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§18 企業とオーケストラと学校と −組織とリーダーシップ−

by 岡部憲治
2005/08/11

■ 5、6年ほど前の話だが、車から文具まで幅広い分野の異業種がプロジェクトを組み「WILL」というブランドを立ち上げた。コラボレーションとしてはおもしろい試みだったが残念なことに去年終了してしまった。
 しかし、先日、ある番組で同業他社のコラボレーションによる高級ブランド立ち上げのニュースを目にした。今回は同業種、すなわち競合関係にある企業のアライアンスによるものだ。ある意味、言葉としては昔からあった「WIN-WIN」の関係が構築されてきたのだろうか。
 仕掛け人はアドバタイジング・オーケストラのAZZAMI氏。しかし、「オーケストラ」とはまさに的を得ている。さしずめ、AZZAMIさんは指揮者というところだろうか。

◇ ◇ ◇

■ オーケストラといえば、指揮者がいて、コンマス(コンサートマスター)がいて、団員がいて…というように指揮者をリーダーとしたピラミッド構造型組織の典型例だ。そして指揮者のなかでも力のある人は「巨匠(マエストロ)」と呼ばれたりする。企業でいうところのCEOだろうか。

◇ ◇ ◇

■ だが、これとは全く違うオーケストラが存在する。指揮者のいない自主運営型のオーケストラとして知られるオルフェウス室内管弦楽団だ。
 オルフェウス室内管弦楽団のことを知ったのは2、3年前だ。ある番組で名だたる企業が研修としてオルフェウス室内管弦楽団を見学しそのプロセスを学ぶという内容を特集していた。
 いわゆる「オルフェウスプロセス」と呼ばれているものだ。

 オルフェウス室内管弦楽団には8つの原則がある。

1) その仕事をしている人に権限を持たせる
2) 自己責任を負わせる
3) 役割を明確にする
4) リーダーシップを固定させない
5) 平等なチームワークを育てる
6) 話の聞き方を学び、話し方を学ぶ
7) コンセンサスを形成する
8) 職務へのひたむきな献身

 つまるところ、マルチリーダーシップを互いに高めあっていこうというものだ。一見、リーダー不在のようにも思えるが、高い共有意識を皆が持つことによってマルチリーダーが多数存在するというのだ。
 なるほど、音楽という創造的活動においてはピラミッド型もありだが、このようなフラット型の組織が相乗効果を生む場合もあるかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ 実際、その番組ではある企業が研修後に今後の組織のあり方に対する一つの方向性として「中間管理職の人数の削減」を打ち出していた。要するにフラット化だ。実際の現場レベルの声を重視し、それを風通しのよいプロセスでタイムラグをなくし企業としての意志決定に反映する。
 そしてその循環構造のなかでは「多すぎる中間管理職」を障害と捉えていた。つまり、1つの組織内における

必要以上のステータスホルダーはステークホルダーにとって機能的役割を失いつつある

ということだ。
 一時期、アドホックな組織というのも流行ったが、やはり無理があったのだろうか?ステータスというのは予想以上に人に力を纏わせるのかもしれない。
 最もこの本が日本語訳されて出版されたのが2002年だから、実際に今どのようになっているかはわからない。注目されてからそれが定着するまでには数年のタイムラグがあるからだ(例:コンテンツ産業という言葉など)。
 とはいえ、オルフェウス室内管弦楽団の活動は最大支援しているモルガン・スタンレーのHPを見る限りでは現在も健在であり、ビジネスとの接点も色あせていないようだ(→ここ)。
 そして、先月「フォードが北米でホワイトカラーを1万人削減検討している」という記事を目にした時に「もしかして、これは?」と感じた。

◇ ◇ ◇

■ だが、フラットな組織だけがいいというわけではない。クラシック入門として人気のマンガ「のだめカンタービレ(二ノ宮知子・講談社)(※)」に登場する「オレ様千秋さま」のような指揮者だった場合はどうだろう? ピラミッド型ではあるが、これはこれで個々の個性を引き出すという役割を千秋が果たすわけだから「組織」の有り様としてはおもしろい。作中に出てくる、「Sオケ」と「Aオケ」と「RSオケ」では同じピラミッド型組織でありながらそれを構成するメンバーと指揮者と演奏するクラシックの曲でまったく違ったものとして描かれている。

