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横浜隼人高校 国際語科1年
カナダ語学研修での感動と発見

2002年4月2日
by 前田恭子

■ バンクーバーは今年、記録に残る寒波の影響で3月にしては珍しい大雪に見舞われた。18日間の日程でカナダ語学研修を行った国際語科の1年生にとって、学年末テストの翌々日に出発するというスケジュールの忙しさもあってか(雪合戦を始める元気な生徒も大勢いたのだが)風邪を患ってしまう生徒が多数出てしまった。しかし、これがすべてを上手く運ぶ手助けとなったとも考えられる。研修を終えた1年生の終業式を拝見し、先生方からも研修の様子をうかがうことができた。

■ この語学研修は出発のスケジュールもそうだが帰ってからも翌日が終業式となって大変忙しい。だが研修の前半に風邪に苦しんだ生徒らが全員瞬く間に快復して帰国時には無事に健康を取り戻しており、終業式にも欠席者はひとりも出なかった。「十数名が風邪に倒れてしまうという中でも、皆さんが良くルールを守って一生懸命に頑張ってくれたことがとても嬉しいです。」と鈴木校長先生。「『決まっていることはきちんと守る』ということは社会に出るときに必ず生きてくるので、これは絶対に忘れないでください。」

■ 研修旅行中、先生方は風邪の生徒への対処や健康な生徒の指導などに手分けして毎日奔走し、各生徒の研修日誌にも毎晩コメントを書き入れ、毎夜午前を回ってから就寝するなどのご苦労を重ねてき帰ってきた。途中までの予定で参加した先生もこのトラブルに対応するため最後まで協力をしてくれたり、生徒からもらった風邪でダウンぎみの先生も、朝になって逆に生徒に起こしてもらったり、相互に助け合うことができたことも喜びのひとつだろう。

■ 今回の研修旅行の団長となった先生からは、カナダのスタッフもこの研修に関わってくださった現地の皆さんも口々に「みんなが礼儀正しく挨拶もきちんとできる」と誉めてくれたこと、それに対して先生は「 See? I told you. (だから言ったでしょ!)」と繰り返し自慢できたことを誇らしげに伝えた。生徒たちも自ら誇らしく感じたのだろう、自然に湧き出る拍手で先生のエールに応えていた。

■ 充実した研修旅行を終えた生徒たちに、先生方からもう一言。「なぜ充実したのか?それは皆が一生懸命に本気で頑張ったからだ。」先生は、生徒たちが今それぞれ感じている達成感、何かを乗り越えて感じる充実感の正体をエンカウンター体験として明かす。本気でやったこと、本音でぶつかったことに対する充実感は長く心に残るのだ。「この気持ちをどこまで持続することができるかが勝負。語学について悔しさを持った人は、これから頑張れば将来職業に生かすこともできる。心の中に感じたことをもっともっと推し進める努力をしよう。」と呼びかける。「提出義務なんてないけれど、今感じていることを文章にしてみたり、自分のためにもう一度しっかりと考えることが大切だ。」と、これからの高校2年間、将来の進路、自分の人生にこの体験が生きるような本気の関わりを持って、次の学年への準備をするように諭した。

■ 研修旅行の前には、各班で手分けしてカナダに関しての事前レポートを2冊の冊子にまとめた。観光スポットや見どころ、食べ物などをレポートしたり、カナダ建国の歴史や、カナダインディアンやイヌイット(エスキモー)の歴史や現代の生活、産業についてのレポートや、音楽、言語など、様々な事柄について膨大なレポートが綴られた。カナダの教育制度についてレポートしたグループもある。初等、中等、高等教育が順に8-3-4年と続くカナダと6-3-3-4年と流れる日本の教育制度を比較する。連邦制度がとられているカナダでは教育法も州によって異なるが、最低10年間は無償で教育が受けられることなど、教育の流れも紹介していた。

