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§20 大学が変わる、学生が選ぶ −グローバリゼーションがもたらす広大な選択肢の波−

by 岡部憲治
2005/08/22

■ 2004年に国立大学が独立法人化され、今年初めて各大学の決算が発表された。全国89の国立大学の純利益合計は1100億円で、なかでも東大は黒字53億円だった。東大の場合、その大まかな内訳は収入が計1771億円、経費では人件費の791億円が最も大きかったということだ。

◇ ◇ ◇

■ 人件費といえば、学長の給与にも格差が生じている。文部科学省の調べでは、

全89大学中8大学で法人化前に比べ学長の報酬が引き下げられる一方、5大学では引き上げ

られたそうだ。

◇ ◇ ◇

■ そして「黒字53億円」というある意味、好決算をだしたにもかかわらず、東大は今年初めて本格的な受験生向けの大学案内を発行した。大学案内では

「成績が良いからではなく、やりたいことを持って挑戦してください。学問の志を育てたい人にとって東大の門戸は決して狭くありません」

と書かれているそうだ。「狭くない」というのはどこかで聞いたような。。。(笑

◇ ◇ ◇

■ 「国内最高学府」と言われ黒字も出しているのに「大学淘汰の時代」を意識しているその動きはすぐそこまで迫っている事の重大さをうかがわせる。実際、文部科学省は大学破綻に備え「学生転学支援プログラム」を公表した。

−私学事業団などと連携しつつ、近隣の大学に受け入れを求める
−受け入れ大学に対する補助金の増額などで学生の円滑な転学を促す

ことが目的のようだ。

◇ ◇ ◇

■ 2004年に書かれた参考記事中では、独立法人化された国立大にはいわゆる大物経営陣が名を連ねていた。

北海道大 JR東日本会長、三菱重工業常務
山形大 ブルドッグソース社長、デンソー会長
東北大 KDDI社長、味の素元副社長
東京大 ウシオ電機会長、NEC会長
名古屋大 トヨタ副社長、伊藤忠商事社長
京都大 JR西日本相談役、日本IBM会長
大阪大 ソニー元副社長、サントリー相談役
九州大 九州電力会長、全日空元社長
宮崎大 三菱信託銀元副社長、川崎重工社長

各々の大学がどのような結果を迎えたかまでは知らないが、これも捉え方によっては1つの「備え」ということになるのだろうか。

◇ ◇ ◇

■ 一方、私大では少子化をにらんで次々と都心回帰が進んでいる。

○郊外から都心へキャンパスを移した大学(一部あるいは全部)
中央大学 (2000年)
立正大学 (2003年)
戸板女子短期大学 (2004年)
東洋大学 (2005年)
共立女子大学・短期大学 (2006年)
帝京平成大学 (2008年)

○都心にキャンパスを新設した大学
早稲田大学 (2004年)
学校法人城西大学 (2005年)

○都心のキャンパスを再開発した大学
明治大学 (1998年)
法政大学 (2003年)
東京理科大学 (2005年)

これも学生誘致の戦略の一つだ。

◇ ◇ ◇

■ 最近、日本経済新聞では「大学淘汰の時代」というタイトルで3回に渡って記事を打ち出した。各タイトルは

−「新たな『大学自治』構築へ」
−「広い視野と経営知識を」
−「社会の要請 真剣に探れ」

となっている。とにかく「変わる」ことが迫られているのは間違いないようだ。

◇ ◇ ◇

■ 今年、横浜市立大学の学長に就任したブルース・ストロナクさんは、もともと大学間の生徒獲得競争が激化しているマサチューセッツ州でベッカー大学の「大学改革」に携わった。参考記事中では

「アメリカの大学は『学生はお客様』という視点で経営に当たっている。日本の大学が見ているのは文部科学省だけ」

と語っている。

◇ ◇ ◇

■ ハーバード大学などはファンドを独自の運用会社で2兆円ほどの基金で運用しているとも聞く。もともと「寄付」という習慣が根づいているのと富裕層が多いということからもそのようなことが可能なのだろう。
 また、スタンフォード大学の場合は研究者の要望を調整するボトムアップ型の経営のようだ。実際、研究者は国から「競争的資金」と呼ばれる公募の研究課題の中の優れたものから配られる「研究費」を獲得するのに必死なようだ。大学そのものからもらうものより外部からの研究費を持ってくる研究者の方がより求められているということだ。つまりは、

優秀な研究者=優秀な人材&研究費(補助・寄付)を集めてくるプロデューサー

のような役割が求められ、その集積が大学としての真価と捉えているのかもしれない。

◇ ◇ ◇

■そして、大学そのものを海外に進出させているケースも増えた。シンガポールなどは世界の名だたる大学が進出し優秀な人材獲得は熾烈な競争を極めている。アメリカのコミュニティーカレッジなども中国などアジアに出向いて説明会を行っているとの話も耳にした。

◇ ◇ ◇

■ 日本の大学もそのネットワークを海外に伸ばしつつある。文部科学省の調べでは、

−海外の大学と結ぶ交流協定がこの5年間で倍近い1万1292件に増加
−留学先で学ぶと母校での単位として認められる互換制度が協定件数の3割

ということだ。

■ つまり、グローバリゼーションは経済だけの話ではなくなったのだ。教育の世界にもその影響はどんどんと強くなってきている。
  例えば、中国が経済的に勢いのある今、アメリカでは中国語を習う学生がどんどん増えている。逆もまたしかりでアメリカ留学を志す中国人学生も年々増えている。ということは、相互の大学間で学生が行き交うことが想定され、その学生をどのように個々、大学間でひっぱりこむか。
 つまり、「(よき)人材の確保」で大学側は激しい「競争」を迫られている。そして「競争」は良きも悪きも「質」の向上をもたらす。長期的視野で見れば大学のブランドを作るのは「学生」であり、卒業後に社会でどのような活躍をするかでその大学のブランド価値が決まってくる。     
 また、学生側は大学進学において、それだけ多様な選択肢を用意されることになる。ただ、そのあまりにも広大な選択肢の波に日本の学生は呑まれてしまわないか。そういう意味での「適材適所」的なキャリアデザインが早い段階で必要となってくるのかもしれない。
 やっぱり、「選択する力」がここでも重要なキーとなってくる。

 

[参考記事・参考放送・参照URL]

朝日新聞:「海外大学との交流協定、5年間で倍増 海外拠点170に」より

朝日新聞:「大学破綻に備え「学生転学支援プログラム」 文科省」より

毎日新聞:「<学長給与>法人化に伴い、国立大学間の格差広がる」より

読売新聞:「大物"経営陣"競う国立大」より

読売新聞:「競争力持つ大学を」より

読売新聞:「経営重視の大競争時代へ」より

読売新聞:「私大次々都心回帰…進む少子化、生き残り作戦」より

日本経済新聞:「新たな『大学自治』構築へ」より

日本経済新聞:「広い視野と経営知識を」より

日本経済新聞:「社会の要請 真剣に探れ」より

共同通信:「国立89大学、純利益合計は1100億円・1位は阪大の70億円」より

共同通信:「東大が初めて大学案内 競争時代に「学生来れ」より

共同通信:「東大、"黒字"53億円 法人化後初の04年度決算」より

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