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ホーム教育リサーチ:入試関連2008年入試問題にみる学び(2)


2008年入試特集:入試問題にみる学び(2)
海城:社会の問題から見えるコト
2008年3月7日
by 内藤 誓力良

■ 身近なところにモノを考えることができる素材は転がっている、というのはもはやよく聞く話である。しかし、現実的に「モノを考える」というのはなかなか難しい。なぜなら考えるという行為は、それが多角的なものでなければ容易に偏見を生み出すからだ。そしてやっかいなことに、自分だけではなかなか多角的に考えているか否かを判断するのは難しい。

■ 海城中学校の社会の入試問題には、題材にゲゲゲの鬼太郎というマンガが使われている。このマンガは作者である水木しげるの幼少時代の実体験をもとにして、そこに作者の想像力を加えて生まれた妖怪たちの話である。リード文から問6の(1)に至るまで、科学の発達にともない人間にとって不思議なことが少なくなったために、現在では妖怪というものを肌で感じられなくなっている、ということが示され、あるいは解答として求められている。そして最後の設問の問6(2)でモノを考えるとはどういうことかを、受験生に実感させる問題が用意されている。

■ 「高度経済成長期以降、人はなぜ妖怪を信じなくなったのか。科学的な立場で物事を捉え始めた以外の理由を200字以内で述べよ」というこの問題。参考資料として、1920年からの核家族の世帯数の変遷を示した表が載せられている。また、森や林が伐採され、工場や住宅地へと変化し道路も舗装されたことで、以前の日本人が体験してきた景観や生活とは違う、人工物に取り囲まれた生活というものに変化してきたという内容の文献の抜粋が提示されている。問題はさらに「高度経済成長期に、妖怪の話を受け継いでいく家族のあり方、人間の生活する環境にどのような変化があったのかを明らかにして述べよ」とつづく。

■ 受験生は与えられた参考資料を踏まえて、「核家族の増加によって妖怪の話を受け継いでいく語り手が減っていってしまったのだろうか」「人工物が増えたことによってそれらの数少ない語り手の話を信じる聞き手が減った、話に信憑性がなくなってしまったのだろうか」という具合に、科学発達以外の要因を考えていくわけである。

■ ここで注目したいのは“科学的な立場以外で”という点である。これが仮にリード文や参考資料もなく、“科学的な立場以外”という条件設定を設けなかったらどうなるだろう。おそらく多くの受験生は事象の原因を考え、それまでのリード文・問題や知識をもとに「科学が発達したから」という答えを導き出すだろう。しかし、その一面的な思考をさらに深めたり、広げたりするのはなかなか難しい。

■ 受験生は、科学の発達という要因を導き出した時、そこで考えることをやめてしまうかもしれない。しかし最も導き出しやすい答えを奪われた時、受験生は「では他に何があるのだろう」と思い悩み、他の視点を探し始める。激しい妄想を繰り広げたり、非論理的な試行錯誤を繰り返したりすることだろう。そしてふと参考資料に目をやり、そこから自分の頭を使って広く深く「モノを考える」のだ。

■ 事象の原因は一つとは限らない。また世の中はAだからBであるという単純な構造で全て成り立っているわけでもない。この問題は、『「フェアーな精神」と、先入観にとらわれず、さまざまな角度から総合的に物事をとらえる力』の育成という海城の教育理念の重要性を、受験生に訴えているのではないだろうか。


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