| ―番外編― §9 フィンランド教育の多様な側面 〜シンポジウム報告〜 |
by 岩辺みどり (写真・文)
2006/03/03
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| 写真提供:フィンランド教育・社会研究交流会 |
■ 2003年度に行われたPISA(国際学習到達度調査)において、日本を始めとする先進国が軒並み成績を下げました。そのなかにあって、各教科で好成績を残しトップとなったフィンランド教育に全世界の注目が集まり、その様は『Fショック』と呼ばれるほどでした。
フィンランドに関わる調査や研究を行ってきた人々が中心となって執筆された
「フィンランドに学ぶ教育と学力」(2005年/明石書店/庄井良信、中嶋博 編著)
は、Fショックに隠されていたフィンランド教育の様々な側面を映し出した本され話題となりました。
その「フィンランドに学ぶ教育と学力」執筆者が集まり、寒さが和らいだ2006年1月29日(日)、シンポジウム(フィンランド教育・社会研究交流会 主催、明石書店 後援)が開かれました。今回は、フィンランド教育レポート番外編として、その様子を報告したいと思います。
「フィンランドに学ぶ教育と学力シンポジウム」
| 司会: |
庄井 良信(北海道教育大学) |
| 挨拶: |
中嶋 博(早稲田大学名誉教授) |
| 発表: |
西島 徹(読売新聞) 「"学力世界一"の取材から見えてきたこと」
渡邊 あや(日本学術振興会研究員)
「フィンランドの教育の現状―PISAの結果から」
高橋 睦子(島根県立大学) 「フィンランドの教育と子ども−福祉国家変容の視点から」
庄井 良信(北海道教育大学) 「フィンランドにおける『学び』の原風景」
田中 孝彦(都留文科大学) 「フィンランドの青年の教養の質」
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◇ ◇ ◇
■ まず、フィンランド教育研究を長年続けてこられ、PISAテストにも詳しい中嶋教授の挨拶があり、
「子どもを励まし、助け、援助するのがフィンランド方式の教育のあり方です。」
とフィンランド教育での保護者や教師など周りの人々のサポートのあり方について語り、おちこぼれを作らない努力がされている教育方針に触れました。
フィンランドでは、習熟度別学習や補習授業の充実、個別指導などの生徒の学習状況や能力に合わせた支援体制がある他、「勉強は美徳である」という考え方が浸透しています。
例えば、小学生であっても在籍している学年の勉強範囲を修得していないと判断されれば、保護者と教師の相談の上で留年ということもあります。しかし、それは恥として捉えられることはなく、むしろ人より長く勉強することはすばらしいと捉えられます。そういう考え方がフィンランドには根づいています。
また、中嶋教授は日本の教育基本法にも触れ
「日本はフィンランド教育を見習えと焦って騒いでいるが、海外では日本の教育基本法が高く評価されています。ノルウェーやスウェーデンでも日本の教育基本法は有名です。日本を見習えと、それを学んだ他の国の方がPISAでも結果的に上に上がっているのです。」
と、PISA2003で成績を落として以降、国際テストで成績を伸ばすための教育方針に翻弄する日本の教育制度のあり方に苦言を呈しました。
◇ ◇ ◇
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写真提供:
フィンランド教育・社会研究交流会 |
■ 最初の発表者は、PISA2003後にいち早くフィンランドを取材して話題になった読売新聞の記者西島さんからが、同紙の連載「教育ルネサンス」(月―土連載)内で2005年3月23日〜4月2日にかけて掲載した記事の詳細などについて報告しました。実は西島さんが取材した学校の1つは、偶然にも私もフィンランド調査の際に訪れたクルヌンハカ中学校だったということで、以前のレポート(§2参照)からその雰囲気を少し味わっていただけるかもしれません。
フィンランドでは幼稚園から大学まで公立学校のみで、授業料も無料である、というフィンランド教育の基礎知識から説明は始まりました。
「フィンランドでは税金が高く、収入の50%以上を払っているそうです。しかし、それに見合うサービスを受けているので、その税率の高さも当たり前というふうに受け入れているようでした。授業料が無料なので、学校に長く残って勉強する傾向にあるようで、取材をしたヘルシンキ大学附属の教員養成学校では平均在籍年数11.8年ということでした。」
補習授業を制度的に取り入れている学習支援体制に対しても触れ、
「幼稚園にも落第がありますが、おちこぼれ対策の補習授業も制度化されています。「フィンランドの資源は"木"と"頭"だ。」と取材した先のどこの人も言っているのがとても印象的でしたが、それだけ人という資源を大事に育てていく教育に力がいれられているのがわかりました。補修授業は、国語と算数・数学が主で、20〜25%の子どもが利用したことがあるようです。教師は週28時間の就労時間が最大限なので、補習授業などで教師が足りない場合には新しい教師を増やす事ができます。」
と、生徒の勉強支援に加え、サポートする教師側の制度が整っていることにも言及し、会場に訪れていた多くの教師からは「うらやましい・・・。」とつぶやく声やため息がもれました。
最後に訪問先の小学校で出会ったという日本人とフィンランド人の両親を持つ小学生の話は、フィンランドと日本の教育の違いを表したエピソードでした。
「日本で小学校の低学年を過ごし、高学年でフィンランドの小学校に転校してきた小学校5年生の女の子は、『日本では先生がちゃんと勉強を教えてくれるし、黒板にもちゃんと書いてくれる。でもフィンランドは先生が全部教えてくれない人もいて、自分でやらなきゃいけないことが多くて大変。』と語っていました。先生が教えたことだけが答えではなく、なるべく自分の頭で考えさせるというフィンランドの教育方針を、この小学生はちょっと大変だととらえている、というところがとても興味深かったです。」
先生が板書もきれいにしてくれ、教科書に沿って勉強する日本の学校に慣れていた彼女は、教育の中に自由が多いフィンランドの教育にとまどっているようにも聞こえます。しかし、彼女が成長した時、幼い頃の教育を思い出し、どのように活かそうと思うのか興味が湧きます。
[参照]
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