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時代の動乱期にビジョンを示す攻玉社
2006年12月1日
by 本間勇人

◆ 143年前、攻玉社の創立者近藤真琴は蘭学塾を開く。これが攻玉社の始まりだが、時は江戸から明治に移り変わる動乱期。西洋近代の数学、航海術、測量術に熟達し、日本の近代化のためのビジョンを示し、多くの逸材を育てた。麻布学園の創設者江原素六も弟子である。江原が政府軍から幕臣として追いつめられ死を覚悟したとき、それを留め、日本近代化のための人材育成の道を説いたのが近藤真琴。

◆ 近藤真琴がいなければ、攻玉社も麻布学園もなかったのであるが、世界を見渡し、社会を変え、社会に貢献する人材を育成する今の私立中高一貫校もまたなかったかもしれない。

◆ 攻玉社は、日清戦争、日露戦争、2つの世界大戦、戦後の2つの石油危機など幾多の動乱期を生き抜いてきたわけだが、89年ベルリンの壁が崩れ、日本の経済バブルの崩壊が私立学校の教育にも影響を及ぼす混乱期も見事に乗り越えている。

◆ しかもその乗り越える方法は、攻玉社のみ生き残ることを目的としたものではなく、他の私学がサバイバルできるビジョンを示唆するものでもあった。

◆ ベルリンの壁が崩壊し、世界はグローバリゼーションの時代に本格的に突入。日本の社会は世界の変化の速度にまだまだついていくことができない90年に、攻玉社は国際学級を開設。

◆ 日本社会がグローバリゼーションに門戸を開くのに戸惑っているときに、学内をその波に開放したのである。この国際学級は、大いに成功。ただし、世間には攻玉社の大学進学実績を飛躍させるきっかけの側面しか見えなかった。

◆ したがって、国際学級の開設の真意はなかなか伝わらなかった可能性がある。しかし、攻玉社の決断と実行は、帰国生の入試を変革したこともまた事実であることを忘れてはならない。帰国生にとって、かつて学校選びはおそらくブランド校選びでもあった。しかし、攻玉社の新しい試みは、英語力持続や大学進学実績の保証、文化の学び、再び帰国生が世界にもどるときのサバイバル・スキルの習得など幅広い学校選択の視点を開いたのである。新しい帰国生入試がそのあと設置されていった。聖光学院、共立女子、大妻、高輪・・・と。

◆ この幅広い学校選択の視点、つまり帰国生一人ひとりのニーズに対応できる多層的生徒指導の攻玉社の模索こそ、日本の社会が今必要としていることである。世界で活躍する人材は、リーダーシップを発揮するわけであるが、それは以前のように国家が後ろ盾になっているリーダーシップではない。価値観も考え方も違う多くの人材とクリエイティブなコラボレーションをし続けるチームをベースに動ける創造的なリーダーシップが求められている。

◆ 国際学級の運営は開設から98年、99年までは模索の時期であったようだが、それ以降世界からやってきた多様な価値観をもった個人を主張する生徒を受け入れる柔軟で専門知識をもった教職員の学習する組織も成長したようだ。

◆ 教頭岸川典隆先生は「国際学級の生徒の英語力は、一般学級の生徒に相当刺激を与えるのは当然です。何より興味深いのは、部活などにおいてリーダーシップのスタイルが全体に変化したことです。たんに与えられたことを運営するリーダーではなく、モチベーションをアップしたり、チャレンジしていく元気を喚起したり、とにかく積極的なリーダーシップのスタイルが広がっているのですよ」と世界を受け入れた攻玉社の成功について語ってくださった。

◆ また校長菊池正仁先生は、こう語られた。「一般の学級の生徒と国際学級の生徒のコミュニケーションがシナジー効果をあげる新しい方法を考えています。その方法を考えるヒントは、国際学級の生徒を受け入れる知的授業の方法が、一般の学級においても有効だという発見があったからです。その方法とは、要するにプラグマティックな仕掛け。まずは体験し、そこで発見したことを自分なりに考える。そこからスタートして、議論をしたりレポートを書いたり論理を組み立てていく。もちろん、様々な成果物ができあがるので、一人ひとりにアドバイスしていくことは大変な仕事です。しかし、その努力が攻玉社全体に知的な品位を形成していくことになるでしょう。生徒と教師の知的ぶつかり合いもいっぱいありますが、それを1つひとつ解決していく。それが攻玉社の教育の質を豊かにすることだし、近藤真琴先生の精神を継承することでもあります。」と。

◆ 校長、教頭両先生のお話は、進化する攻玉社、大きな志を持ち世界に飛躍する人材を育成する攻玉社の教育の条件・質そのもののお話だったのである。



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