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§1 イギリス高等教育の高い進学率の理由

by 岩辺みどり (写真・文)
2005/05/16

■ 高等教育進学率100%以上?!
イギリスの高等教育進学率は、111.6%(文部科学省発表、2002年調査)。日本の75.9%、アメリカの60.4%と比べても、「え?!そんなに?どうやって!?」といわれるかもしれませんね。実はこれにはからくりがあり、毎日通っているフルタイムの学生は、このうちの63.1%で、残りの53.5%はパートタイムと言って、仕事など学習以外の活動をしながら週に数回通う学生です。日本はこの75%のうちの50%が、アメリカは47%がフルタイムの大学生で、残りは日本の場合は専修学校の生徒、アメリカの場合はパートタイムの学生という割合です。

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■ 1980年代からの教育改革
イギリスは近年急速に進学率が上昇していて、1985年の進学率はフルタイムの学生で22.9%であったものが、1980年代後半から高等教育の拡大政策に伴いぐんぐん進学率アップ。その影にあるのは、ブレア首相が「政府の3つの優先課題をあげれば、それは教育、教育、教育である!」と叫んで教育改革が始まり、上流階級に文化教育、労働者階級に職業教育と考えられてきた19世紀から続くイギリス教育を、「全ての学校の水準を引き上げるべきだ。」と全体の水準向上を目指して取り組み始めたのです。1992年にはそれまで「ポリテクニック」と呼ばれた各地の高等専門学校に学位を授けることを許し、大学(ユニバーシティ)へと昇格させたので、一気にイギリスの大学の数は倍!もちろん進学率もそれに伴い上がりました。現在イギリス全体での大学数は約100校あり、1校をのぞいて全てが公立となっています。

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■ 「ゆりかごから墓場まで」の没落
 こうしてまでにイギリスが高等教育への進学者を増やそうとしているのには、やはり切羽詰った社会背景があったからです。「自由競争こそ最適な社会実現への道」としたサッチャリズム(1980年代に社会改革をしたサッチャー首相の思想)により、すでに階級社会の根強かったイギリスでは、経済格差は更に開き、それが教育や福祉にも大きく格差が出る結果になりました。「ゆりかごから墓場まで」と言われた福祉システムも、失業率が上がり、財政政策の見直しがはかられ、「これまでの高負担と高支出の福祉システムに改革が迫られてきている。」とブレア首相は初党院演説で語りました。そして「人々を貧困から引き戻す最良の方法は『仕事』である。参加型経済では、全ての人々が社会での役割を持ち、責任を負うことになるのである。」と主張しました。特に、失業率の高かった若年層への教育機会を広げると共に、全体への教育機会の拡大によって、イギリスの高等教育は年々成長し続けているのです。

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■ 実際の大学生はどう思ってるの?
実際の大学生に聞いてみました。

ジェン 「年々、多くの仕事が高等教育終了資格を求めてきてる。私たちの世代は、不景気と不況の時代(80年代後半から90年代前半)に成長してるのよね。だから、自分たちが少しでもいい仕事を得られる最大限の努力が、高等教育を終了することかしら。」
ヘザー 「よりよい給料をもらえるための、高い資格を取るためかな。」
エリック 「仕事の為の競争」
レイチェル 「どこに行っても、高等教育は自分にとって重要な価値になると思う。」
カースティー 「今は大学に行くほうがすぐに仕事するよりいいわ!この国では、大学を卒業しといた方が、いい給料の仕事につけるのよ。」

と、「より高い教育を受けることでよりよい仕事に着くことが出来る」という政府の教育改革の方針が、高い失業率を目の当たりにして、学生にもひしひしと伝わっています。

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■ 経済的サポート

クレイグ 「学費がアメリカとかより安いと思う。労働党は、大学進学率を上げようとしているよ。」
マシュー 「イギリスは比較的裕福な国だと思うんだ。大学は、ほとんどが国立で政府が資金を出しているしから行きやすいよね。それに、今はいい仕事が欲しければ、学士はとっておかないとね。楽しいしね。」
ピーター 「中流階級層が多いから、ある程度の教育が開かれないといけないと思う。行けるなら大学に行っておくというように、勧められるしね。」

こうした意見に代表されるように、高等教育に学生達が進めるのには、助成金や学生ローンなど、さまざまな経済的サポートが整っているからです。教育改革以前は無料だった大学の学費も、大学数が増えたことによって国で負担しきれなくなり、生徒への学費負担は年間1000ポンド(約20万円)から始まって以来年々上がり、ついに2005年には年間3000ポンド(約60万円)になります。これも、両親が所得によって免除の度合いが変わり、低所得者の場合はほぼ全額免除される場合もあります。政府から助成金が出たり、各銀行も学生の間は無利子でのローンが組めるようになっており、0ポンドから始まり、お金を使っていく学生口座をほとんどの学生が持ち、そこから生活費を出し、就職後に返済していけるようになっています。

資料:文部科学省「教育指標の国際比較」平成17年度版
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