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入試問題にみる学び(15)
麻布中学校の問題から見えるコト
2007年2月14日
by 川頭 邦晴

■ 一つひとつの入試問題からは、その学校の求める生徒像や学びの方向性が垣間見える。であるならば、すべての問題を俯瞰することで、学校の想いはより明瞭に浮かび上がることだろう。今年も麻布中学校では壮大な思考実験が繰り広げられた。入試という場において、麻布中学校はなにを発信し、どのような学びの種を撒いているのか。

■ 国語では、浅田次郎「青い火花」より約10000字という破格の物語文が出題された。「東京の町なかを網の目のように都電が走っていた時代のことは、もうあまり知る人がいない」で始まり、写真家の子どもである『ぼく』の視点から語られている。最後の問題が興味深い。冒頭に引かれた棒線部から「『ぼく』はこの文章に描かれた時代をどのような時代だったと思い出していますか」と問うている。町ではなく、時代である。文化や生活、政治、経済、様々にイメージが駆けめぐる。何よりも描かれているのは麻布十番という町、日比谷線開通という時代であり、麻布生にとっては馴染み深い。通学時にふとこの問題を思いおこせば、そこは過去と現代を繋ぐ豊かな学びの場となるはずだ。

■ イメージから法則性を見出す。そんな力が問われる算数。例えば、扇形のレールを組み合わせて線路を作る問題や、1から18の整数の書かれたカードを、規則にのっとって組替える問題が出題された。示された図を見れば漠然としたイメージや直感は働くことだろう。しかし、求められるのはそれを論理的な法則に置き換える力だ。規則性に込められた意図をどう捉えるか。何気ないモノ、配列、規則。当然のごとくイメージされ、存在しているものが、ある法則として意味付けられたとき、数字という抽象概念は宇宙の構造を解き明かす視点となる。

■ 法則性を導き出す思考は、理科でも問われている。例えば、ニュートンの予測を題材に、複数の土地の「緯度」と「地球の中心からの距離」によって地球の形を考える問題。文中から情報を集め、計算し、思考することで解いていくのだが、これは、ある事象から仮説を立て、法則性を見出すという科学者のアプローチそのものである。プリズムを通した光を扱う問題もニュートンの視点を想起させる。惑星が動く法則性や、潮の満ち引きのデータから万有引力の法則を打ち立てたニュートンや、光速の不変性から相対性理論を導いたアインシュタインの思考体験である。

■ 麻布中学校にとっての科学視点、それは社会にも現れている。古代から現代にいたる地震の歴史を引き合いに、自然の力に対する人間の科学や技術の限界を考えさせる問題。そして「君が科学者や技術者のような専門家であったとすれば、どのような態度で科学や技術に接し、社会に貢献していこうと考えますか」と問うている。近代の繁栄を支えてきた科学技術と自然の関係、葛藤や矛盾を自らの視点として捉えること。それはあらゆる科学者や技術者が抱え、乗り越えてきた道と言えよう。

■ あらゆる空間を学びの場とし、当然のごとく存るものに法則性を見いだす。自らの感性が捉えた情報から新しい概念を打ち立てていく。あらゆる矛盾、葛藤、心の混沌を表現することが、学びに向けた真の出発点となる。これは、麻布中学校が入試問題を通して現代に示した志しであり、自主・自立の気風に育まれた麻布生の未来への眼差しである。


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