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| ■ 関東学院中学校 学校長 冨山 隆 |
| 負けない強さ |
| 本校の校訓は、初代学院長坂田祐が第1回の入学式(1919年)の告示の中で、土台をイエス・キリストに置いて「人になれ 奉仕せよ」と定めました。神奈川県下初の男子キリスト教学校として、人格教育を標榜し、強い意気込みを持って発足しましたが、生徒の人格を磨き完成させるという目標はそう簡単に達成できるものではありません。忸怩たるものがありました。そして、人が人を作るということを人間の力で成し遂げようとする限界を謙虚に認め、改めて神の力に頼ったのです。坂田祐は「祈りなくして、生徒の前に立つことはできなかった」と語っています。そして、この目標の達成は極めて難しいけれども、目標を達成するための不断の努力に価値があるとしました。 これは、5年後の第1回の卒業式の席上で、「自分は生徒諸君にこの理想に向かって努力することを勧めてきた。諸君も努力してきた。これは今後とも実現に努力すべきことである。諸君が実業家になろうとも、官僚になろうとも、医者になろうとも、これらは永遠の目標の手段でなければならない」とし、続けて「貧乏になってもよい。上級学校に入れなくてもよい。仕事で失敗してもよい。諸君の人生観の基礎を確立して価値のある生涯を送ることができるならば、諸君の人生は成功である」と語ったことからも理解できます。 学校教育が立身出世のための手段となっていた時代に、この言葉は世間の価値観から背を向けています。相反する考えです。そして、学歴が崩壊したといわれる現代社会においても、なかなか受け入れることができない考えです。それは誰でも心のどこかで、いい学校、いい会社、社会的に高い地位を望む気持ちがあるからです。入学が難しい大学への進学率の高さが、学校選択の判断基準のひとつになっている中学受験の様子からもはっきりとうかがうことができます。勝ち負けを世間的な成功のうちに判断しようという流れに対して、本校は創立以来その教育の目標を、授業や学校行事を通して人格を磨くことにおき、進路はその結果であるというスタンスをとってきました。 旧約聖書の中に「エレミヤ書」というものがあります。エルサレムの没落を神から預言されたエレミヤのことを描いたものですが、この偉大な預言者はその言葉の正しさが社会に受け入れられず、しばしば孤立する場面があったと伝えられています。その孤独の中で、エレミヤは告白します。 「主よ、あなたがわたしを惑わし わたしは惑わされて あなたに捕らえられました。あなたの勝ちです。私は一日中、笑い者にされ、人が皆、わたしを嘲ります。わたしが語ろうとすれば、それは嘆きとなり『不法だ、暴力だ』と呼ばずにはいられません。主の言葉ゆえに、わたしは一日中 恥とそしりを受けねばなりません。主の名を口にすまい もうその名によって語るまい、と思っても 主の言葉は、私の心の中 骨の中に閉じ込められて 火のように燃え上がります。押さえつけておこうとして わたしは疲れ果てました。私の負けです。」(20章7〜9節) 世間での苦労や迫害で徒労感に打ちひしがれたエレミヤは、何とかその働きをやめたいと願い、そこにエネルギーをつぎ込むのですが、その度に神から託されたこの世間での働きにむけて心が衝き動かされ、どんなに心や体が疲れていても奮い立たせられてしまうことに、私の負けです、神様の勝ちです、お任せしますと素直に告白せざるを得ないのです。エレミヤの勝ち負けは神との関係の中で語られているのです。 深い信仰心と神学への探究心を持った坂田祐が東京帝国大学に提出した卒業論文は「預言者耶利米亜(エレミヤ)」と題するものでした。先に紹介した「貧乏になってもよい。上級学校に入れなくてもよい。仕事で失敗してもよい。諸君の人生観の基礎を確立して価値ある生涯を送ることができるならば、諸君の人生は成功である」との言葉は、その延長線上にあるものと推察されます。神様には勝てませんという人間は、世間のさまざまな場面での勝負に勝たないかもしれないが、負けることはないということを示しているのだと思います。何度くじけそうになっても、もうやめたいと願っても、肉体にしみこんだこの神の力は、勝たないことが成功になるという逆説的な価値観の転換、目先の勝ち負けではなく、もっと大切なこと、どういう人間としていきるかということに目を向けなさいと促しています。本校の教育の根本はここにあるのです。 生徒には関東学院の学びの中で、多くの教員や生徒同士の交わりを通して、神と出会い、負けない強さを知り、そこから人生において価値のあることを得て、関東学院を巣立っていくことを願っています。 |
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| (SCHOOL GUIDEより) |
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