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洗足学園中学校 学校長 前田隆芳
さらに良い教育を求めてドラスティックに!フレキシブルに!

創立80周年の節目に当たり本校の教育の原点を見つめ直す

 本校は今年度、創立80年を迎えます。本校発展の歴史と創設の精神に改めて思いを向ける良い機会であると捉えています。
 本校の建学の理念は「謙虚で慈愛の心を育む」ことにあり、これは洗足という校名の由来でもある新約聖書ヨハネ伝の一節、最後の晩餐のおりキリストが自ら弟子達の足を洗い清め、「我は主または師なるに、なお汝らの足を洗いたらば、汝らも互いに足を洗うべきなり。我汝らに模範を示せり、我なせし如く、汝らもなさんためなり」とのイェス・キリストの言葉によるものです。
 その理念は、「社会に有為な女性を育てる」という教育目標と一体となって常に提示されており、全ての目標の上に立つ指針として位置付けられています。社会が多様な価値観の中で進むべき方向を見失いつつある今、私たちはこれら建学の理念と教育目標の持つ意味を"生徒の人生における幸福と価値"という視点から、今一度深く見つめ直すべき時にきていると感じています。
 教育の目的は"幸福な人生を実現するための人格形成"にあります。そして人格形成とは、人間形成と学力形成という二つの面に分けることができるでしょう。それらは互いに大きく関連しあっています。どちらが欠落していても幸福な人生を実現していくことはできません。社会は人と人との共同体です。多様な協力関係、補完関係によって成立しています。そこでは常に高い能力が求められていますが、それは時機に見合ったものでなければなりません。他者との共棲の中で活かされるように発揮されなければなりません。そこに智恵と心が求められています。
 アメリカの哲学者エマーソンは「人は尊敬するが故にのみ尊敬せられる」と語っています。能力は人の中で正しく活かされて初めて価値をもってきます。知識や知恵は人や社会のために役立てられて尊敬を勝ち得るものとなるのです。人の中にあって能力を発揮していくためには、他者を認め他者を思いやる人格の高貴さが必要になってくるのです。本校の教育目標は能力を高める意味を、そして建学の理念は、まさに社会の中で能力を発揮していくための法則を指し示しているのです。そしてそれはそのまま、幸せな人生の秘訣でもあるのです。学校生活のあらゆる機会を通してこの理念の持つ深い意味を伝えていきたい。理解させる努力を行っていきたいと思っています。


高い学力や能力が活きてくる鍵は"正しい自律"

 近年の大学進学実績を見て感じることは、本校の学習計画に沿って6年間学校生活を送っていけば、普通に誰もが志望する大学を選び取れるところまできているということです。進路指導の方法やプログラム内容も年々ブラッシュ・アップされ続けており、大学進学実績はより難度の高い大学へと傾斜し続けています。いま私たちの視点は、生徒の持っているさらに高い能力を引き出すことと、その能力を主体的に発展させ、社会の中で有為に活かしていくことに大きく向けられています。
 これまでの本校は、より良いシステムや施策、授業内容の改善などに大きな力を注いできました。それらは能力育成・学力構築に成果として結びつき、志望進路の実現を高度に達成してきました。言うなればそれは与える教育としての改善であり成果です。それらに改善の余地が残されている以上、努力を止めるつもりはありません。しかし、今、さらに大きな教育の実現を考えていく時、生徒それぞれの正しい自律を促すことがより重要になってきていると感じています。
 学歴は高くとも能力の発揮の仕方を知らない若者を多く目にします。成長過程の中で、学ぶことの意味や社会の一員としての自分を、深く考える機会を持たなかったからかもしれません。多様な他者との深いコミュニケートを経験してこなかったからかもしれません。本校に入学してくる生徒の中にも、何の疑問も抱かず敷かれたレールの上を無難に走ってきただけの者を見かけます。生徒管理の視点からは、扱いやすい生徒です。大きな流れに身を任せて生徒の中庸を泳ぎ、無難に過ごす6年間。しかし、その先は・・・。
 洗足生としての基本姿勢や生活習慣が、ある程度身につくまでは、それを守らせる細やかな指導が必要です。学習面においても基礎的事項の習得には小テストのくり返しによる反復学習が効果的です。本校においても1〜2年次には生活習慣の確立と確かな学力の土台作りに意を用しています。しかし、近年の入学者の多くは既に正しい学習習慣を身につけており、その期間の訓練はあまり必要としなくなってきています。課題は、それまで他律的に行ってきた学習や、深く考えずに守ってきたルールとマナー、それらの意味を根源的に見つめ直して主体的に捉え直させていくことでしょう。この他律から自律への切替をどう行っていくかが、高いレベルの生徒を預かる私たちのこれからの最大のテーマと捉えています。


柔軟な姿勢を保ちながら考えさせる、語らせる、提案させる

 本来、学習には、学ぶことそれ自体の意義も含めて目的が存在します。社会や学校のルールとマナーの根本にも、異なる人間が共に気持ち良く生活するための取り決めとしての意味があります。それらの意味や目的が理解されるとき、学びはより主体的に熱を持ち、ルールやマナーは本質的に遵守されるようになるはずです。それにはまず全ての事柄に問題意識を持たせ、自ら改めて問い直させることが必要です。具体的に洗足でいま行っていることは、学校・社会の様々なテーマを題材にして、主体的分析を加えた研究発表やプレゼンテーション、時事問題を題材にしたディベートなどで、自律化を促す効果と同時に、国際化の進む社会で必要とされる様々な能力を養成することにも繋がっています。
 これらのプログラムとともに、学校生活全般に渡り、発言させること、耳を傾けることにも意を傾けており、語り合える環境作りを行っています。私自身できる限り時間を割いてコミュニケーションの機会を持つよう努力しています。先入観を排して柔軟に方針を決める姿勢を持つ努力をしています。幸いな事に現在の洗足は、生徒も教師も課題は困難なくクリアーできる高い能力集団になりつつあります。そして各担当教師からは施策への積極的な提案も多く出されるようになってきました。真の活性化が始まりつつあります。このコミュニケーションを生徒にも広げていきたい。主体的に捉え、発案し、行動する流れを学校全体に根付かせていきたいのです。生徒と教師全てを含めた多様性の中から、さらに良い教育を実現する意志とアイデアがこれから次々に生み出されてくるはずです。

学校HP:http://www.senzoku-gakuen.ed.jp/
2005年学校案内パンフレットより)



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