Real Voice powered by 国際教育情報室

教育レポート オカベの目 海外教育ニュース リンク集 voices from the Globe ホームへ



§37 世界の男女差意識の明確化 日本の男女差意識の希薄化 −脳科学と学習−

by 岡部憲治
2006/4/27

■ 最近、脳科学が進歩するにつれ、様々なことが明らかになってきている。オカベの目のツボ§7でも触れたが、脳には「男女差」があり、たとえば意思決定後の反応で

−男性の脳は決断後小休止し、相手の判断を待つ
−女性の脳では腹側線条体、前頭前野の一部、尾状核という3つの領域が活動しつづける

ということがわかってきた。反応している領域で考えると男性より女性の方が相手の反応を気にする傾向があるらしい。また、ニューズウィークの記事によれば、

女子の前頭前野は11歳までに最大の「厚さ」に発達する一方で、男子の発達は女子より1年半遅れるという

ことだ。考えてみれば、小中くらいの子供に対して

「女の子は友達と徒党を組んでいつまでもしゃべっている」
「男の子は長い間じっとしていられない」

というある意味ステレオタイプ的なことを聞いたことがないだろうか。これは最近の脳科学に照らし合わせれば理にかなっているのかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ 脳の発達過程が十代の成長段階で違うのであれば、当然、「男女差」でなにがしかの「差」が見てとれるはずだ。その一つに「テスト結果」がある。同記事中には「作文テスト」と「読解力テスト」ではっきりと「女子の方が点数が高い」ことが示されている。
 また、昨年、日本でも話題となったOECDの国際学力調査(PISA)では、1位となったフィンランドでさえ読解力テストで男子と女子の平均得点差が44点もある。

◇ ◇ ◇

■ つまり、現在の教育カリキュラムはもしかしたら女子の学力向上に焦点を合わせた結果なのかもしれない。実際、アメリカでは30年前、女子の学力不足が懸念され、

72年の連邦法でスポーツと学業における男女の機会均等を義務付けた。以来、女子の学力向上に莫大な資金が投じられた。

という経緯がある。大学進学で考えてみても

−大学への進学を予定している女子の割合は男子より22%高い
−アメリカの大学(学部)に在籍する男子学生の割合は70年から00年の間に24%低下

という傾向にあるようだ。日本でも女子の大学進学率が年々高まっていることはいうまでもない。

◇ ◇ ◇

■ だからこそ、最近のアメリカでは男女を別々のクラスで教える指導法などが取り入れられつつある。とはいえ、まだ始まったばかりなので最終的な評価には時間がかかるだろう。ただ傾向として

「男女差」を考慮した「学習方法」

に焦点が向けられつつあることは確かだ。

◇ ◇ ◇

■ おもしろいのは日本だ。先の国際学力調査(PISA)の結果でも、実は「男女差」が極めて低い(ちなみに韓国も低い)。それがどうしてなのかはまだ研究されていないが、個人的には教育システムや文化や単一民族国家など様々な要因が関係しているのでないかと考える。

◇ ◇ ◇

■ オカベの目のツボ§36 深夜アニメの「コンテンツ」に観る男女差意識の希薄化 では

「コンテンツの嗜好性における男女差意識の希薄化」

を唱えてみたわけだが、もしかしたら学力においても同様のことが言えるのかもしれない。
 要は生物学的に脳の発達段階で男女差があるにもかかわらず、環境(文化、社会システム、教育システム、人種、単一民族国家など)に適応することによりその差が縮まっているのではないか。
 また、学力と密接に関わりのある「学校」を見てみれば、最近の首都圏私学の共学化傾向が頭をよぎる。共学校が増えるということは相対的に男子校や女子校が減る。では、なぜ減ってきているのか。やっぱり、それは選ぶ側の「嗜好性(志向性)」と関係しているのではないだろうか。
 世界では「男女差」に基づいた「男女別学」傾向に向かっているのに日本では「共学」傾向。これは本当におもしろい。もっとも、国としてのレベル(公立)で考えれば日本はやっと中高一貫体制に移行しつつあるのが現状で「男女別学」傾向などまだ視野にも入っていないのかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ 「単一民族国家」に関して自分なりの見解をすると。。。
昨今、移民の問題はフランスの暴動、アメリカの移民法へのデモなど世界中で起こっている。根底には「労働力」を下支えする「移民」と「国」としてのアイデンティティーを保持する「国民」のはざ間で問題が浮き彫りとなっているからだ。
 実際に「移民」である以上、人並み以上にその国では「同化」ないし「コミュニティーの一員」となることが必要とされる。
 こうなってくると、国の定めたルール上でいかに社会に適応し経済的にも社会的にも安定した地位を手に入れるか。そのための「競争」となってくる。
 そしてその「競争」「国」という枠内である以上、「人種」「性別」も超えてしまっている。だからこそ、逆に「人種」「性別」という「差」を強調して地位向上を目指すことが意識のなかに強く芽生える可能性もある。
実際、アメリカでは大学選別に際して「人種枠」というものが設定されていた(今もあるかな?)。要は正統なテストや成績の結果に基づいた選別にもかかわらず「人種の偏り」が出てしまったことに対して

「差別だ。おかしい。ちゃんと基準を設定しろ。」

という「逆差別」の声があがったのだ。自分が卒業した大学もアジア系が非常に多かったので、その手の問題はいつも身近であった。

◇ ◇ ◇

■ それに対して日本の場合、基本的には「人種」の差を強調することもなく「性別」の差に関してはまだまだ「男性社会」であることが否めない。
故に「男女差意識」が欧米とは逆説的な意味で希薄化しているといえるかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ また、次々と生み出されるアニメやマンガやゲームなどのキャラクターはバーチャルな存在であり対象となる日本人はおろか世界の人々まで席巻するに至っている。それを見るにつけ、

"モヤっ"とした希薄化意識

をもつ日本人独特の感性から生み出されたのではないかと考えたりもする。

◇ ◇ ◇

■ とにもかくにも、日本の教育システムが転換点を迎えつつあることは確かだ。そこに「脳科学」や「男女差」や「日本人意識」を考慮したうえでの効率的な「学習」カリキュラムが構築されることを期待したい。

 

[参考記事・参考放送・参照URL]

Newsweek 「脳科学がビジネスを変える」より

Newsweek:「男の子はなぜ女の子より劣るのか。学力格差と「男女別学」の最新科学」より

生きるための知識と技能 OECD生徒の学習到達度調査 国立教育政策研究所 編

前へ 次へ



トップへ

copyright