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横浜隼人高校 国際語科 21世紀講演会

2002年6月24日
by 前田恭子

■ 横浜隼人高校で国際語科の生徒を対象に、英語の講演会が催された。アメリカ教育界から迎えた著名な3人の指導者より、価値ある教育を真剣に探し出すための講話を、なんと通訳なしで聴くのだという。

■ ジョン・ホーキンス博士は現在UCLA教育学大学院上級教授、CIED(国際教育開発センター)所長を兼任している。このホーキンス博士のコーディネートで、セオドア・ミッチェル博士とウエルフォード・ウイルムズ博士が、各15〜20分に及ぶ講演を行なう。


■ 会場は校舎5階に位置する体育館である。当初は暗幕を引いて暗めにセッティングしていたが、直前に講師から生徒たちの顔を見ながら講演したいとの申し出があって窓からの採光を取り入れた。演壇を囲んでコの字型に椅子を並べ、保護者用の席も用意された。

■ 国際語科1年から3年までの生徒が講堂に集まると、まずは先生からの諸注意。「アメリカの大学の先生方が日本の高校生である君達に対して話をするためにやってきました。どういう態度を取るべきか分かるよね。」と、取り組むべき姿勢を示唆する先生。詳しくは語らず個人の判断を仰ぐような諸注意の仕方だった。

■ 講演を前にして生徒たちにワークシートが配られた。感想やメモを書き込むほか、分からない単語を記入する欄もある。筆記用具を握り締め、講演を聴く準備が整うと3人の講師を拍手で迎える。

■ この講演会は生徒によってプログラムされたもので、司会も生徒が行なう。国際語科を代表して女子生徒が、この難しい講演内容を聞きこなせるようがんばりたいとの決意を英語で表すと、コーディネイターを務めるホーキンス博士が丁寧に挨拶を返した。

■ ホーキンス博士は、鈴木校長先生をはじめ各先生方への感謝の言葉を述べて自己紹介をし、大学変革の重要性を生徒に向けて投げかける。続けて講師のセオドア・ミッチェル博士を紹介すると、生徒たちは盛大な拍手で講師を迎えた。

■ セオドア・ミッチェル博士はスタンフォード大学で博士号を取得し、現在は米国のハイランクカレッジのひとつに数えられるオクシデンタル・カレッジの学長を務めている。

■ 21世紀を担うアメリカの教育者20人のひとりにも選ばれるという若きリーダーでもあり、ダートマス大学教育学科長、スタンフォード大学学長代行、UCLA教育学大学院学部長、UCLA副学長、ジョンポール・ゲッティ・ミュジアム財団副理事長、クリントン元米国大統領の教育顧問といった教育関連の要職を歴任している。

■ 講演テーマは「アメリカの大学入試について。アメリカの優秀大学はどんな力を持った学生を求めているのか?それはなぜか?世界に通じる大学生となるために今どんな学習が必要か?」。今までの教育活動の経験や、現在27カ国からなる1650人もの学生を抱えているオクシデンタル・カレッジでのリーダー育成、多様文化理解などの中で培ってきた、実践に基づく貴重な講演内容である。

■ 「東洋に最も近い西洋」という建学の指針を掲げるオクシデンタル・カレッジは、国際社会のあり方や、世界にあふれる多様な教育システムを考えるに相応しい場でもある。多くの大学が変化しなければならない時代を迎え、「新しい学び」を模索する中で、様々な大学が自ら多様な入学条件を整えて優秀な学生を広く集めている様子が語られた。

■ 高校生のうちに海外へ留学することの重要性を含んだ解説もあり、ミッチェル博士は「ぜひアメリカへ来てください。」と生徒へのラブコールで講演を結んだ。


 

■ 続いてウエルフォード・ウイルムズ博士の講演。ウイルムズ博士は、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得し、現在はUCLA教育大学院上級教授、ELP(教育リーダーシップ・プログラム)所長を務めている。

■ アメリカを代表する「教育と労働」の研究者として知られ、特に日米合弁企業における労働文化の研究では特に著名であり、その成果は著書『繁栄の回復』に詳しくまとめられている。

