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共栄学園中学校 最先端学習 第1回土曜講座 [1]

2002年5月10日
by 前田恭子

■ 共栄学園はここ3年間ほどで学園内に様々な教育改革を施している。総合学習や最先端学習などへの取り組みが活発で、その取り組みに共鳴した受験生が毎年多く入学してくるという素晴らしい成果を生んでいる。本レポートでは、今年度開設した土曜講座での最先端学習の試みをご紹介していく。これもまた共栄学園の新しい戦略である。

8:50 授業開始

■ 授業を受ける3クラスはそれぞれの教室で出欠を取り、合同教室へと集まってきた。スーパーバイザー(SV)1人と、各クラスに3人ずつのラーニングアドバイザー(LA)を配置して講座が始まった。

■ 集まってきた生徒たちは、ひとつの教室に3クラス分の人数を押し込められて窮屈そうでもあり、席に座って周りを見渡している生徒、教室の後ろや横に固まって立っている生徒、おしゃべりを始める生徒もいる。

■ 「集まったかな?はい、じゃぁ目を閉じて。」と生徒たちのざわめきを制するように掛けた言葉も「何かやるの?」「何したいの?」「どうでもいいけど暑くない?」といった生徒の声に消されそうだ。

■ 「みんな目を閉じたかな?では質問。この教室にはいつもと違って中2以外の人がいます。さて何人いたでしょう?」すると目を閉じたままの生徒から、「10人!」「8人?」と小さく声が上がった。

■ 別の生徒を指名して「何人だと思う?」とたずねると「分からない」と答え、「そういうこと聞かれるとは思ってなかったから。」と答えを出せないでいる様子。「そんなこと意識していなかったよね。」とSVは質問を打ち切り、生徒全員が目を開けてみると、正面に整列したLAは全部で13人だった。「それでもだいたいあたっているよね。」

■ 「次に質問、これは何?」と、おもむろに立体物を取り出してみせる。さらに戸惑いを見せる生徒たちは「えっ?何ですか?」「箱?」などと質問や答えを上げ始めた。

■ 生徒に立体物を手渡し「何だと思う?」とたずねると、「四角い箱!」「黒くて透明な箱?」との回答が出てくる。再度「何に使う物だと思う?」とたずねると、立体物を持たされた生徒たちは「水の中を見る箱?」「虫取り用の箱。」などと答えを広げていく。スタッフであるLAのひとりにも回答を仰ぐと「宝石が入っていた箱」との回答。

■ 「正解ということではないけれど、これは化粧品が入っていた箱です。しかしみんなが上げてくれた答えもそれぞれが正解。では次の質問。」次は黒板に向かって大きく『子ども』と書く。

■ 「意味が分かる人!」とたずねると、「ウチらみたいな人」と女子から声が上がった。「それってどういう人のこと?」と問い直すと、途端に「ガキっぽい人!」「好奇心旺盛な人。」とあちこちから声が飛ぶ。指名されるとすぐに「若い?」「20世紀に生きる人!」「ワケわかんないことをホザく!」と様々な答えが出てきた。

■ 「『箱』にはずいぶん時間がかかったけれど『子ども』はすぐに意見が集まった。これはどうして?」との質問に答えて「分かりやすいから?」と生徒。子どもは分かりやすく、箱は分かりにくいという。みんなにとってこの箱は何だか分からない、『未知』であることを確認すると、「みんな、卒業する時にはどうなってる?」と次の質問に移る。

あひる―うさぎ■ 「オレ天才!」「分かりません。」と答える生徒に「これは未知。」と、みんなの将来は未だ誰にも分からないことだと教える。「この講座は『分からない』ことを『分かる』講座です。」とSVは語り、続けてプリントを配布した。白い紙にシンプルなイラストが描かれている。ヴィトゲンシュタインの「あひる―うさぎ」である。

■ 「これは何?何に見える?」「口を切られたアヒル。」「妖怪。」「ウサギ?」

■ 「これからクラスに戻って、この絵が何に見えるのかをグループで話し合って、何に見えるかと、どうしてそう見えるのかまでをクラスで200字にまとめて来て。ではスタート!」


9:15 グループ活動

■ 他のクラスが移動し、教室はやっとひとクラス落ち着いた。LAが指導してまずは5人前後のグループを作った。仲良しグループでまとまるとイラストを見ながら話し合う。「どう見えた?」「ウサギ?」「ピースしてる?」「違うよ!指だったらもっと長さ違ってるじゃん!」

■ 様々な意見が交錯するうちに、「『何なのか』じゃなくて『何に見えたか』って聞いてるんでしょ?」と、質問の意味を捕らえ直す動きが現れた。「何でそういう風に見えたかが問題なんじゃない?」「いいじゃん見えるんだから。」「錯覚でしょ?」「何となく似てるから。」


9:25 クラスでまとめる

■ グループで出し合った意見をもとに、クラスの意見を200字にまとめる作業。プリントを折り曲げて遊んだり、「ワケ分かんない。」と言って気ままにお喋りを始める生徒もいて、バラバラのクラスをひとつにまとめようとするのは困難な様子だ。

■ LAが「黒板とか使って意見をまとめてみては?」とアドバイスすると、「誰か黒板に書いてみてよ!」と女子から声が掛かる。グループの代表らがそれぞれの意見を黒板に書き出していくと、その隣に落書きを始める生徒もいる。

■ 「そう見えたって言っても、何で?って聞かれたときに『錯覚だよ』って言われたらそれまでだよね?」とさらに悩み続ける生徒たち。


9:30 発表

■ 1組は、ウサギなどの動物に見えるという意見が多く出て、黒い丸が目に見えるので錯覚で動物に見えるのだと発表。3組は、長い所がクチバシに見えて「鳥」だと言ったり、長い所が耳で「ウサギ」に見える、丸いものから足が生えているという意見も紹介して、「個人個人で脳神経への刺激の伝わり方が違うので、人によってイメージが変わるのではないかと思います。」とまとめた。

■ 2組では、点が何となく色んなものに見えることから様々な意見が出たことを発表して、「こうやって書き加えたら別のモノになっちゃったりする。」と元のイラストにカラーペンで落書きをしたものを取り出した。空白だった箇所には様々な書き込みが施してあり、全く違った空想の動物を描いたようにも見える。

■ 全クラスの意見を総合して、まずは点が目に見えたり丸い部分が顔や体に見えるなどして、そこから想像力を膨らましていく作業が個人の脳の中で行われるということを確認すると、5分間の休憩を取った。

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