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ホーム教育リサーチ:入試関連2008年入試問題にみる学び(4)


2008年入試特集:入試問題にみる学び(4)
桜蔭:国語の問題から見えるコト
2008年3月14日
by 相楽 直美

■ 与えられた長文を読み、問われたことを記述する。桜蔭中学校の国語は、形式だけ見ればいたってシンプルだ。しかしその内容は、単なる入試問題の粋を超え、受験生の過去・将来・そして今を問い直す、極めて壮大なものとなっている。

■ たとえば、第1問の問3を見てみよう。「私はライオンを知らない。イラクで毎日人が死んでいることも知らない」という文に対し、この言葉にこめられた筆者の思いを説明せよとある。ライオンもイラクで起きている悲しい出来事も、本を開いたり、ニュースを見れば、誰もが得ることのできる知識である。しかし筆者は、「知らない」と言いきる。なぜ筆者はそのように言うのだろうか。「知ること」に対する新しい視点を与えられた受験生に、そこから何が見えるか、何が生まれるかを考え、説明することが求められている。

■ 「知る」とはどういうことだろう。実体験を伴わないで日々蓄えられていく知識を、私たちは本当に「知っている」と言えるのだろうか。今年の入試で扱われた文章は全部で3題。上記のとおり、最初の文章ではさまざまな媒体から流れ込んでくる知識や情報のあやうさが述べられ、「知っている」ことを当然視する見方に対して問いの投げかけがおこなわれる。そして次の文章では、人間の記憶の鮮明さや尊さが、ビデオなどに収められた膨大な量の映像記録、手軽な過去の証明に甘えてしまうことで、失われつつあることが危惧されている。

■ 最後の文章、小説へと問題は続く。主人公は、受験生と同年代であるみさきという女の子。いとこの死を通して「生きること」の意味がわからなくなったみさきと、おじいちゃんとの対話のシーン。おじいちゃんは言う、「ひとりの人間のこの世の役割とかは、人間にはわからん」「知らんということは強いことだ」・・・。ここで受験生は、みさきの心情を推察すること、そして、おじいちゃんの「生」に対する考え方の説明を求められる。

■ 同年代の主人公と、自分とを重ねる。いままでと異なる角度から、自分自身を見つめなおす。生きていくなかで絶えず変化を続ける感情や感覚といったものを、新たに自覚するためには、外部から何かしらの契機が必要かもしれない。

■ この入試問題はその契機として十分な役割を果たす。問題文を読み、書くことを求められた受験生は、自分との対話を繰り返すだろう。その一連の流れのなかで、彼女たちは自分の半生を振り返り、まだ見ぬ将来へ思いを馳せ、そして今ここに生きているという現実の妙を、改めて実感するのではないだろうか。豊かな人間性のもとに活躍する、社会の先駆者。桜蔭学園が生徒たちに込める思いは、すでに入学試験の場に現れているようだ。


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