●金子舎長先生より教育方針について
まず、最初に重大発表があります・・というのは冗談です。幼稚舎という名前から幼稚園だと思っておられる方がいるかもしれませんので、そういう方はお引き取りを(笑)。
この幼稚舎は今年で128年目を迎えた小学校。慶應義塾は、小・中・高・大学・大学院までの一貫校となり、幼稚舎からはたいていの場合3つの中学校(普通部、中等部、湘南藤沢中等部)のいずれかへ進学する。
私も幼稚舎の卒業生。当時、2年生か3年生の時にバスに乗って羽田空港の見学に行ったことがあるが、その時にバスガイドさんがむすんでひらいてなどを歌い、「皆さん大きいですねえ」とやはり幼稚園と勘違いしていた。
入学試験については話さないが、伝えたいことはすべて本日配布(5月より配布)の「幼稚舎とはこんなところです」に書いてあるので、それを参考にしてほしい。ホームページにも同じことが書いてある。ちょっと堅苦しいが、海外在住で説明会に参加できない方もいるため、できるだけ同じ情報をということでどなたにもこちらの冊子を見ていただいている。よく聞かれるような質問をQ&A方式にまとめてあり、この4月から始まった他の学校の書類にも同じようなQ&Aがあったので、広まればよいと思っている。
4月に素晴らしいデザインの食堂ができた。細長いテラスがあって、大人ならばそこにビーチパラソルやイスを並べたいところだが、子どもたちはなんとそこで「だるまさんがころんだ」を始めた。長くて細いからちょうどいい・・・けっこう子どもはクリエイティブ。いっしょに遊ぼうと誘いに来てくれるので、おにごっこ、石けり、だるまさんがころんだをやったりしている。元気で活発な子もいれば、そうでない子もいる。いろんな子がいるということに対して敏感でありたいと思う。
ひとつだけエピソードを紹介したい。朝礼で小さな頃から眼が悪いという話をした。最近は眼の悪い子どもが多く心配しているが、当時は自分くらいしかいなかった。けんかをすると眼鏡を取られてしまうので、逃げてばかり。眼が悪いとスポーツもおっくうになり、少し引っ込み思案になってしまった話をした。子どもは、〜できたとか、〜にいけたとか、〜がすごかった、というような話をしたがるが、「できない」「うまくいかない」ということも大事だということを話した。その日か翌日、ある2年生の男の子のお母さんからメールをもらった。その子は目が悪く、眼鏡を作ったが恥ずかしがってかけようとしなかった。それが私の話を聞いて眼鏡をかけるようになったとのこと。とても嬉しかった。私がしゃべるだけでなく、しゃべったことをちゃんと受け取ってくれた。その時はじめてよかったと思った。今まで眼が悪くてよかったと思ったことは少ないが、本当によかったと思った。いろんな子どもがいるということ、そして一方的に何か与えるということよりもこちらが言ったことがまた返ってくる、そこではじめて私の方も嬉しい気持ちがする。小さなことだが、小学校の現場で敏感になりたいと思っていることである。
その一方で、幼稚舎ではたくさんの切磋琢磨、健全な競争、競い合いの場を用意している。
◆貝がら検定・・・4年生で海浜学校にでかけ、たくさんの貝がらを拾ってくる。幼稚舎の中にも百数十種類の標本があり、貝がらの名前を覚えるというもの。たくさん覚えた子には「貝がら名人」の称号(認定証)が与えられる。毎年3人くらい「貝がら名人」が誕生する。
◆漢字検定・・・検定の会場にもなっており、年3回実施。毎回100人以上が挑戦している。
◆イングリッシュ・プロ・・・4年生以上にCD-ROMとテキストを渡して自分のペースで勉強していけるようにしているプログラム。年に3〜4回テストをして、シールを貼っていっていっぱいになると私と写真を撮って記念にする。これは私にとってとても楽しみなこと。
◆百人一首大会・・・毎年1月に実施。小学校で百人一首をやっているところは珍しいとのこと。毎年50〜70チームくらいで競い、今年は4年生チームが優勝した。
◆けん玉検定・・・けん玉日本一の先生がいて、検定も行っている。
◆なわとび・・・31種目の記録をとる。今年、前とび98分の記録を出して4年生の女の子が幼稚舎記録をぬりかえたばかり。
このような健全な競い合いの中で、自信をつけることや勝った時に嬉しいということよりも学んでほしいのは、うまくいくことは少ないということ。たくさんある「できなかった」「うまくいかなかった」時に何を学ぶかが大切。
こうした健全な切磋琢磨の場は、信頼関係がなければ成り立たない。単に勝ち負けになってしまう。信頼というのは難しく、日々の活動からつくりあげるもの。子ども同士、子どもと教員、ご家族の皆さんの中でつくりだすもの。幼稚舎には800人の小さな子どもがいて、大小さまざまな問題がある。幼稚舎は問題がない学校というのではなく、問題がある時にどうやって対応するか、皆でコミュニケーションを密にしながらできるだけ納得のいくような解決策を探るなかで信頼関係をつくるコミュニティでありたいと思う。
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