■ 今回の講演テーマは「アメリカ人と日本人が職場で互いに上手く働くにはどうしたら良いか?日米共同のトヨタ/フォードのアメリカ工場は如何にして成功したのか?」である。

■ ウイルムズ博士は1970〜80年代に、日本を代表する自動車会社であるトヨタのアメリカ進出における急成長を見て大変驚愕し、その秘密を長年研究してきた。

■ トヨタが行なったその優れた教育システムやプログラムを、各地の工場と同じように学校でも生かすことができると考えて広く人間教育に繋げて研究した結果、トヨタが持つ2つの教育指針を解明することができた。日本の段階別教育とトヨタの直結型システムを知り、教育とは何かということがやっと分かったという。

■ 現在の教育にとって大切なのは、教師が上から下へと知識を伝授することだけではなく、教師も肩を並べて一緒に問題に取り組もうという姿勢でお互いに学び合うことであり、これはとても困難な問題なのだ。

■ 米国文化では近年ベンチャー企業が勢いを持ったことから、新しく開発された良案を取り上げてそれに習うこと自体は以前ほど難しくはなくなってきた。今後も時代の流れとともに様々な国際的コラボレーションが行なわれていくことだろうとウイルムズ博士は結ぶ。


■ 2人の講師の講演を終えると、司会の生徒が質問を募る。男子生徒が「型にはまった教育」に絡めて英語でたずねると、ウイルムズ先生は「素晴らしい質問だ!」とびっくりしながらも、アメリカ人と一緒に働くことが日本人にとっても良い環境となったことなどを説明した。

■ 続いてミッチェル先生が、カリキュラムは教師が教えるべきものだがそれだけでは「高い学び」には成り得ないのだと解説する。ひとりの先生が全教科を教える場合と、専門知識を教える専任の先生がいる場合とでは教師の負担も変わってしまう。大学では「なぜ学ぶのか?」ということを教師と学生が一緒になって考えることができるが、例えばその際に教師が歴史について良く知っていれば、とても細かい歴史的な事象を持ち出して討論することもできるのだ。

■ 2人目の生徒から次の質問が出るとウィルムズ先生は、「どうしてそんなことが成功したのか分からなかったのだ。」と答える。実は無理だと思っていたらトヨタが成長したのでとてもびっくりしたのだと言う。

■ 数年前にアメリカでは大幅な教育改革を遂げ、日本でもアメリカに倣って「覚える教育」ではなく「考える教育」を始めたという流れがあるのだが、アメリカと日本のやり方には違いがあるのだという。米国では個人の学力が低くてもそれは良しとされているが、日本では全国民を対象に高い教育を施そうとしているようなのだ。

■ 別の生徒が、国際平和に関連して合弁授業の可能性を問うと、ミッチェル博士は質問に応えて、2週間前に行なわれた卒業式の話を始めた。多国籍の学生が集うオクシデンタル・カレッジの卒業式で、イスラム教徒の卒業生によるコーランの祈りが捧げられたのだ。ある意味危険なことかもしれなかったが、結果的に卒業式の会場はスタンディングオベーションの渦となった。全てはバランスの問題とミッチェル博士は語る。

■ 考えていることや宗教や信じていることはみんな違う。この世界には多様な人が生きており、人はそれぞれMy truthを持っている。私の真実があなたの真実とは限らないし、だからカルチャーショックというものが生まれるのだ。全ての人種、文化に対して心を開くことが大切だと。

■ 代表して男子生徒からお礼のスピーチの後、とても充実した講話を聞かせてくれた先生方に感謝の花束が贈呈される。生徒たちは立ち上がり盛大な拍手で3人の先生を見送った。

■ 講演終了後に先生からは、今日分からなかった言葉もこれから理解できるように、これをひとつの励みにして頑張って欲しいと声が掛けられた。新しいステージに立つ生徒の姿勢が見られて良かったと先生方も満足気であった。

■ 講演の最中、生徒たちの中には熱心にメモを取る姿が多くみられた。各自のワークシートを覗くとたくさんのメモがある。それは今、自分たちが受けている「教育」というものに対する各先生の考え方なのだ。教室で感想をまとめる生徒たちの心にも多くの考えが産まれ、それが将来、国際社会における新しい良案の素となることを期待したい。


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