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§10 世界に出なかったPISAの結果

by 岩辺みどり (写真・文)
2005/06/20

国内で発表されたPISAの結果
 OECDが行ったPISAの2003年度の結果発表から、調査対象の8割の回答率に足りなかった、ということで除外されたイギリスでしたが、日本でも成績が下がったと問題になった頃、実は同じ状況がイギリスでも繰り広げられていました。そう、公式記録としては出なかったものの、学校から必要だった85%の回答率のうち77%(生徒からは80%必要な中、77.9%)あった回答を元に、国内では発表され、教育改善策が次々と叫ばれるようになったのです。イギリスの新聞テレグラフ紙は、『イギリスは、世界教育リーグ(試合)から脱落し、特に数学で大きく落ち込んだ。』(2004年12月7日)と、PISAの結果発表後すぐに報道しました。イギリスは、前回のPISAからの3年間で、科学的リテラシーは4位から11位に、読解力で7位から11位、数学的リテラシーでは8位から18位に落ちました。
 学校や生徒達による不参加が相次ぎ、イギリスは正式には成績は残りませんでしたが、結果から他の国に比べて喜ばしくない2つの事実が出てきてしまったのです。今回は、その内容を詳しく見て行きましょう。

◇ ◇ ◇

先生が足りない

 格段にランクの下がった科学的リテラシーと数学的リテラシーの背景として、あげられたのは教師不足でした。『OECDに教師不足による生徒の成績の悪化などが認定されているのは、トルコ、ルクセンブルグ、メキシコの3カ国。しかしながら、イギリスでは41%の子どもが十分に数学が教えられる教師が与えられておらず、同じように35%の子どもが理科の教師不足に悩んでいるという。教師の数は足りているが、教えられる教師がいないのである。』(テレグラフ紙同上記事)
 同じ2004年の初めには、中等教育での14歳〜19歳の生徒の数学力の著しい低下と、興味の喪失が問題になり、『GCSE数学の結果(A〜G判定)もがんばってもD以下しか取れない生徒が3分の1にまでのぼっている』(BBC2004年2月20日)と警告が促がされたばかりでした。その際にも『14歳以上の生徒に、今後の高等教育や社会で、数学が必要になることをもっと理解させるべきだ。そのためには、自信があり、能力があり、カリスマ性のある教師の存在が不可欠だ。』(BBC同上記事)とロンドン大学の教授も訴えましたが、現実的な対策は出されていません。大学でも数学部への入学者が減り、フル(Hull)大学では、2005年度から数学部の新入生募集を停止することになりました。子どもの数学離れから、大学で学ぶ人も減っていく、これでは資格を持った先生が育つこともなく、悪循環にはまりつつあるのが現状です。

◇ ◇ ◇

経済格差と教育格差の比例
 もう1つの問題は、私立と公立に通う生徒の成績に大きく差が出てしまったことでした。
 『イギリス以外に私立に通う子ども達との学問的な格差が明らかだったのは、収入や貧富の差が激しいブラジルとウルグアイだけだったことだ。特にイギリスに特有だったのは、他のOECDの国々に比べて、学費を払って学校に通っている子ども達の数が圧倒的に少なかったことだ。私立に通っている少数だけが、高い教育を受けているということである。OECDは、「これであきらかになったのは、社会経済的に有利な家庭の子ども達は有名な学校に通うという利益だけではなく、実際に将来的にも社会経済的に有利になるような教育を受けることができ、格差が広がっていく恐れがある。」とコメントした。』(テレグラフ紙同上記事)
 一方で、私立が全くないフィンランドは、3年前のテストと同じように今回のテストでも独解力で1位、科学的リテラシーで1位、数学的リテラシーで香港についで2位という華々しい成績でした。階級制度は消え、もう社会的に階級による格差はないと懸命に世界にアピールしていたイギリスでしたが、今回の結果は全く逆の効果をうんでしまったようです。

 

資料: イギリス テレグラフ紙 2004年12月7日記事
    BBC 2004年2月20日記事

*イギリスレポートは今回の「§10 世界に出なかったPISAの結果」で連載終了です。

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