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by 岩辺みどり (写真・文)
2005/07/04
■ フィンランドの小学校訪問
携帯電話で世界的に有名な企業Nokia発祥の地、ノキア市にあるノキアン・カウプンキ小学校へお邪魔しました。訪問時2003年のPISA国際学力調査の前とはいえ、実はPISA2000 でもすでに総合読解力1位、数学的リテラシー4位、科学的リテラシー3位という好成績を修めており、フィンランドの教育方針がすでに力を発揮していた時期でもありました。
訪問したカウプンキ小学校は、全校生徒300人弱の小学校です。1学年平均3クラス編成のフィンランドでは、平均的規模といえる小学校です。1クラスは20人弱で、先生は全部で22人、その他に英語と工芸の教師が特別に専科として在籍しています。職員室は、リビング・ダイニング・キッチンといった要素を含んだ部屋で、教師それぞれの机はなくソファーが置かれ、休み時間になると教師達がコーヒーを飲みながら歓談していました。訪れたその日は、たまたま校長先生の誕生日だったで、校長先生自ら焼いたケーキを教師達とみんなで食べながらお祝いしていました。校長室は別にあり、先生にしかられた生徒が校長室のドアの前の椅子に座っていました。フィンランドでは、子どもの人権尊重から子どもを廊下に立たせることはせず、必ず椅子に座らせることになっているそうです。
子ども達に「日本について知っていることは?」と聞くと、
「サトウ〜!!」(F1レーサーの佐藤琢磨さん。F1は、フィンランドでも人気です。)
「スモウ〜!」
と、元気な言葉が返ってきましたが、中には「知らない・・・。」とか「チャイナ〜。」といった声も聞かれ、北欧の国フィンランドから東の端っこにある日本の距離を感じさせる一面でもありました。
外は0度以下になっても、学校で会う子供たちは教室でも校庭でも元気に走り回っています。学校のすぐ裏には湖があり、
「湖が凍ると生徒達と一緒にアイススケートをすることがあるんですよ。」
と言って、校長先生もロッカーに閉まってある自分用のスケートシューズを見せてくれました。
◇ ◇ ◇
■ 学校の個性を出す
この学校には、フィンランド全体で3割の学校にしかないという図書室があったり、普通は3年生から始める技術家庭科を2年生から始めたり、障害を持つ特殊学級のクラスと一緒に勉強する機会を多く持つというような独自の特色があります。他にも学校内に歯科医の校医さんがいるという珍しい特色もありました。こうした特徴は、父母が学校を選ぶ際にとても大事になってきます。そして、この学校では普段から地域や父母と積極的に交流を持つようにしていて、父母会やお祭を頻繁に開いているそうです。フィンランドでは、学校選択は公立でも全て自由です。そのための資料として、地域や父母への情報公開として学校パンフレットを作ったり、見学会を開いているそうです。
学校はノキア市の中心から少しはなれたところにあり、生徒たちはスクールバスや、乗り合いのタクシー、父母の車による送迎などで通っています。
今でも自然と親しむことを大事にしているフィンランドの人々は、都会から離れたところに住む人々も多くいます。無料のスクールバスや乗り合いタクシーなどで子どもたちが学校に通えるようにしたり、小さくてもなるべく子どもたちが住む地域の近くに学校を開き、子どもたち皆に平等に教育を受けられる機会を与えています。
◇ ◇ ◇
■ ICTスキル指導
フィンランドは情報社会において世界トップレベルでもあり、学校へのコンピューターの導入も早い時期から進んでいます。ITとは、"Information Technology=情報技術"と、技術を中心としたことを言いますが、これからの時代に大事なのはICT"Information Communication Techinology=情報コミュニケーション技術"であるといわれています。これは、ITを使って情報を手に入れたり発信したり、「人」とITとの関わり方、そして人と人のコミュニケーションをつなげるツールとしてのITスキルを指しています。フィンランドでも、このICTスキルを子ども達に教えていくことに重点が置かれています。
この学校では1、2年生ではパソコンの基本的な操作や役割について(クリックする、検索する、など)、3、4年生では学校用に企業から無料で配布されたソフトを使ってゲームを楽しみながら様々な機能を学んでいました。5、6年生になると個人のメールアドレスがノキア市から配布され、教師にメールを送ったりネットで検索したり、と自発的に情報にアクセスしながらパソコンを使うことを学んでいきます。パソコンはデスクトップ型が20台弱あり、少人数制クラスをとるフィンランドの学校では1人1台使えるようになっていました。
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■ 自由とひきかえに得た負担
ICTスキル指導や学校の特色づくりに力を入れているフィンランドの学校ですが、ここ数年IT設備への経済的負担が増加していることが学校への大きな負荷になっています。校長先生のジョルマ・レホトさんは、
「教育省からフィンランド全土の学校へ、『ICT教育へさらに予算と時間を書けるようにしなさい。』と指示が来たことは生徒にはICTスキルを身につけるいい機会かもしれませんが、学校には限られた予算しかないので負担になっています。そのために、遠足や諸行事の回数や予算を減らさなければならなくなり、それは子どもにとっては望ましいことではありません。」
と残念がっていました。そして、
「この行事や遠足がこの学校の特色であり、子ども達にとって最も良いことであることを、中央の政府はもっと理解すべきです。」
と話していました。この学校では、こうした経済的負担を少しでも軽減する為に父母と学校が協力して対策を考えており、学校のカレンダーを作って販売したり、子どもが主体になって地域向けに小さなお祭やバザーを開いて学校費用を補っています。
また、PCの授業を教えていた教師は、
「コンピューターの用語は英語が中心で、小学生には難しいです。それに技術がどんどん新しくなっていく為に、パソコンは4年に1度は新しいものに取り替えなければならないので困ります。」
と、言っていました。PCの授業を受けていた子ども達に尋ねると、7割の子どもが家に家族共有のPCがあると答えましたが、メールやネットをしている子は20人中3、4人で、他の子はゲームやソフトを使って遊ぶのみということでした。
学校や地方自治体のカリキュラムなどへの自由が多く認められているというフィンランドの教育ですが、それぞれへの負担や責任がのしかかってきているようにも見えました。
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