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■ 算数とは、思考をめぐる物語である。そして、子どもたちのつむぎ出す物語はとても面白い。たとえエンディングまで完成されていなくとも、思考の方向性が垣間見える。芝浦工業大学柏中学校の算数には、こんな問題があった。
■ 「ある工場の従業員の1日の賃金は、基本賃金以外に働いた時間によって下のような段階別の賃金をもらえます」とはじまるその問題。1日の賃金を表す式とその例、最後に日にち別の賃金表があり、解き方も書いて答えるという問題。ひとことで言ってしまえば「賃金を考える問題」だ。しかし、問題文の中にはたくさんの情報が隠されている。子どもたちは問題文から何を読み取り、どのように整理するか。そこから彼らの書く物語は幕を開ける。
■ 問題文の中にある「1日の賃金=(基本賃金)+(働いた時間に応じた各段階別の賃金の合計)」という式を用いる解き方。線分図から差を取って式をたてる解き方。面積図のように問題そのものを図形的なモノに再構築する解き方。さまざまな形で表現できるが、普段なら、情報を頭の中で処理する子どもたちも少なくないはず。解き方を書くには、自分の考え方を読み手の視点から見直す必要がある。子どもたちは、この時点で物語をつむぐ書き手であると同時に、読み手でもあるのだ。
■ 「私を見る私と私に見られる私をしっかり意識し、その中で個性は磨かれ伸びでゆく」という佐藤校長先生の言葉がある。読み手である「私を見る私」と、書き手である「私に見られる私」を意識することで、「個性が磨かれ伸びてゆく」。佐藤校長先生は「内在する自己を磨き伸ばすことが、結果として自他を区別し個性を生み出す」ともおっしゃっている。算数は答えが決まっている性質上、なかなか「内在する自己」を表現する機会がない。しかし、この問題は解き方を書くために自分を振り返り、さらにアプローチの仕方で「内在する自己」を表現するようになっている。
■ この問題では答えだけでなく、自分の考えを振り返り表現する力が問われている。そこで自分の物語をつむぐことが、将来発揮される「個性」への土台になるのではないだろうか。
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