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§6 世界競争力ランキングにみる英語と日本のつきあい方

by 岡部憲治
2005/07/01

■ 先日発表された スイスの国際経営開発研究所(IMD)、による世界競争力ランキングで日本は総合21位で前回より2位上昇した。この世界競争力ランキングは指標として、

−経済状況 (Economic Performance) (日本は21位)
−政府の効率性 (Government Efficiency) (40位)
−ビジネスの効率性(Business Efficiency) (35位)
−インフラ整備度 (Infrastructure) (3位)

の4分野、計314項目に基づき統計や聞き取り調査などから算出されたものだ。全60カ国・地域のなかで日本は

−外貨・金準備高
−平均寿命
−中等教育普及率

でトップだったが、語学力は最下位だった。詳細はYearbookを購入していないのでわからないが語学力といえば第二外国語のことだろう。つまり「英語」だ。それにしても中等教育普及率ではトップなのに語学力では最下位とはなんとも不思議だ。それほどまでに親和性がないのだろうか? 

◇ ◇ ◇

■ 高校生の時に英単語を覚えるのが非常に苦痛であった。なかでもあまり日常では使いそうもない単語は頭の中をスルーして全く記憶にとどまってくれなかった。ところが、留学してからそれが一変した。だからといって急激に語彙数が増えたというわけではないが少なくともスルー率が減った。
 例えば、scapegoat(スケープゴート)という単語がある。日本語に訳せば「身代わり・生贄(いけにえ)」だ。高校生の時にこの単語を暗記しては忘れ、暗記しては忘れを繰り返していた。つまり丸暗記していたのだ。
 大学で社会学のコースをとっていてこの単語と出くわした。どういうわけかわからないが頭にパッパッパッといろんなことが浮かんで「なるほど!」と一人感動していた。よく電球マークがピンと頭に浮かぶイラストがあるがあんな感じだ。

自分の頭のなかで以下のようなことが連鎖的に起こった。

1)goatはルパン三世 カリオストロの城で出てきた「ゴート族」と指輪の紋章が「ヤギ」ということから「ヤギ」確定。

2)scapeと似た言葉ですぐに浮かぶのが escape(エスケープ)。escape は確か中学くらいに習った単語で「逃げる・脱出する」だ。

3)ここでなぜか思い出したのが、「うしおととら(藤田和日郎・小学館)」のなかでゴーレムの額に「emeth」という言葉が刻まれていてその最初の「e」を削ればゴーレムが破壊できるという場面。「emeth」というラテン語の「真理」から「meth」という「死」を表す言葉にすればゴーレムが破壊できるという設定だ
つまり、接頭辞の e には最初に課された状態と対極の状態・意味になるということだ。
なるほど、e + scape で逆の意味になるのか。

4)よって、
scapegoat = 脱出できないヤギ =身代わり・生贄(いけにえ) 
なんとなくこの言葉がどんな意味を内包しているのかが想像できた。

 で、調べてみると、

古代ユダヤの贖罪日に人々の罪を背負わせて荒野に放されたヤギ

というところから生まれた言葉のようだ。なるほどscape + goat で scapegoat となったのは道理だ。
(注:2)、3)、4)のつなぎ方が違うらしいというのは後々知ることになるのだが、自分なりの理屈のつけ方ということでご理解いただきたい。)

◇ ◇ ◇

■ 言葉のつくりはそこに内包されている意味がどのように構成されているかを考えるかがおもしろい。とは言うものの英語と日本語では違いは大きい。日本語の場合、漢字も使用するのでその漢字さえ覚えていればあとはその組み合わせでなんとなく意味がわかる。だが、ローマ字使用の言語は上記のように細かく分けてその内包している意味をわかったとしても私たちが漢字でなんとなくわかるほどの効力はもたない気がする。例えば、日常生活で必須となる病名などははまるごと覚えておかないといざという時に医者に説明もできないし、逆に説明を聞いてもさっぱりわからない。

