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by 岩辺みどり (写真・文)
2005/07/11
■ 留年は誇るべきこと
フィンランドの首都ヘルシンキ市にある、クルヌンハカ中学校を訪問しました。中学校卒業後は、高等学校か職業専門学校への進学が選ぶことのできるフィンランドですが、この学校は、大半の生徒が高等学校進学をする市内でも有数の進学校です。
クルヌンハカ中学校は全校生徒500人程度で、1クラス14人程度、最大でも20人という少人数制のクラス編成をとる学校です。欧米で教育で評判のいい学校というのは理数科目と音楽に力を入れて、人間形成に重要な情操教育も大事にしている学校も多く、この学校もその例に外れず数学と音楽に力を入れている地域でも評判のいい進学校です。音楽以外にも演劇やダンスの授業も選択することができます。
学校での必修科目は、フィンランド語、スウェーデン語、数学、化学、物理、歴史などの主要科目で、それ以外に選択科目ではドイツ語、英語、フランス語、演劇、観劇、哲学などがあるそうです。時間割自体は学校側が決めますが、選択の幅は広く興味や進路に合わせて選ぶことができるようになっています。
成績は1〜10の10段階評価ですが4以下は不可になり、1学年中に4以下が2個以上になるともう1度その学年をやり直すことになるそうです。しかし、フィンランドでは「落第」という考え方をせず、「よく勉強しているね。」とより長い期間勉強したことを称えます。「分からないものをやり直すのは恥ずかしいことではない。」という価値観があるのです。
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■ 少人数制のICT教育
フィンランドではICT教育(§1参照)に力を入れていますが、この中学校でも年間40時間のPCスキルの授業が組まれ、数学や音楽などほかの教科の中でのPCの使用を積極的に勧めています。
「フィンランドでは、エンジニアなど情報社会の技術的な担い手が不足しているので、こうして子どもたちが早いうちからPCスキルに慣れていくことで、人材育成にもつながると考えています。」
と、PCを教える教師は言っていました。
「特に女子生徒は理系教科への嫌悪感を覚えるのが中学生ぐらいからなので、この頃にICTツールを通して理系への興味を広げていってもらえるように勧めています。」
と、授業への工夫も話してくれました。見学させていただいた授業ではちょうどExcelの使い方を教えていて、教師が大きなスクリーンで説明しながらやってみせ、その後それを見た子どもたちが同じことをやってみます。教師が話をする時は生徒1人1人の前にあるPCの画面は消し、先生の話に集中させ、生徒がやっているときは、先生は全員のPCの画面が見える位置に立ち、生徒達の状況を見ながら、戸惑っている生徒にはすぐにそばへ行って助けてあげており、少人数ならではのケアが見られました。
◇ ◇ ◇
■ 生徒達の高等教育進学への意欲
中学卒業後には将来へ向けた進路へ進まなくてはいけないフィンランドの教育制度ですが、生徒たちは中学校卒業後の進路をどう考えているのでしょうか。先生によると、
「この学校では生徒の95%が高等学校へ進学します。職業専門学校に進学する生徒はわずかです。ヘルシンキ市内には複数の高等学校があり、選択の幅も広くなっています。」
ということでした。
実際の生徒たちは進学についてどう考えているのでしょうか。中学3年生の3人の生徒に話を聞くことができました。
| オスカル |
「大学で勉強したいのは、情報テクノロジーです。高等学校から大学に進学して、高等教育を受けることで、社会で競争し、競争に勝つことができるからです。」 |
| マルタ |
「医学を勉強する為に大学に進学しようと考えています。ただし、大学に入学する為には試験が難しいので、高等学校でしっかり勉強しなくてはならないと思います。」 |
先生が選んで紹介してくれた生徒ということもあり、生徒会で活躍し英語も堪能な3人の生徒は将来への希望をはっきりと持ち、この学校の模範的な生徒のようでした。
■学校・家庭・生徒をつなげる評議会
父母や地域へ向けた学校からの情報公開は学校選択に重要な資料となりますが、この学校では学校・父母・教師の合同集会を"Parents' Night" として学期ごとに1回ずつ開き、それ以外にも三者面談も定期的に行っています。他にも、教師・父母・スタッフ(給食や掃除担当など)・校長・生徒とそれぞれの代表が加わった全体評議会も年に1度行い、学校方針やカリキュラム、地域社会とのコミュニケーション方針や行事などが話し合われています。ここでは生徒は意思決定に参加することはできず、意見や要望の表明のみをして、決定は校長や教師で話し合うことになっています。しかし、
「生徒が提出する要望や意見は、学校の生徒会が中心となった集会や会議で話し合われ、全校生徒の希望を取り入れた内容なので、父母や教師も真剣に彼らの意見を取り入れようとしています。」
と、話をお聞きした教師は言っていました。
評議会ではその他にも教師が選択した教科書の承認なども行っており、父母が実際の学校内の教育についても参加できる機会になっています。こうした実際の集まり以外にも、父母と教師はE-mailや電話でこまめにコンタクトを取っているそうです。
地域・学校・家庭が協力して将来を担う生徒達を育てていこうとしているこの学校は、フィンランドの教育の理想を突き進んでるように見えました。一方で、中学生の声にもあったように「競争社会」の色が濃くなってきたフィンランド社会を感じさせました。
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