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■ 理科・社会の問題というと、計算したり知識を求められたりすることが多い印象を受ける。しかし、武蔵の問題はひと味もふた味も違っている。
■ まず全体をざっと眺めてわかるのが、問いの立て方が非常に多様であるということだ。例えば、「〜ですか。考え方がわかるように答えなさい」「なぜだと思いますか」「なぜだと思いますか。君の考えを書きなさい」など問題文の文末表現は、一見細かなことだが、しかし通常の問いとは大きな違いが存在している。それは、因果関係としての理由だけでなく、生徒自身の意見がどのような過程をたどって解答にいたったのか、を表現せよというメッセージがあるということだ。
■ こういった問題文の文末表現を様々に変化させながら問うことで、多様な切り口から考えるような設定になっている。それによって、受験生の思考や表現の広がりを生み出し、受験生自身が、問題を解きながら自分の考えを言葉にする方法を何通りも手にすることに繋がるのではないだろうか。
■ とくに注目したいのが、2枚の磁石の板を受験生全員に配ることではじまる、大問4である。小問はふたつ。「2枚の磁石の板を重ね合わせ、下の板を固定して上に置いた板を回転させる。このとき2枚の板同士が引き合う強さについて、気が付いたことを書かせる」のが問1であり、問2は、「問1で出した答えをふまえて、この磁石の板の構造を答えさせる」選択問題になっている。
■ しかし問1には、おもしろい制約条件がある。「図を書いてはいけません」というのがそれだ。問1が選択問題の問2に正確に答えるための伏線であれば、図を書いてそこに直接書き込みを加えさせるとわかりやすく、文章のみと制限を設ける必要はないだろう。しかし、ここで武蔵中学校は、文章を書かせるのだ。
■ この問題に突き当たった受験生は、どのように考えるだろう。―これまでも書かせる問題は多かったけど、書くことによって考えが整理され、次の問いに進むことができた。でもこの問題は何か違う、どうしよう、どんな風に書けば、自分の気づきを伝えることができるのだろう、と。まず板を動かす手順をどう説明したらいいのだろうか?この複雑な板の動きをどう表現しよう?―このように思考をめぐらす受験生がいるのではないだろうか。
■ おそらく、ここで試行錯誤し、その後自分の表現がいっそう磨かれる受験生は多いのではないだろうか。表現を磨きなおす内に、説明しようと思っている自分の考え自体に、もっとこういうことかもしれない、と新たなアイディアをひらめいていくことだろう。
■ この問いは知識を問うに留まらず、持っている知識をどのように活用・思考していくか、そしてその思考をどのように表現していくか、さらにそれら両過程を共鳴させることで、新たなひらめきを引き出しうるような問題となっている。
■ 武蔵中学校のHPには、「失敗さえもしない生徒ではなく、財産になるようなよい失敗をたくさんする生徒が、武蔵の考えるよい生徒です。」という言葉が記されている。生徒たちが失敗を恐れるのではなく、まず考えてみよう、表現してみよう、と踏み出していける学校としての懐の深さが、この問題からも明確に見えてくるだろう。
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