口答で繋げていくという方式。講義や単語の書き取りのように個人でやることにこだわらず、机を動かしたりしながら友達と話し合うなど、作業中心の授業が行われている。生徒は17人で、積極的に手を挙げる生徒や、進んで発言する生徒が多かった。

■ 次に見学した授業も帰国生のクラス。エドガー・アラン・ポーの『The Cask of Amontillado』を題材に、テキストを読み込んで主人公の性格や特徴を、次々に生徒が挙げていく。それを先生が時折大きなボディランゲージを加えながら解説し、笑い声も随所に混じりながら授業が進んでいった。

■ 先程の授業とプリントの内容が違うのは、テキストを1つの固定ではなく、いいものをプリントしていくつか使用しているからだという。使用するテキストは、ネイティブスピーカーの先生同士で話し合って決めている。

■ ここの教室はゼミ室だったのだが、1時間目に見学した時と同じように、机の配置が教壇を中心としたコの字型で、先生が生徒の発言を拾いやすい形になっていた。


〈中3一般生〉

■ 3つめに見学した授業は、中学3年生の一般生の英語。週5コマある授業のうち、週1コマをネイティブスピーカーの先生が教えている。こちらの授業では、帰国生の授業のような配布プリントは使用せず、テキストに沿った授業が行われていた。


■ 帰国生の授業よりも、生徒同士日本語での会話が弾む。しかし、先生が積極的に英語で話し掛ける為、生徒も必然的に英語で返す。

T:「How does Ayumi Hamasaki make money?」
S:「Ayumi Hmasaki makes money by singing.」

このように、芸能人や校長先生など、生徒にとって身近な人を題材にして授業が進められていた。先生への質問ももちろん英語でしなければならないのだが、生徒は積極的に質問を出していた。隣の席同士での発音練習では、先生がアイコンタクトを指示。お互いの顔を見ての会話は、大切なコミュニケーションだ。

■ 洗足学園中学校では、放課後に英語の補習も設けており、英語に対し積極的だと、とてもよい環境だと、この日授業を案内して下さった吉田先生が語ってくれた。帰国生からも、この洗足学園中学校の授業には満足しているという声を聞くそうだ。

音楽

■ 3時間目は中学2年生の音楽。洗足学園の高校は音楽科と普通科にわかれており、この日は普通科の音楽の授業を見学させてもらった。この日の授業はベートーベンの交響曲第5番を使ってソナタ形式についての講義。

 


■ 先生が黒板に『提示部→展開部→再現部』、『動機(2小節)音楽の1番短い単位』と書き、文字で説明。
「では実際に聞いてみようか」と、交響曲第5番ハ短調の提示部を楽譜を追いながら聞く。この時ビデオを使用していたのだが、耳と目を同時に使うことで、よりわかりやすい授業になっていた。ビデオを途中で止め、先生の解説が入る。
「今のが動機の2小節だね。もう1回聞いてみよう」
その後もビデオを使用し、交響曲の構成も紹介。オーケストラの中でも、その時鳴っている楽器が映像として表示され、生徒も集中して見入っている。ただ聞き流していた音楽も細かく見ていくと、きっちりと構成されていて、意外に思った生徒もいたことだろう。

■ 授業を行った音楽室にはピアノ2台、エレクトーン2台、マリンバ3台、ドラムセットなどと、楽器も多く充実しているのは、中学では選択コースの音楽、高校からは音楽科という、早期教育が大きな意味をもつとされている音楽の専門教育を行っている学校ならではだろう。

お昼のコンサート

■ 特別にお昼のコンサートを見学することができた。昨年10月からはじまり、1ヶ月に2回ほど行われるこのお昼のコンサート、この日は第10回目であった。メインエントランス前にあるスロープ下、吹き抜けの空間をホールとして使用するこのコンサートは、広い校舎を有効的に活用している。

■ コンサートは大盛況。おそろいの蝶ネクタイを締めた洗足学園中学校・高等学校の男性教員合唱団、そしてピアノ伴奏には短大の先生がスロープの下をステージにして並び始めると、生徒が次から次へと集まってくる。気が付けば200人近い生徒が、スロープの上からステージの正面から大歓声をあげていた。

■ 中島先生のハーモニカによる「荒城の月」からコンサートはスタート。すばらしい演奏に生徒達は歓声をあげる。2曲目は合唱による同じく「荒城の月」。先生方の歌の上手さに生徒達も驚きの声。「アメージング・グレイス」を2回歌い、生徒達から大きなアンコールがかかるも、惜しくも時間が足りなく、この日のコンサートは終了した。

■ このように、生徒達が一方的に行うものではなく先生方からも発信されることで、先生と生徒間での交流が深まっていくであろうし、また、それを準備し実行することで、先生同士の連携も強まることだろう。その成果は、ギャラリーとして集まった生徒達の数の多さを見てもわかるだろう。また、普通科と音楽科の交流の一端も担っているそうだ。次回の公演が実に楽しみである。