■ こうして事前に研究発表した知識の数々を、現地では実体験として関連付けていく作業がなされた。例えばハンドブックには「Excuse me」の使い方がワンポイントで紹介されていたが、実際にはそれ以外にも多様な使い道やニュアンスの違いがあることを経験して、初めて感覚として分かることができる。また多様な民族への触れ合いを通じて人種や異文化に対する考え方や歴史観も、体験を通じて今までとは違う大きな変革を遂げたに違いない。CIC(Canadian International College)に到着後、日曜日以外毎日行われた英語の授業やネイティブによる講演の聞き取りも、日に日に目覚しく上達していく。

■ 先生方は、このような有意義な研修旅行ができたことに対して生徒が親に感謝を持って、ぜひ家庭で旅行の話をして欲しいと願った。そのために、カナダでの初日に生徒から親へポストカードを送るというきっかけをつくった。もしも照れて短いメッセージしか書けなかったとしても、18日間続く長い旅行の最中に風邪をひいてしまってそのことをぼんやりと悔やんだり、伝えきれなかったメッセージを書き足してまた別のカードを送る生徒もいたのではないだろうか。外に対する視野を広げることもそうだが、生徒たちの原点となる家庭を省みることも重要なテーマのひとつなのだ。

■ 研修中に宿泊したCICで全員の母親役となって給仕をしてくれた中国系のシェフは、風邪をひいた生徒のための特別メニューとしてお粥を作ってくれた。これは生徒や先生にとって大変に心強く暖かいサポートとなった。グループでは協力して体力の低下した生徒を言葉で励ましたり手を貸してサポートしたり、毎日提出する日誌の中でも先生からの暖かい一言メッセージでそれぞれを支えることができたそうだ。この研修旅行で、普段の学業では表舞台に立ったことのないかった生徒が何人か、リーダー的存在として浮上したことも喜ばしいことだった。宿泊したCICの施設にはグランドピアノが開放してあり、何人かの生徒らが興味を持って演奏を始めると、そこは自然とサロンのような語らいの場となって、また普段とは違う形で脚光を浴びる生徒がここにも出現し、新しいタイプの交流が見られたそうだ。

■ こうして生徒たちがそれぞれに主役となって研修旅行を過したが、実は今年の研修旅行についてはテロの影響があり、一時は中止も検討されていたそうだ。昨年中に教師や親の間で何度も話し合いが持たれ、予定していたワシントン州からカナダに変更することで合意となり、研修プログラムの面でも目的地変更に伴っての大きな影響もなく、これまで学校が毎年毎年磨き上げながら培ってきた独自のメニューを守ることができた。

■ 毎年この研修旅行で催されるジャパンフェアーという日本文化の発表も例年どおりに無事開催され、当初はプログラムから外すこととなっていた社会奉仕活動も、間際になって現地日本人センターへの慰問という形で実現した。戦時中に抑留されていた日本人の存在を知ることができ、生徒のひとりは「多くの戦争でたくさんの人が死んでいき、もしかしたら自分の祖先も生き残ることが困難だったかもしれない。」と「今ここに自分がいることの基盤」を意識することになった経緯を日誌に書いたそうだ。

■ ワシントン州ではできなかったことだが、アメリカ合衆国とカナダとを隔てる北緯49度の国境線を訪れると、そこは明るい花園になっていて生徒は「こっちがアメリカ、こっちがカナダ」と跨いで見せた。その日の日誌には「2つの国が暖かく結ばれていることを感じた」と深い心の感動を記す生徒もいた。実質国境を持たない日本人にとっては不思議な感覚だが、各国間に存在するこの「国境」というものがあらゆる意味において世界を隔て、今でも様々な闘争の舞台となっていることを生徒たちは思い知ったようだ。カナダの歴史について学んだこと、各民族の伝統や言語や現代の生活について考えさせられたことが、実際の経験を通して生徒たちの心に刻み込まれていく。

■ 「これらはほんのきっかけに過ぎないのですが、こうやって研修で発見した事実や感動した事柄を忘れないでいて欲しい。」と先生は結び、気を引き締めて次の学年の準備をするように注意を促した。最後に「ここにいる全員進級だから!」と補足すると全員から「ワッ!」と歓声が沸きあがり、長い研修を終えた緊張がやっと解けたようだった。


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