胃潰瘍、下痢、痔、心筋梗塞

(gastric) ulcer、 diarrhea、hemorrhoid、cardiac infarct

 心筋梗塞は別にしてもその他は日常でもけっこう患う可能性がありそうな病気だ。そんな言葉も知らずに病院に行って診察時に医者から「あなたはhemorrhoid(ヘモロイド)です。」なんて真顔で言われたら「ヘモロイドってなんだ?なんか特別な病気か?」とどきどきして心拍数が上昇してしまうではないか。仮に痔の説明を医学的に解説されてもやっぱなんか特別な病気なのかと不安はおさまらない。(ちなみに自分は痔と診断された経験はないが。)

◇ ◇ ◇

■ 「知」が「価値」を持ちそれが「等価交換としてのお金」を生んでいるということがよくわかる。貧富の格差が日本よりも激しく移民者も多いアメリカで単語数を多く知ることはそれだけで一つの武器となる。それはなにも医者や弁護士や会計士のようにその分野のテクニカルターム(専門用語)を覚えなければ武器とならないという意味ではない。そこまでに至らなくても英−英でsynonyms(同義語)やantonyms(反意語)を相互に結び付けてwww(world wide web) のように蜘状に言葉の連鎖を形成し覚えていくことで、日常のdiscussion や debate の場で大いに役に立つという意味でだ。
 言葉を多く知ることは異国でHow to surviveするためには必要不可欠であり、そういう意味での教育機関の果たす役割は大きい。無料で英語を教えてくれるアダルトスクールや安価で様々なトレーニングを施してくれるコミュニティーカレッジはそういう経緯の元に発展してきたのだろう。

◇ ◇ ◇

■ 要するに「生きるために覚える」のと「固定化された競争社会で上を目指す」のでは全く別次元ではないかということだ。
 さまざまな要因があるにせよ、日本が語学力で最下位にランク付けされ、TOEFLなどでもやはり下位にあるのは後者の立場で試験に臨む意気込みの違いに表れているのかもしれない(日本が受験者人数の相対比で下位になるのは百も承知だが、受験者個々の意気込みには関係ない)。

◇ ◇ ◇

■ 大陸続きで隣国へのモベイラビリティー <movailability>(※)も高く、自分の居場所をサクサクと腰も軽やかに移住していく移民者の行動力は「生きるために覚える」というスタンスを生み出し、結果としてテストに臨む姿勢に反映しているとも考えられる。

◇ ◇ ◇

■ 他国へのモベイラビリティーでは低いものの、英語との付き合いが非常に長い日本は「英語」に対するスタンスをどのように決め込むか。地球規模で考えれば日本語だけでも十分に生活水準の高い暮らしができるのだから最終的には個々「意気込み」、すなわち自ずとの戦いになるということだろうか。だが、その意気込みを「個々」ではなくまわりから盛り上げるシステムがあるともしかしたら変わってくるのかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ 参考までに世界競争力ランキングの4つの指標を小分類と共に表にした。指標の一つ「INFRASTRUCTURE 」が記事中で「インフラ整備度」・「インフラ整備状況」と訳されているが、おもしろいのはそのインフラに「Health and Environment 」や「Education」が含まれるということだ。インフラ指標にそれらが含まれているのは意外に想像しにくい。日本で健康・環境、教育が「インフラ」という言葉とあまり結び付けられていないからそう感じるのかもしれない。

 ECONOMIC
 PERFORMANCE
 Domestic Economy
 International Trade
 International Investment
 Employment
 Prices 
 GOVERNMENT
 EFFICIENCY
 Public Finance
 Fiscal Policy
 Institutional Framework
 Business Legislation
 Societal Framework
 BUSINESS
 EFFICIENCY
 Productivity
 Labor Market
 Finance
 Management Practices
 Attitudes and Values
 INFRASTRUCTURE
 Basic Infrastructure
 Technological Infrastructure
 Scientific Infrastructure
 Health and Environment
 Education

IMD:「Methodology and principle of analysis」より作成

※ mobility+availabilityから考えた造語で、「他の場所(地域・国)への流動性・移動性の容易度を表す」と定義する。

 

[参考記事・参考放送・参照URL]

読売新聞「日本の国際競争力、2つ上がり21位に」より

朝日新聞「世界競争力ランキング、日本は21位に 2ランク上がる」より


IMD http://www02.imd.ch/

IMD PDF:「Methodology and principle of analysis」より

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