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§7 選択×学習×コミュニティーカレッジ!? -- フィードバック from Finland --

by 岡部憲治
2005/06/03

■ ルソー高等学校の取材後、ぼんやりと頭に浮かんだのはフィンランドの中等教育のシステムがアメリカのコミュニティーカレッジと似ているのではないかということだった(厳密には制度的なところで違うのかもしれないがあくまでも私の感想ということで捉えていただきたい)。具体的には

−学費が安いこと(フィンランドは無料だが)
−選択肢(コース)が非常に豊富であること
−1年のうちでオファーされるコースが決まっていて自分でコース選択を考えなくてはいけないこと
−卒業までの期間がフレキシブルであること
−学びたい者が学びたいことを学べるよう工夫されていること

のようなことだろうか。

◇ ◇ ◇

■ アメリカのコミュニティーカレッジは2年制の大学で基本的には公立、地元の18歳以上ならば誰でも入学しコースを受講することができる。4年制大学への編入を最初から考えて入学してくる生徒もいれば既に働いていて自分のキャリアのために受講する社会人もいる。もちろん、純粋に学びたいという高齢者の方もいる。だからクラスメートも10代、20代だけでなく30、40、50代なんてあたりまえの世界だ(もちろん、若い人が多いのではあるが)。入学も年に2回はあるのですんなりとコースをとることができる(サマーセッションのみを取ることも可能だ)。

◇ ◇ ◇

■ 学費の面で考えれば例えばカリフォルニア州の場合だと州内在住者なら1単位あたり27ドル、州外在住者なら154ドル、留学生だと164ドルとなっている(最近値上がりしたようだ)。約4ヶ月のコースで仮に1コース3単位だったら州内在住者なら78ドルで済む。留学生だと492ドルになってしまうが、それでも普通に4年制大学に行くのに比べればはるかに安い。

◇ ◇ ◇

■ コースに関しては、例えばコミュニティーカレッジの場合 Economics 1 というコースがあった場合、複数の先生が同コースを別々の日あるいは時間に行う。先生との相性や時間の都合から取れない場合でも選択できるようになっている。コース数は半端じゃない。ルソー高等学校の場合、必須コースは34〜37で選択コースとトータルで75コースが必要とされる。だがオファーされているコース数は270だ。

◇ ◇ ◇

■ コミュニティーカレッジの場合、自分の志望するクラスには早くから登録するが定員いっぱいになってしまうとWaiting List に登録されるので空きが出るまでとりあえずそのクラスで受講する。授業が進むにつれ本登録している生徒から段々と欠席がでて自分がくりあがる確率があるからだ。コースにはFall(秋)にしか提供されていないコース、Spring(春)にしか提供されていないコースなどもあるため希望のコースを取るためにはそんな行動も要求される。
 ルソー高等学校の場合、インターネットを通して自分の取りたいコースにレジストレーションするわけだが、1学期に取れるコースが最高で8コースに設定されておりその範囲で1週間の授業が組めるようプログラム化されている。ちなみに、生徒は平均して1学期に4コース取るそうだ。

◇ ◇ ◇

■ 学費の安さ(フィンランドの場合は無料だが)、オファーされるコースの豊富さ、そしてレジストレーションの方法も非常に似たものを感じる。なにより、2年〜4年で高等学校を卒業するというその幅のレンジがいっそうそれを感じさせる。副校長の話によると4年間で卒業する生徒は何もいわゆる「落ちこぼれ」だからではないそうだ。例えばある時期にスポーツに興味があるので、その分取得する単位を減らして調整したり、あるいは自分が興味のあるコースが提供されているので高等学校に残ってそのコースを取るというような生徒もいるということだ。頂いた資料に

At the minimum, 75 courses are required.

という一文がある。つまり、最低限でありmaximumは存在しないのだ。

◇ ◇ ◇

■ 実際に「大学みたいですね」と尋ねると「pretty much」と副校長から答えが返ってきた。つまり、そういうことなのだ。中等教育への高等教育のシステムの前倒しというところか。フィンランド自体がもともとイギリスの大学システムを手本としているわけだからそれは何もアメリカのコミュニティーカレッジというわけではないのだろうが、中等教育への取り込み方をみていると総合大学とポリテクという分け方よりもアメリカのコミュニティーカレッジの方が私にはしっくりくる。

◇ ◇ ◇

■ 具体的にルソー高等学校で提供されているコースをみても、例えば
Fysiikka 1 (Physics 1)
Fysiikka 2 (Physics 2)
Fysiikka 3 (Physics 3)
Fysiikka 4 (Physics 4)
と非常にわかりやすい。これはコミュニティーカレッジで提供されているコースシリーズと全く同じ形態だ。
 コミュニティーカレッジから4年制大学へトランスファー(編入)するときに各々、大学が課すコース条件にRequirement と Elective のコースがあるが、これはフィンランドの場合だと卒業するための Compulsory とOptional のコースで表現されていると置き換えられる。ルソー高等学校の場合さらにApplied コースも用意されていた。レベルで言えば

Beginner(初級)、Intermediate(中級)、Advanced(上級)


Compulsory、Optional、Applied

 といったところだろうか。

自らの意思で学び、加えて卒業期間の調整ができ、レベル分けされた豊富なコースが提供されていること

 これは学習者側(学生だけではなく学ぶ人、全てを総称して)にしてみれば理想なのかもしれない。

◇ ◇ ◇

■ 多様な選択肢にばかり目がいってしまうが、もちろんその選択肢のなかには進学バリバリを目指す生徒のためのコースもちゃんと用意されている。インターナショナルバカロレア(以下IB)の取得を目的とするコースだ。IBは欧州では一般的で、それを取得していると無試験で大学に入学できるというものである。英語での授業もあたりまえのようだ。

◇ ◇ ◇

■ フィンランド独自だと感じたものの一つに5学期制があった。中学校では4学期制と5学期制の両方があるそうだが高等学校は5学期制のみのようだ。ルソー高等学校の場合、1学期が7週間+テスト期間1週間で構成され中間テストはない。最後の1週間でそれまでの7週間が試されるのだからある意味すごい。
 ベンチマークが途中にないので地道にやるしかないではないか。クラスのなかではお互いに助け合いの精神も生まれることだろう。いい意味でのチーム学習が形成されていくかもしれない。

「競争よりも協同(すなわち共働)」

なのだろう。

◇ ◇ ◇

■ また、普通高等学校と職業専門学校の単位を同時に取得できるということも特徴だ。アメリカの大学でいうところダブルメジャーあるいはメジャー/マイナーというところだろうか。取材した現地で日本語教師をしている方の言葉を借りれば「料理人としての技術を学び(同時に資格を取り)、その精神ともなる文化的なことを大学に行って学ぶ」などということも高等学校卒業後のキャリアとして構築することが可能なのだ。両方の卒業資格を兼ねた修了書がもらえるというのは非常にフレキシブルでキャリアデザインとしての幅も広がることは言うまでもない。

◇ ◇ ◇

■ 進路ということだけで考えれば日本の場合、大学進学にあたって浪人するという「選択肢」をせざるを得ない場合がある。
 だが、フィンランドもアメリカも「浪人」という概念は存在しない。あくまでも「選択肢」をどう選択していくかなのだ。
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