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■ 桜蔭中学校は、日本屈指の進学校であり、中学入試から既に大学進学を見据えている。中学入試では、知識を問う問題が非常に多い。しかし、将来の日本を背負って立つ子どもたちには、知識を蓄積することではなく、知識と知識を結びつけて未知の問題へも対応できうる力も必要となる。桜蔭中学校の入試問題で問われているのがまさにそれだ。例えば、理科にこんな問題があった。
■ 「川が強酸性であると,どのような悪影響があるか,自然に与える影響と,建造物にあたえる影響とに分けて」それぞれ答える問題。問題を解くうえで必要となる知識として、「群馬県にある湯川は,草津白根山という活火山付近から流れ出す強い酸性の河川」、「草津中和工場では,昭和39年より石灰粉を使った中和事業を行っています」、「湯川の酸性成分は,主に硫酸で,塩酸も含まれています」、「それらは,石灰粉の主成分の炭酸カルシウムとつぎのように反応して中和します」、「反応は,川を流れるうちにゆっくりと進みます」。反応で生まれる「硫酸カルシウムは水にとけないため,下流に作られた品木ダムで沈殿させます」といったことが、問題文の中で与えられている。
■ 子どもたちはこの知識から、「硫酸が流れる川」とはどんなものなのかを考えるだろう。自分の身近なところにある川に流れている水が、もし硫酸だったらどんなことが起きるのか。そのイメージをもとに、子どもたちは解き進んでゆくことになる。
■ まず大切なのは、条件としてそれぞれ12字で表現しなければならない点。簡潔な表現をするためには、あるていど対象を絞り込まなければならない。「自然」「建造物」という抽象的な概念で捉えていると、その多様さゆえに、おそらく12字では厳しいだろう。そのために、「自然」「建造物」をさらに具体的に拓き、自分なりに条件設定をする必要がある。
■ その中で子どもたちは、硫酸の川が「自然」と「建造物」にどのような悪影響を与えるのかをシミュレートするのだ。悪影響の「違い」が問われているので、その差異を見つけられるような条件設定ができるかどうかが解答のポイントとなる。
■ イメージする力は、中学入試だけで求められるモノではない。たとえば、大学入試においても、公式や解法を覚えるだけではほとんど通用しない。時代の流れに乗った学習をし、具体的なイメージを持ち、シミュレートする力を身につけておく必要がある。もちろん、大学入試だけでなく、社会に出てからもあらゆる場面では必要となってくるモノだ。桜蔭中学校の生徒が卒業後も様々な分野で活躍しているのは、知識もさることながら、こういった力を身に付けていることも大きいのだろう。
■ 大学進学に重きを置いているとしながらも、問題の中にはさらにその先をも見据えたモノが溶け込んでいる。そんな桜蔭中学校の入試であった。
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