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湘南白百合学園中学高等学校
JUSTSAP S*T*A*R*S 青少年宇宙実験インターネット会議
2003年1月24日(金)11:00〜13:15
2月1日午後11時(日本時間)、16日間のミッションを終えたスペースシャトルSTS−107コロンビア号が、ケネディ宇宙センターへの着陸に向けて飛行中、空中爆発を起こし、炎上墜落するという事故が起こりました。コロンビア号では、世界各国の学生が中心となった教育プログラム宇宙実験が行われ、日本の学生も参加していました。参加された関係者の方々や各学校の学生たちにとって、忘れることの出来ない悲劇となってしまいましたが、コロンビア号の乗組員と共に取り組んだ実験を忘れることはないでしょう。ここに、宇宙実験に参加された、湘南白百合学園のメダカ実験について書き記しておくことにします。
乗組員のご冥福を心からお祈りいたします。

スケジュール
 (1)10:50〜11:00 高山真記子先生による概要説明
 (2)11:00〜12:40 JUSTSAP S*T*A*R*S テレビ会議
コロンビア号に搭載するメダカを使った宇宙実験について
  (S*T*A*R*Sプログラム日本宇宙実験主研究者 新堀真希)
教育プログラムの展望・可能性について
  (NASDA宇宙飛行士 向井千秋)

 (3)12:45〜13:15

インターネットを用いた双方向情報通信による実験報告


 日米科学技術宇宙応用プログラム(JUSTSAP)が主催する、青少年による宇宙実験『JUSTSAP S*T*A*R*S』のインターネット会議が行われ、連携研究者の湘南白百合学園生物部が参加しました。湘南白百合学園では、理科分野に興味を持つ生徒も多く、日本人宇宙飛行士第一号の秋山豊寛さんや、毛利衛さんをお招きして講演会などを行っています。このような点から、昨年6月、宇宙実験のメンバーとして選ばれました。このプログラムでは、青少年にスペースシャトルで行われる実験の一翼を担ってもらい、科学技術的な学習の研鑚とその向上に向けての挑戦を目指しています。


≪高山真記子先生による概要説明≫

高山真記子先生  JUSTSAPの小田原修教授は、多くの学生にもっと宇宙に興味を持ってもらいたいと願い、学生から宇宙実験のアイデアを募集しました。その中から、新堀真希さん(お茶の水女子大学大学院生)が提案した「メダカ実験」が選ばれました。昨年11月には生物部の学生を連れ、新堀さんの研究室を見学し、本人より直接宇宙実験に関する話を聞きました。
 今回の実験は、世界各国で学生が主体となって進めている宇宙実験の1つです。日本では、主研究者である新堀さんを中心に、全国10校ほどで実験を進めています。実験内容は、実際にスペースシャトルに乗せたメダカの卵と同様の条件で、各学校で卵を飼育し、孵化した稚魚の行動を観察するというものです。


≪JUSTSAP S*T*A*R*S テレビ会議≫

11時よりテレビ会議が始まりました。テレビ会議は、宇宙開発事業団(NASDA)、アリゾナにいる新堀真希さん、ヒューストンにいる向井千秋宇宙飛行士、副研究者・連携研究者代表3校が参加。この間、湘南白百合の生物部の生徒は、インターネットを通じてテレビ会議の様子を見ていました。


