|
by 岡部憲治
2005/10/7
■ 先日、テレビで近藤亨さんという「技術屋」さんの話が放送されていた。
ネパールはヒマラヤの麓、秘境ムスタンという場所に私財を投じてNGOを設立し、貧しい人々のために稲作や野菜作りなどを行っている方だ(詳しくは→こちら)。
標高も高くひどい荒地のムスタンで稲作を成功させるまでの経緯はすさまじいものだった。近藤さん曰く「不退転の決意」で望んだわけだが80歳を超えなおみごとに馬を乗りこなし水田まで足を運ぶその不屈の精神には頭がさがる。そしてその決意の奥にある「技術屋としての日本人」という言葉に世界から評価される日本の技術力の魂を垣間見た気がした。
◇ ◇ ◇
■ そのような不毛の地を長年かけて開墾し、現地の人々が生きていくために必要な「食料」の生産・技術を提供している人がいる一方で、日本を見ればその食料自給率の低さに驚く。農林水産省の「平成15年度食料自給率レポート」によれば各国の食料自給率(カロリーベース)は
| フランス |
130% |
| アメリカ |
119% |
| ドイツ |
91% |
| イギリス |
74% |
| スイス |
54% |
| 韓国 |
49% |
| 日本 |
40% |
|
となっている。
◇ ◇ ◇
■ 穀物自給率ではさらに低く、24%(2002年度)とOECD加盟国のなかでは実質最下位だ(最下位はアイスランドだが0%なので)。種別でみるとさすがに米は約92%自給と高いのだが、大豆は約95%、小麦は約87%、とうもろこしに至っては100%輸入に頼っている。
最近、大被害をもたらした「カトリーナ」により穀物(大豆・とうもろこし)の水揚げが5日間停止したということだが、実はニューオリンズ周辺からの穀物(大豆・とうもろこし)は輸入全体の6割を占めており「穀物の生命線」と、ある番組では評していた。
大豆といえばもちろん日本の食生活には欠かせない。とうもろこしはと言えば家畜の餌(飼料)や油となる。どちらも「食料」につながる大事な資源だ。今回は5日間停止で済んだがこれが1ヶ月ともなったらどのくらいの影響があったのか。考えるだけでもそら恐ろしい。
国別の穀物輸入量でも日本は10%で、世界で唯一の2ケタ台だ(ちなみに2位はメキシコと韓国で5%)。逆に輸出ではアメリカ資本の多国籍企業が軒を連ねている。穀物界にも石油界と同様に「メジャー」があり、
カーギル、ADM、コンチネンタル・グレイン
などがそれにあたるだろうか(ちなみにオランダ国籍のブンゲ、フランス国籍のルイ・ドレフェス、スイス国籍のアンドレも有名)。日本の約20倍という広大な土地を持つアメリカだからこそ「穀物」は最大の輸出商品といえるかもしれない。
◇ ◇ ◇
■ 農林水産省の予測では農家数が
2004年 約293万戸
2015年 約210〜250万戸 |
農地面積が
2004年 約470万ヘクタール
2015年 約450万ヘクタール |
と減少する。
それでなくとも低い食料自給率を上げることは国レベルでも重要なようで、既に構造改革特区を利用して100を超える株式会社が「農業」に参入しているが、その枠を広げ全国的に解禁すると発表した。
◇ ◇ ◇
■ 制度だけではない。人材面では2006年度から
|
団塊の世代に農山村への長期滞在や定住を促す取り組み |
を始める方針を農林水産省が固めた。具体的には
|
長期滞在型の市民農園を各地に整備して受け入れ体制を整え、半年や1年の長期滞在で農村体験をしてもらい、定住につなげたい考え |
ということだ。そして長期的には2015年度までの完成を目指す国内農業の再編構想を明らかにした。
| − |
2015年度の農家数を約250万戸と見込んだ上で、小規模農家は30戸前後ずつにまとめ、共同で耕作する「集落営農」組織に再編し、2万―4万の集落営農組織をつくる。 |
| − |
株式会社や農事組合法人などは現在の倍の1万法人に増やす。 |
| − |
大規模農家は33万―37万戸を想定し、集落営農、法人、大規模農家の三つの「中核的な担い手」で、農地の7―8割を経営する。 |
|
国だけではない。人材派遣大手のパソナでは昨年から農業インターンプロジェクトを行っている。対象層となるのが既に第二の人生を向かえている熟年世代、団塊の世代、そしてニートやフリーターが多いと捉えられがちな若年層だ。
