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§10 −「金融商品」という言葉のナゾ −

by 岡部憲治
2006/4/21

「金融商品」という言葉が定着してずいぶん経つが、初めてこの言葉を聞いたとき自分のなかではピンとこなかった。

「なんで、"実体" がないのに "商品"? 」

どうにも違和感があった。
 例えば、衣料品・食料品・住宅(不動産)・サービスなどが「商品」と言われれば特に違和感はない。同様に「賃料」も賃貸マンション・アパートからマンガ喫茶まで「時間に対するスペース貸し料」ということで「商品」としてうなずける。

共通するのは「対価」としてのお金を払って受け取るものがあることだ。

◇ ◇ ◇

■ ところが、「金融商品」の場合、「対価」として受け取るものは何か?
もちろん、証書として株券などを受け取るが、実際には、それが株であろうと投資信託であろうと定期預金であろうと、結局は「(取引きする)権利」を受け取るということになるのではないだろうか。

例えば、「元本と利息が保証されている(取引をする)権利」を有する「商品」が定期預金であったり、逆に「元本や利息は保証されていないが価格が上下する(取引をする)権利」を有する「商品」が株式や投資信託だったりするわけだ。

だから、私たちは実際には「○○○に参加する権利」を仲介屋である銀行や証券会社や郵便局から手数料を払って買っているわけだ。
(ちなみに「定期預金」は預金者が銀行の「負債」の部分に貸付けている形になるので手数料は取られないが、かわりに預金に対して一定の時間が拘束され<預金を自由に出し入れする権利が徴収される>と考えることができる。)

要は「対価」としてお金を払って得られるモノがどうも衣食住・サービス・賃料などとは「質」が違うように感じられる。

考えなおしてみると、バランスシートの右側にくる「負債」「資本」の部分が「金融商品」にあたるのではないだろうか。

だから違和感を感じるのかもしれない(そんな初歩的なこと今ごろ気付くなって?( ̄□ ̄;))。

◇ ◇ ◇

■ ところが「金融商品」のなかにも、同様に「権利」を買っているが衣食住・サービス・賃料のように「対価」として実体を伴っているものがある。それがいわゆる「商品取引」、厳密には「商品先物取引」だ(正確には「金融派生商品」だが)。
 「商品先物」というと

「大儲けできるかもしれないが大損するかもしれない。。。ガクガクブルブル ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

というような「リスクがでかい」というイメージが伴う。
 代表的なのは世界最初のバブル経済破裂事件としても名高い、オランダのチューリップ相場の大暴落(チューリップバブル)だ。オランダのチューリップ相場大暴落は

オスマン・トルコから輸入されたチューリップの球根に人気が集中し、異常な高値がついた。その後価格は100分の1以下にまで下がり、オランダ諸都市は混乱に陥った。

最高値では1個のチューリップの球根で家が1軒建ったとか。そりゃ〜バブルも甚だしい。

 日本の「米騒動」の場合は

1918年8月2日寺内正毅首相のシベリア出兵宣言で需要増大を見込んだ商社や米問屋らがさらに米の買占め、売り惜しみに走ったため米価が急騰する。一升11銭だった米価が30〜33銭程度にまで上昇した。

要は買占め・出し惜しみによる価格高騰が起こったということだ。

この発端となった「米相場」は実は世界初の「先物取引」としても有名だ(※)。

1620年代に淀屋米市ができ、1730年に大阪堂島に「帳合米取引」の市場が公設されたという経緯があり歴史も古いのだ。

ちなみに「帳合取引」とは

江戸時代に行われた先物取引で、現物受渡しなしの、すべて帳簿上の差引き計算による差金決済取引

だそうだ。(米相場といえば、最近、1939年に廃止されたコメ先物取引の復活が検討されていたが結局は見送りとなった。)

◇ ◇ ◇

■ おもしろいのは英語で「金融商品」は一般的に

「financial products」

と呼ぶが普通の店頭で売られている商品は

「commodity(commodities)」
「goods 」
「merchandise」

と呼ばれる方が多い(もちろん「products」もあるが)。

そして話の中心、「商品先物」

「Futures(まさに「未来=先物」)」

と呼ばれている。つまり、金融の世界で共通言語として使用されている英語では、
それぞれがまったく別の言葉で認識されているのに、日本語では

「金融商品」
「商品」
「商品先物」

と言葉が似ているためにそれぞれの特性を混同しやすい状況にあるのではないだろうか。

 とは言うものの、最近では株式をストック、投資信託などをファンド・トラスト、金融派生商品をデリバティブなど外来語で呼ぶことに抵抗がない。だが、商品をコモディティやフューチャーズという外来語で呼ぶことはまだ定着していないのではないだろうか。(株=シェア<share>も定着していないか。。。)
 たぶん、世界初の「先物取引」の歴史からそちらの方が親しみやすいのだろう。(考えてみれば、株式の「成行」「指値」「約定」「板」なんてのも同じことか)とにもかくにも「商品取引」とは何なのだろうか。

 

アントワープに1531年に穀物や香辛料の先渡し取引の取引所が建設された
  と参照本の一つには書かれてあるのでなんともいえないが。

 

[参考記事・参考放送・参照URL]

ウィキペディア 「チューリップ・バブル」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB

ウィキペディア 「デリバティブ」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96

産経新聞:「コメ先物復活見送り 農水相、上場は不認可方針」より
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