コロンビア号に搭載するメダカを使った宇宙実験について
 
S*T*A*R*Sプログラム日本宇宙実験主研究者 新堀真希

新堀真希さん 「微小重力下でのメダカの順応性と泳ぎのパターンの研究」について宇宙実験を行っています。目的は、微小重力環境で孵化した稚魚がどのような行動をとるのかを観察することと、地上に帰還した後、どのように1Gの環境に適応するのかを調べることです。実験準備はアメリカのフロリダとアリゾナで行いました。
 アリゾナ州ツーソンにあるPARAGON社において、2001年10〜11月の2ヶ月間、インターンシップに参加し、エコシステム作成技術の習得、使用するメダカの系統選抜テストを行いました。閉鎖された空間の中で生物を飼育し、生命を維持することは、水質の維持や餌の供給からも非常に困難なことです。そこで、スペースシャトルコロンビアSTS−107 S*T*A*R*Sミッションでは、メダカの生命維持のためのエコシステムを使用します。エコシステムのエネルギー循環のために、メダカの餌となるミジンコや、ミジンコの餌となるバクテリアが増えるための麦などを取り入れ、食物連鎖を起こします。光環境の設備、水温管理、餌の調節を行い、産卵を誘発します。
 1月11日アリゾナからフロリダへ移動しました。卵をネストに入れて密閉し、エコシステムを完成させ、シャトルへの受け渡しを行いました。ネストとは、メダカを打上げ時の振動から守り、エコシステム内のタニシによる捕食を防ぎ、カメラ撮影できる稚魚の遊泳範囲を制限することを目的として作った装置です。
 シャトルは現地時間1月16日10時39分、日本時間1月17日0時39分に打ち上げられました。16日間のミッションが始まり、稚魚の様子はカメラで観察しています。

テレビ会議の最中に昼休みになりました。昼食を済ませた生物部の部員たちが、次々と部屋に飛び込んできます。みんなで協力し合い行っている実験なので、会議の様子が気になるようです。真剣に会議の様子を見つめ、話を聞いていました。


教育プログラムの展望・可能性について
 
NASDA宇宙飛行士 向井千秋

 このような実験の機会が得られ、また実現していることは大変すばらしいことです。みなさんの長年に渡る努力、さらにチャレンジ精神の賜物であると思います。すばらしい実験結果が出ることを期待しています。
 私は、ヒューストンにあるミッションコントロールセンターで、STS−107コロンビア号の副サイエンティストとして参加しています。コロンビア号では80以上の研究が行われ、2つのチームに分かれ、24時間実験しています。宇宙空間における人間の身体、ねずみなどの小動物実験と同時に、新堀さんたちの教育実験が行われています。現在フライトは9日目を迎え、今は、燃焼実験や呼吸機能について調べています。
 宇宙ステーションの建設など、多くの組織が教育プログラムに力を入れています。これからもこのような教育プログラムが増えていくでしょう。ぜひ、みなさんも宇宙プログラムのチャンスを得て参加し、上手に宇宙を利用し、夢を持ちながら研究を進めてください。

向井宇宙飛行士の話が終わると、質疑応答が始まりました。テレビ会議に参加している各学校や、宇宙開発事業団がプレス公開を行っていたため、各新聞社やジャーナリストの方たちが質問していました。湘南白百合の生徒たちも質問を考えます。「向井宇宙飛行士と会話のできる機会など今しかないよ。ほら、質問して。」と一緒に見学されていた先生方からも促されます。「え〜、どうしよう・・。」「いきなり言われると質問って思い浮かばないものだよね。」「質問したいことある?」とみんなで話合います。しかし、マイクの調子が悪く、残念なことに、こちらからは質問が出来ませんでした。



≪インターネットを用いた双方向情報通信による実験報告会議≫


質疑応答が終わると、アリゾナにいる新堀さんと、宇宙実験に参加している全国12校をインターネットでつなぐ実験報告会議が始まりました。生徒たちは、カメラの付いているパソコンの前へ移動し、代表の生徒がマイクを付けてスタンバイします。
ここで、湘南白百合学園で行われている「メダカ実験」の過程を紹介します。