2004年度は労働経験のない若者を10名ほど集めようとしたところ150人の応募があり、そこから絞り込まれたメンバーは1人も脱落することなく研修期間を終え農業に目覚めたということだ。また、東京・ビジネス街の大手町のオフィスビルに研修用の「地下野菜工場」を整備した。これはテレビでも話題になったので目にした方が多いだろう。今までの「農業」のイメージとはかなり異なる「ハイテク農業」だ。
◇ ◇ ◇
■ 農林水産省によれば農業の経済規模は9兆8千億円だ。IT関連の携帯電話機・PHS産業で1兆9000億円、パソコン産業で2兆7000億円ということからもその規模の大きさが伺える。「第一次産業」という枠組みで捉えられがちだが、このグローバリゼーションの時代に一次や二次と考えるのは「カテゴライズのしやすさ」や「指標の出し方」からすれば必要かもしれないが、単なる横並びの経済規模で見たら無視できない数字だ。
さらに、農業はバイオやゲノムなども絡んでハイテク産業に化ける可能性がある。家電業界でキーワードになりつつある「オセロゲーム」がこの業界でも十分ありえるわけだ。
まずは自国の食料自給率。これを高めそれから世界と競争するだけのシステム(生産・加工・商品開発・流通など)を作り上げていくことができれば「無資源国」と言われている日本がオセロゲームで一気にひっくり返すがごとく「資源国」になるかもしれない。
◇ ◇ ◇
■ だが、最終的にはやはり「人材」だ。
今の小学校や中学校、あるいは高校の教科書で農業とはどのように捉えられているのだろうか。自分が学生だった頃では「重労働なお百姓さん」というイメージが強い。実生活でも昔は荷車、今は軽トラックで自宅に野菜売りのおばさんが来るのを見るにつけ「大変な仕事だなぁ」と感じたりしていた。
その一方で、「多国籍アグリビジネス」などの言葉を聞くにつけ、最近の農業をとりまく環境はますます「工学」との融合が進んでいるのではないかとも感じる(もちろん、もともと工学なのだが)。
都会の小学生や中学生が農業体験をするニュースを時々みるが、アメリカで行われているDNA採取の授業がごとく、「ハイテク農業体験」なるカリキュラムが職業体験に組みこまれる日も近いかもしれない。あるいはPC上でのシミュレーションゲームを利用した「農作物や畜産物を多く増やした人が勝ち」などという学習プログラムがあってもおもしろいかもしれない。もちろん、ゲームとはいえ、パラメーターとなる要素は最新の農業科学に基づくものが前提として
「こうすれば、いっぱい野菜ができる。でも、こうしたらほんのちょっとしかできなかった。」
というようなことが疑似体験できればそれだけでも違うのではないだろうか。
◇ ◇ ◇
■ 人は所詮、食べなければ生きていけない。ならば、先のパソナの例ではないが成り手となる人材を「農業」に「お見合い」させ育成することが一番だ。
農業ばかりでなくどの職業でもいえることだが、制度以上に大切になってくるのは「人材の適材適所化」だ。それには若年層の段階での
というものがもしかしたら必要なのかもしれない。
PS アメリカのオハイオ州の田舎町にいたことがあるが、町からすこし車で走れば見渡す限りのコーンフィールド。どこまで行ってもコーンフィールド。。。「大規模機械化農業」はまさに圧巻であった。
[参考記事・参考放送・参照URL]
| ○ |
読売新聞「農村へぜひ!団塊の世代定住に向け農水省が取り組み」より
|
| ○ |
読売新聞「「集落営農」2-4万に・・・2015年度目標農業構想」より
|
| ○ |
経済界 「農業が国を救う」より
|
| |
|
| ○ |
今がわかる世界地図2005年度版より
|
| ○ |
FAO(国連食糧農業機関)「Food Balance Sheet」より |
| ○ |
JICA フロンティア8月号 スケッチ「100歳まで現役」より
http://www.jica.go.jp/jicapark/frontier/0208/06.html |
| |
|
| ○ |
笑ってコラえて興奮版地球上の不思議な所で大あばれスペシャル!! 放送内容より |
| ○ |
ワールドビジネスサテライト 放送内容より |
|