■ 2年生の歴史の授業。先生が黒板に名前を書いて自己紹介を済ませると、さっそく授業の進め方の説明に入っていく。教科書のどこをいつまでで終えるといった説明をしながら生徒に質問を投げかけた。「この辺は分かるでしょ?」「習ったよな?」「これはどうだった?」応えが湧かない生徒に「間違っても構わないんだから何か答えてみて。」と軽く背を押す。最初の授業内容のプリントを配りながら「あんまり大人しいと困っちゃうなぁ。」と先生。
「そんなに大人しくないですよ。」生徒からの反応が出てきた。
■ 「色々な箇所が教科書からなくなっているのでプリントで補います。」先生が歴史を教えるのは4〜5年ぶりだということだが、このプリントは先生自身が作って長年使用しており、それぞれの歴史が動いてきた経緯が見渡せるものとなっている。学期の最後には授業ノートの点検をするので、各自プリントをノートに貼り付けるなり、バインディングするなり工夫して自分のノートを作って行くようにと指導すると、さっそく配られたB4判のプリントを大学ノートの左半分にノリで貼り付ける生徒がいた。1年生の時は違う先生の授業だったが同じようにプリントを使った学習を進めていたようだ。
他の授業を見ていても、配布物を貼り付けて作りこんだノートが多かった。
■ 時代と人物が複雑に絡んだ結果として様々な歴史が存在することを知らなければ、どんな歴史にも価値はない。歴史を知るには今日の社会がどうやって創られたのか、過程を明らかにして理解する必要があるのだ。その過程を生徒が自分で学べるように、2年生の2学期には人物について調べて発表、3年ではニュースを選んで同様に発表するという。
■ 「昨年のニュースといえばみんなもテロや狂牛病が頭に浮かぶと思うんだけれど、老人問題を取り上げてバリアフリーや老人と若者の共生にまでテーマを広げて発表する人もいたから昨年の発表は面白かったな。」ピックアップしたニュースから見えてくるものを探して、自分の考えにまで広げて発表して欲しいと先生は語ると、話は唐突に歴史に関する質問になった。
■ 赤道に近いとなぜ熱いの?と質問するかと思うと、タイってどんな国?となり、タイがインドと中国の緩衝国であることやスイスが永世中立国であることが「なぜ?どうして?」とテンポ良く問いかけられる。早さに圧倒される生徒に一呼吸置いて、「こんな風に少しずつ考える訓練をしてもらうよ。」と先生。そして「私が13歳の頃はあまり将来のことなんか考えていなかったから、みんなもそうかもしれないなぁ。」と振り返るが、それは生徒へ次の言葉を投げかけるためのきっかけだった。
■ 「今は将来がつかみにくい時代です。でも40年後はみんな今の私と同じ年齢になります。人口の年齢別比率なんかは知ってるね?みんなの将来はハッキリとは分からないけれども、分かっている将来の危機については考えを巡らして欲しい。今、私は給料から年金を払っていますが、これは自分のためにではなく別の世代のために使われるお金なんだな。みんなが40歳50歳になった時には男も女も区別無く社会を支えていかなくちゃならない。国家は税金で国を運営していますが、今は国債という形で借金をして国を維持しています。700兆円くらいある借金はいずれ返さなきゃならないものなんだ。みんなとみんなの子どもの時代は税金が高くてきっと大変。もしくは貨幣価値が全く変わっているかね・・・夢のない話かもしれないが夢を持って欲しいから話してるんだよ。」
■ 「教科書を見てみましょう。」古い日本地図を見ながらまた問いかける。「現在の地名で、県名と県庁所在地名が一致しない県があるよね?岩手とか。」生徒になぜ?と何度か問い掛け、当時の状況を示唆する。「明治維新って何?」「廃藩置県って?」細かくたずねると応える生徒も出てきて、廃藩置県当時は朝廷への忠誠を誓い明治政府に従った藩と旧幕府側を支持していた藩があり、非協力的な藩について藩名を地名に残さないように政府が図ったということが先生のまとめで説明された。
■ 「教科書は経済史や文化史と分かれているけれど、教科書通りには進まないから。」と先生は言い放つ。「すべての物事を関連付けて教えた方が分かるから、みんなも覚えようとせずにちゃんと考えて理解して。」こう言うと先生は資料集を見ながら、今度は食事の歴史について話を膨らませていった。
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