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―番外編― §10 フィンランド教育の多様な側面 〜シンポジウム報告2〜

by 岩辺みどり (写真・文)
2006/03/13

写真提供:フィンランド教育・社会研究交流会

■ 日本の教育指導要領にあたる、学校での指導内容を決めたものが「コア・カリキュラム」と呼ばれるものです。この「コア・カリキュラム」は国によって決められるものですが、日本に比べて地方自治体、各学校の授業内容などの裁量の度合いが広いといわれています。PISA2003での好成績もこの「コア・カリキュラム」が認める学校や教師の授業内容の自由度が、各学校や生徒に合わせた学習を提供できていることにあるのではないかと言われてきましたが、フィンランド政府はさらに現在も改良を続けています。そのことに関して渡邊あやさん(日本学術振興会研究員)が、教育行政について説明しました。

 「義務教育は7〜16歳ですが、1999年の基本教育法でこれまでばらばらだった小学校と中学校を1つにし、小中一貫学校にする事が決まりました。既存の学校はそのままですが、新設校は全て9年制の小中一貫学校になっています。教育行政は、地方自治体や国家教育委員会をはじめとする執行機関、教育省の政府機関、そして高等教育評価会議や学校教育評価会議などの評価機関が学校を取り巻く機関として存在します。教育省のみでなく様々な機関が独立して学校教育をサポートしている、という点が特徴的といえます。」

 と、これだけの教育を支える機関がある一方で、授業内容の設定などが学校に大きく任されている点が、フィンランドの教育全体の底上げにもなっているように思えました。

◇ ◇ ◇

■ では、具体的に「コア・カリキュラム」で決められている内容を、フィンランド大使館発行の『SISU Vol.6』から目次を見てみましょう。

『コア・カリキュラム』目次

1. カリキュラム
2. 教育を行うにあたって
3. 教育の実施
4. 学習における総合的なサポート
5. 特別なサポートが必要な生徒への教育
6. 文化・言語グループへの教育
7. 学習目的と教育の主な内容
8. 生徒の評価
9. 特別教育の課題に関しての教育、特別教育システム

『コア・カリキュラム』2004年版より

各学校にはこの320ページ及ぶ「コア・カリキュラム」と共に、自治体が製作した107ページの「カリキュラム」の2冊が配布されることになっています。

◇ ◇ ◇

■ この2004年のカリキュラムにおいて前年度からの改定が行われた点について渡邊さんは次のように指摘していました。

写真提供:フィンランド教育・社会研究交流会

 「2004年度のカリキュラム改定では、国レベルの授業内容の規定というのが、より詳細かつ明確になりました。到達目標の設定や、学習支援の方法を明文化したことも改定された点です。その改定によって制限が厳しくなったということではなく、これまであまりに学校や教師に内容が任されことで、学校や教師の現場側の動揺や不満がかなり出されていましたの。ですから、これまで通り内容は教師に任せるが、ある程度の規定を明確化すると共にそうした教師たちへのサポート体制が増えた、と言えます。」

 フィンランドでは教科書の選定も教師と学校に任されていますし、習熟度別のクラス設定にするかどうかなども学校側の判断になります。自由と共に負担の重くなった教師の役割の支援体制が強化されたのが、新しいカリキュラムと言えるようです。

◇ ◇ ◇

■ シンポジウムでは、他にもこれまでフィンランド研究を長く行ってきた研究者(§9参照)からの発表がありました。高橋睦子さん(島根大学)は福祉国家変容の視点から、フィンランドの教育と子どもについて発表し、福祉国家整備前の経済格差の激しかった頃の写真などが出され、現在のフィンランドからは想像しがたい新たな視点をくれる発表でした。その他田中孝彦さん(都留文科大学)からの現地の高校生への聞き取り調査を中心としたフィンランドの青年の教養の質についての発表もありました。
 全国から集まった定員150人の2倍ほどの300人近くの参加者が、感嘆の声をあげたり、うなづきながら熱心にノートを取り、聞き入る姿が見られました。関係者のお話では参加者の大半が教師をはじめとする教育関係者ということで、今後の日本の教育を変えていこうとする教育関係者の意気込みが感じられました。

 

[参照]

明石書店 http://www.akashi.co.jp/home.htm

NTS教育研究所サイト内 OECDフィンランドセミナー報告
http://eri.netty.ne.jp/eduinfo-rep/eduinfo/20050302.htm

『Excellent FINLAND SISU Vol.6 ―世界一の義務教育―』 2005年、フィンランド大使館商務部、(株)紀ノ国屋書店
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