国際理解

■ 4時間目は中学1年生の国際理解の授業。この授業は他の授業とは異なり、1コマ50分の授業である。この日は今年度に入り、2回目の授業だった。ネイティブスピーカーの先生が担当するこの授業の特徴として、中学に入りたての英語に慣れていない生徒達のために、同じく中学1年生の帰国生達が授業のサポートに入る。主に先生の話を日本語に訳して、英語のまだわからない生徒達に伝えるという役目を担っているようだ。中1の帰国生約20人を集め、それぞれのクラスに数人ずつ振り分けをしている。


■ 合計5つの教室で行われていたこの国際理解の授業だが、どの教室も同じ内容を学んでいるにも関わらず、先生によってその教え方はかわってくる。共通していたのは、各生徒の机に置いてあった名札の裏に、「Excuse me すみません」「Pardon me もう1度言ってもらえますか」「Once again please もう1度お願いします」「I don't know 分かりません」「I don't understand 理解できません」「How do you spell 〜? つづりは何ですか」「May I go to the restroom? トイレに行っていいですか」と言った、授業中に使うであろう言葉が書かれていたことだ。

■この日は「This is a 〜 これは〜です」を使えるようになる、ということを中心として授業が行われていた。ある教室では、この『This is a 〜』の文法を使ったゲームを行っていた。サポートに入っていた生徒と先生が、まず手本を見せる。
列を作り、ノートやペンなど、ある1つのものを手に取り、それと共に次の人へ『This is a 〜』と、英語で伝えていくという伝言ゲームだ。
先生がペンを手に取り、後ろに並んだ生徒に「This is a pen.」と渡す。生徒が「A What?」と聞き返すと、先生がもう1度「A pen.」と伝える。「Oh, I see !」とペンを受け取った生徒は、次の生徒へまた「This is a pen.」と回していく。これの繰り返しで、1番早く列の最後まで伝えられたチームの勝ち。周りの生徒達はこの様子を興味津々で見つめ、ルールを理解してから教室全員でゲームを行っていた。まだ英語をはじめて間もないであろう生徒達が、ちゃんと英語を使いゲームを進めている。教室内は大いに盛り上がっていた。

■ この教室の他にも、2つの教室でゲームは行われていたのだが、先程の授業とはまた別のルールで行われていた。伝言ゲームであることに変わりはないのだが、ここのクラスでは速さを競うわけではなく、最後に列の1番後ろの生徒が先生へ何が回ってきたのかを伝え、正解すればOKというものだった。この教室でもまた、生徒達は楽しそうな声を上げながら、授業を受けていた。

■ もう1つ、ゲームの行われていた教室でも、ルールが他の教室とは違っている。ここでは、ゲームが始まったら決して日本語は使ってはいけないとのこと。日本語を使ったチームはその時点で失格。生徒達はそのルールに少し戸惑いながらも、サポートに入っている帰国生の友達に「これ英語でなんて言うの?」と、ゲームが始まる前に最終確認。私達が見学している限り、ゲーム中日本語を使う生徒は見られなかった。はじめは日本語禁止のルールに戸惑っていたにも関わらず、生徒達は実に楽しそうにゲームに参加していた。

■ ゲームを行わずに授業をしている教室ももちろんある。ある教室では、授業のサポートをしている生徒が4人。1人は先生の話をみんなに訳して伝える役。3人は教室内を回ってみんなのサポートをしていた。わからないことがあると、「これ、なんて言うの?」と教室内を回る生徒に声をかける。「それはね…」と質問された生徒も親切に応えている。この気楽に質問できる環境のためか、クラス全員がわいわいと、楽しそうに授業を受けていた。

■ 次に覗いた教室は、帰国生が抜けたところの合同クラスだった。ここでも先生のサポートをする生徒が4人。同じくゲームを行っていない教室でも、先程の教室とはまた少し別の雰囲気である。私達が覗いた時には、先生が袋からペンを取り出し、「This is a pen.」と生徒にまず示したあと、それをサポートの生徒が「これはペンです」と訳す。取り出した物のスペルを先生が黒板に書き、それを生徒達がノートに写していく、という作業をしていた。
■ 先生の書いた板書を丸写しするだけの授業ではなく、ゲームを通し実際に自分で楽しみながら英語を使ってみることで、より英語に親しみが持つことができただろう。また、同級生が授業のサポートとして入っているからか、中学に入って間もない英語をはじめたばかりの生徒達でも、ネイティブスピーカーの先生に対し構えた感じをほとんど受けなかった。このように、英語に対して構えを持つことなくスタート出来るという環境は、今後英語を学んでいく上で、非常に有利なことであろう。

■ 外国の行事なども学ぶこの授業は、通常の授業では中々行えないことも積極的に取り入れているようだ。例えば、ハロウィンでは先生も仮装するというし、実際に授業で見たゲームもそうであろう。外国の文化を身をもって学ぶことができる――まさに国際理解という授業の1番大きな特色なのではないか。

■ そして、この国際理解の授業には各クラスの担任の先生や、副担任の先生、スクールカウンセラーの方も見学にいらしていた。このことから、英語の担当ではない先生方もこの授業に関心があるということが伺える。他教科の先生方も英語教育に対し、強い関心を持っているという点からも、洗足学園中学校の英語教育が学校全体で取り組まれていると言えるのではないだろうか。

NTS 教育研究所 今村 衣里加
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