◇ ◇ ◇

■ 企業でもプロジェクト型で仕事を遂行しているところが多いが、それはプロジェクトリーダーによって推進されるわけだから自律型ではあるものの小さいピラミッド型組織の集積と考えることもできる。

◇ ◇ ◇

■ おもしろいのはWindows 2000 Server (2003 Serverはほとんどいじったことがないのでわからない)は「ディレクトリー構造」、「アクセス権の設定」、「権限委譲」などの機能によりピラミッド構造を実装している。サーバーの機能としてそれらを実装するのは管理の容易さとミスの軽減によるものだから、もしかしたら、

「管理」を追及するとピラミッド構造になりやすいのかもしれない。

ただし、あくまでも「ミスのない実務処理を実行する」という意味でだ。
 最近ではコンピュータの世界でも自律型やエージェント型の研究がされているわけだから、既存の「管理」機能重視以上のことを求められている。これはピラミッド型からの発展を模索している表れだろう。

◇ ◇ ◇

■ 先の「オルフェウスプロセス」は企業のマネジメントの現場では今ひとつのような声も聞こえてくる。しかし、それは「営利追求の組織」という性格上の問題もあるだろう。そうでない組織には適用する可能性も十分ある。
 つまり、企業やオーケストラと呼ばれる組織ではない「学校」という組織ではどうなのだろうかということだ。

◇ ◇ ◇

■ 実際、学校は企業でもオーケストラでもない。なぜなら、

集団 集団
集団
集団

が入れ子状態で存在するからだ。ある意味、企業やオーケストラより組織運営は難しいのではないだろうか。そして学校はオルフェウスのようなフラットな組織にもなれない。
 「先生」と「生徒」という明確な関係が存在するからだ。

◇ ◇ ◇

■ 学校には「生徒の育成」という大前提がある。では個々、生徒にどのようなリーダーシップを育成するか。重要な命題だ。

子どもたち同士でのコミュニケーションを活発にすることにより、オルフェウスのようなマルチリーダーシップを持たせることを目的として育てるのか
あるいはリーダーとしての資質、サポーターとしての資質、チームとして助け合う精神など、個々その子どもにあった資質(ロールプレイ)を見極めたうえでの育成を目指すのか
あるいは切磋琢磨によって競い合うことで個々のリーダーシップを高めあっていくのか 

 学生時代にどのように過ごすかによってその後の人生は大きく左右される。そう考えるとどのようなタイプのリーダーシップを持っているかを本人が自覚しているか、してないかでは大きく違ってくる。ならば、育成している側のリーダーシップに対する明確なビジョンを生徒と親御さんの一人一人にしっかり伝える必要があるのかもしれない。
 アメリカのオルタナティブスクールなどはそのようなビジョンの明確化により様々なタイプの存在が認知され、結果として子どもたちの側はそれを「選択」するだけだ。

◇ ◇ ◇

■ 先ほどの企業やオーケストラの例と同様に一つの答えがあるというわけではないだろう。ただ、どのような組織形態であれ、「核(コア)」は指針として共有しておく必要があるのかもしれない。
 自分がいったいどの位置に立っており、組織全体としてはどのように動いていてその組織構造のなかで自分の担っている役割はどのようなものなのか。それを意識しておけば自然とその役割をこなしていくことができるのではないだろうか。
 それはどこに所属していても必要とされる「認識」という行為に他ならない。

(※)のだめカンタービレ 
第28回講談社漫画賞を受賞したクラシックマンガ。クラシックビギナーの火付け役と言われている。現在、1〜12巻発売中で講談社「Kiss」にて連載中。
 なかでもマンガに登場するクラシックから選出されたCD「のだめカンタービレ」は権利・著作の関係から販売と同時にすぐに廃盤・回収となり伝説の一品としてオークションでは非常に高値で取引されている。それもあってか、「のだめカンタービレ」Selection CD Bookが8月11日(木)に発売されることになった。

 

[参考記事・参考放送・参照URL]

読売新聞「フォード、北米でホワイトカラー1万人削減検討」より

オルフェウスプロセス−指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント
ハーヴェイ セイフター (著), ピーター エコノミー (著), Harvey Seifter (原著), Peter Economy (原著), 鈴木 主税 (翻訳)

 

 

講談社 Kiss on Line http://www.kisscomic.com/

 

 

二ノ宮知子 公式ホームページ http://www.din.or.jp/~nino/main.html

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