 ○ JUSTSAP S*T*A*R*S Program Flight of the Medaka Fish
湘南白百合学園中学高等学校 生物部

 昨年の秋より、産卵準備を始めました。メダカが産卵する時期は春のため、人工的に春に近い状況を作りました。水槽の温度を20〜23度に保ち、ライトを当て、16時間明るく、8時間暗くというサイクルを繰り返します。生徒が管理し、毎日観察をしていましたが、冬の産卵は難しく、卵を得ることは出来ませんでした。
 今回使用している卵は、同じ条件で育てた、13日に生まれたヒメダカの卵を送ってもらい育てています。14日より作業に入り、観察用簡易エコシステムを作成しました。水槽の代りにフラスコを用い、置き水とゾウリムシなどがいる川の水、水草を入れ、光合成が出来るようにします。老廃物を分解する役目を持つタニシを3匹入れ、バクテリアを増やすために麦粒を入れました。エコシステムは、最適なバランスを維持できる状態にしています。
 スペースシャトルが帰還する2月1日まで観察を続け、その後も稚魚の泳ぎなどを観察します。
簡易エコシステム

  新堀 「各学校のみなさん、こんにちは。私の声が聞こえますか?」

各学校の名前が順番に呼ばれ、返事をしていきます。

  新堀 「声が小さいですね。もっと大きな声で返事してください。湘南白百合学園のみなさん、聞こえますか?」
  生徒 「はい、聞こえます。」

緊張しながらも、はっきりと大きな声で答えることが出来ました。音声の確認が終わると、新堀さんが各学校の実験状況を聞いていきます。みんな、他の学校の実験報告に興味を持っているようです。

いよいよ湘南白百合学園の順番です。生徒たちは、高山先生に「この卵っていつの?」「13日のだよ。」と最後の確認をしていました。

  新堀 「湘南白百合学園のみなさん、聞こえますか?」
  生徒 「はい、聞こえます。」
  新堀 「エコシステムの準備は上手にできましたか?」
  生徒 「はい、できました。」
  新堀 「今、卵はどうなっていますか?」
  生徒 「エコシステムの中の、確実に見える卵は1個しかありませんが、その卵は、順調に育っていると思います。」
  新堀 「水温が低くて、卵が孵化しないか心配していたけれど、大丈夫そうですね。みなさんからのデータを楽しみにしているので、これからも実験を続けてください。」
  生徒 「はい、ありがとうございます。」

わずか1分程度の会話に、物足りなさを感じた部分もありましたが、生徒たちは、宇宙を身近に感じることのできるすばらしい実験に参加でき、喜びを感じているようです。また、向井宇宙飛行士からのメッセージにも感激したそうです。会議の終了時間は、予定時刻より大幅に遅れてしまいましたが、生徒たちの笑顔は最後まで絶えることはありませんでした。今日のネット会議を通じて、これからも実験を続けることが楽しみになったようです。取材に来ていた方たちに、大きな声で「ありがとうございました。」とお礼を言うと、急いで教室へ戻っていきました。

会議が終わった後、実験に携わった先生方からお話を聞くことができました。


湘南白百合学園では、ただ大学へ入学させるのではなく、生徒にいろいろな体験をさせたいと思っています。理系学科は、男女の差がないため、こちらの方面をがんばりたいと思う生徒も多くいます。文系が得意な生徒が、理系に行くことが正しいことか分かりませんが、この宇宙実験のような一流のものに触れ、人生を考えてもらいたいと思います。

この宇宙実験を一番やりたがっていたのは生徒たちです。放課後毎日、観察を続けることは、とても大変なことだと思いますし、時間の使い方も大事になります。この実験が、生徒たちのひとつのきっかけになってくれればと思います。また、各学校や新堀さんとのネット会議では、画面だけでも生徒のつながりや世界が広がっていきます。ネットを通した教育により、生徒たちの経験も大きなものになるでしょう。

コロンビア号の事故は、世界中に悲しみと衝撃を与えました。湘南白百合学園の生徒たちも世界中の痛みに触れ、冥福を祈り、生命の尊さについて考えたことでしょう。乗組員たちが残してくれた夢と希望は消えることはありません。この悲劇を乗り越え、実験を続け、データを取り続けて欲しいと思います。これからも、様々な宇宙における教育プログラムが実施されることを期待しています。



NTS教育研究所 平出桃子

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